ルシオラ・もう一つの物語

作:男闘虎之浪漫

−2−



「私……私どうしたの!? それにこの姿……」
「ルシオラちゃん、生きてたんでちゅね! よかったでちゅ……」

 パピリオは涙ぐんでしまった。

「ベスパ、いったいこれはどういうこと?」
「あらかじめ妖蜂を待機させておいたのさ。あの時に私と姉さんのどっちが倒れても、残った霊基を集めて復活できるようにね。誤算だったのは二人とも倒れてしまったことだけれど、ギリギリ間に合ったみたいだね」
「神界と魔界の霊的チャネルが開放されているわ。ヨコシマは……アシュ様はどうなったの!?」

 その時、ルシオラ・ベスパ・パピリオの3姉妹は、はるか遠くに巨大な魔力の存在を感知した。

「この巨大な魔力は!? まさか──」
「アシュ様……『究極の魔体』を発動させたのですね」

 それは恐ろしいまでの力を発していた。その力のレベルは、かつてのアシュタロスをはるかに凌いでいる。
 しかし『それ』から発せられる波動は、間違いなくアシュタロスと同じものであった。

「こうしちゃいられない。パピリオ、私と姉さんを人間たちのところに連れていって!」
「ベスパ! あなたどうしたの!?」
「アシュ様を裏切ったわけじゃないさ……。姉さんとパピリオにはきちんと話しておかないといけないね。アシュ様の本当の願いを──」
「ベスパ……」
「時間がない。移動しながら話すよ!」
「わかったでちゅ」

パピリオはミニサイズのルシオラとベスパを抱えて、都庁地下の司令部へと飛んでいった。




「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 都庁地下の司令部で横島や美神たち一同は、食い入るようにメインスクリーンを見つめていた。

「何あれ! 何メートルあるわけ!?」
「全長180メートル。怪獣なみの大きさですね」

 ヒャクメが冷静に分析する。

「でもエネルギー結晶がなければ、ただのデクノボーじゃないのか?」
「それがそうでもないのね〜〜。見たところ2・3日分の予備エネルギーがあるみたい……」
「あれが2・3日暴れたら、人類が滅亡するわよ!」

 司令部の緊張が一気に高まった。

「令子と横島クン、出撃よ! それから空を飛べるメンバーは援護をお願い!」

 合体した令子と横島、そしてヒャクメ・冥子・ピート・魔鈴が飛び立っていった。

「これが、決戦(ファイナルバトル)よ!」


「見えた!」

 令子たちの視界に、アシュタロス──究極の魔体──の姿が入ってきた。

(人間、人間…ミナ殺ス!)
「そうはいかないわ! 決戦よ、アシュタロス!」

 究極の魔体(アシュタロス)に向かって、まっすぐ突っ込んでいく。

「どこを狙ったらいいかしら?」
「これだけ近づいても、これといった弱点は見えませんね〜〜」

 しかし海上をまっすぐ進んでいた究極の魔体(アシュタロス)が、こちらに顔を向けた。

(メフィスト……)
「しまった、こっちに気づいた!」

 グオォォォ!

 究極の魔体(アシュタロス)は吼えるやいなや、令子や横島たちに向けてエネルギー弾の弾幕を発射した。

「このままでは避けきれないわ! ヤツの額を狙って、各自一斉攻撃!」

 合体した美神と横島をはじめ、魔鈴・ピートなどその場にいたメンバーすべてが、究極の魔体(アシュタロス)の額を狙って一斉に霊波砲を放つ。
 しかしその攻撃は命中する寸前にバリヤーに阻まれ、何のダメージも与えることができなかった。

「ぜ、全然効かないじゃない!」
「主神クラスとの戦闘を想定しているようですから、あれくらいの攻撃は無力化してしまうみたいですね〜〜」
「どうすりゃいいのよ!!」

 そこに究極の魔体(アシュタロス)からの第二次の一斉射撃が襲ってくる。

「緊急退避!」

 令子たちは海面下に避難した。

 グ……ルルルル……

(死ンダカ……デハ次ノ標的ヲ……)

 死んだフリ(!?)をすることで、なんとかやり過ごすことができた。
 令子たちを見失った究極の魔体(アシュタロス)は、そのまま東京方面へと進んでいった。

「面目ない……僕らはもうここまでみたいです」
「バリアのことがわかっただけでも十分よ、ピート」
「しかし、主神クラスとの戦闘を想定している以上、あのバリアは──」
「魔鈴さん、そんなこと言っても始まらないです。もう一度接近して、攻略法を見つけるしかないですよ。行きましょう、美神さん!」
「どのみち、ヤツの相手がつとまるのは最初からあなた方しかいません。あとは頼みます!」
「まかせろ! ヤツは必ず仕留める!」

 令子と横島、それにヒャクメは、他のメンバーを残し究極の魔体(アシュタロス)の後を追った。

(マズい……今の戦いではっきりしたわ。合体した時のパワーが南極の時よりも落ちている……シリアスになった横島君は人間的には成長したみたいだけれど、煩悩とともに霊力も下がっている!)

 令子は焦りを感じた。


BACK/INDEX/NEXT

inserted by FC2 system