ルシオラ・もう一つの物語
作:男闘虎之浪漫
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「魔族と神族はこの世界の覇権をめぐって、何度も激しく争ってきたのだよ、ベスパ」 |
「アシュ様の願いは新世界の創造か自らの死。そしてできることなら、自らの死を望んでいたんだ」
「そうだったんでちゅか。アシュ様は私たちの知らないところで、そんなに苦しんでいたんでちゅね……」
「アシュ様は、このことを他の誰かには話していないの?」
「誰にも話したことはないとアシュ様は言われた。本心を打ち明けてたのは、私がはじめてだそうだ」
「じゃ、このことを知っているのは、私たち三人だけってことね」
「しばらくは三人だけの秘密にするでちゅ」
やがてルシオラ・ベスパ・パピリオは、都庁地下のGS司令部に着いた。
そのまま美智恵のもとに向かう。
「ルシオラ、生きていたのね!」
「ルシオラさん、無事だったんですね。ずいぶん小さくなっちゃいましたが」
美智恵とおキヌは令子からルシオラの死を聞かされていたので、一様に安堵と喜びの声をあげた。
「隊長さん、今はそれどころじゃありません。アシュ様の暴走を食いとめなければ!」
「ベスパちゃんが、何か話すことがあるそうでちゅ〜」
美智恵たちは、その場にいたもう一人の意外な人物──ベスパに視線を向ける。
「あの究極の魔体は完全ではないんだ……。霊視では見えないけれど、腰の後ろの辺りにバリヤの穴がある。そこから大砲の根元のエネルギーパイプを狙えば、致命傷を与えることができるハズさ」
「あんた、アシュタロスを裏切ったのか?」
普段から用心深い雪之丞が尋ねる。
「裏切ってはいないさ……ただ、アンタ達にはわからないよ」
「そうでちゅ。絶対わからないでちゅ」
「ごめんなさい、今は詳しい事情を話せないんです」
ベスパをかばうルシオラとパピリオの態度に、一同は驚いた。
「俺は信じられねー、って言いたいところだけれど蝶の嬢ちゃんと蛍の姉ちゃんの言うことは信じるぜ。とくにアンタは横島の女だしな」
そう言って雪之丞はルシオラは指差す。ルシオラの頬がわずかに紅くなった。
「そうね、今疑ったところで仕方がないわ。あなたたちを信じます。パピリオ、二人を令子と横島君のところまで連れていって!」
「わかったでちゅ」