ルシオラ・もう一つの物語

作:男闘虎之浪漫

−4−



「ハァハァ、こんな思いをしてきたというのに……」
「ゼーゼー、バリアに気づかずやられてしまったとは!」

 究極の魔体(アシュタロス)のバリアについて知らせるため、小竜姫とワルキューレは復活したばかりでわずかなしかない霊力を振り絞って現場に駆けつけたが、既に美神たちは撃退された後であった。

「それでどうするんです、美神さん。もうすぐヤツは東京を射程範囲に捉えますよ」
「横島君、こうなったらもうやぶれかぶれで突っ込むしかないわよ。どこかにバリアの隙間があるかもしれないし」

 あるのかないのか分からないバリヤの隙間を探しながら攻撃するのは、常識的に考えれば無茶な話である。
 しかしこのままでは、東京は究極の魔体の攻撃で破壊され尽くされてしまう。もはや時間的な猶予はほとんどなかった。

「小竜姫、ワルキューレ、ヒャクメ、これから攻撃に出るわ。その前に……最後のお願いがあるの」
「なんだ美神、最後の願いとは」
「言ってください、美神さん。私たちにできることであれば何でも聞きます」
「とりあえず、願いを言ってみるのね〜〜」
「じゃ言うわ。あのね……あんたたち脱げ!!」

 ズルッ!

 小竜姫・ワルキューレ・ヒャクメが、いっせいにずっこける。

「な、何の冗談を言ってるんですか!」
「冗談じゃないのよ。あんたたち戦力にならないんだから、せめて横島君の煩悩度を上げてちょうだい!」

 令子は問答無用で襲いかかる。

「キャー!」
「イヤー!」
「やめんか、無礼者!」

 小竜姫たちは抵抗するが、小竜姫もワルキューレも復活したばかりで体も小さく霊力もほとんどない。また、ヒャクメは元々戦闘向きではない。
 一方の美神は、横島と合体しているから南極の時ほどではないにしても、そのパワーは並の神族・魔族をはるかに凌駕している。
 小竜姫たちの抵抗も空しく、彼女たちの衣服はどんどん引きちぎられていった。

「えっ!? 美神さん、俺そんなにパワー落ちてますか?」
「そうじゃなきゃ、私がこんなケガレをやる必要はないのよ!!」

(普段ならこんなにオイシイ展開はないのに……ダメだ! 全然萌えてこない!!)

 しかしその時、彼等に向かって何かが高速で接近してきた。


「ヨコシマーー!!」
「この声はまさか……」

 横島と美神は、声のする方向を振り向く。

「ルシオラ! それにパピリオとベスパまで……」
「ルシオラ、あんた生きてたのね!」

「時間がないから急いで説明するわ。バリアはアシュ様を完全に覆っていないの。腰の後ろの方にバリアの穴があるから、そこから侵入して大砲の根元にあるエネルギーパイプを狙って!」
「ルシオラ、お前生きていたんだな……。俺、もうダメだと思って……」
「ヨコシマ、今はそれどころじゃないわ。暴走したアシュ様を止めないと!」
「わかった! じゃ行くぜ!」

 そう言って横島が気合を込めた瞬間、奇跡が起きた。
 体が光り輝き、合体していた美神と横島のキャラクターが入れ替わる。
 瞬く間にパワーが増大し、全身に満ち溢れた。おそらく、南極で合体していた時の数倍はあるであろう。

(な、何なのこのパワーは……)

 今度は、美神が横島の体の内部に入ったかたちとなる。予想をはるかに上回るそのパワーに、美神は驚愕せざるをえなかった。

「ア、アンタ、煩悩がなくてもパワーが出るのね」
「美神さん、今回はおちゃらけは無しです」

 横島が、これまでにないキリリとした表情で応える。

「ヨコシマ、私待っているからね。必ず迎えにきてね」
「おう! 必ず迎えにいくからな。待ってろよ、ルシオラ!」


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