君ともう一度出会えたら
(12)
コンコン
「どうぞ」
ガチャ
「ごめんよ。なかなか来れなくて」
「ヨコシマ!」
「邪魔した?」
「ううん、大丈夫よ」
「時間が余っているから、人間の社会のことをいろいろ勉強しようと思ったの」
「ごめん。結局、軟禁状態になっちゃったな」
「でも事情聴取も強制ではないし、この部屋にいる限り行動は自由だから。今まで働き詰めだったから、ちょうどいい休養かもしれないわね」
「すごいな。これ全部読んだのか」
「斜め読みだけど、まだ半分くらいね」
「頭いいんだな〜〜」
「そうだ。食事をもってきたけど、一緒に食べない?」
「えっ、でも私は……」
「大丈夫だって。ルシオラの好きそうな物ももってきたから」
「えーと『谷川岳のおいしい水』に、『
「私のためにわざわざ買ってきたの?」
「さすがにコンビニじゃ売ってないから、デパートまで行ってきたけどね」
「私、グラスをもってくるわ」
「じゃ、食べようか」
「ええ」
「あっ、おいしい」
「これ、けっこう値も張るし売り場も限られているんだよな。でも当たりでよかった」
「大事な話があるんだ」
「何の話?」
「明日、南極に出発する」
「それって、まさか……」
「そう。アシュタロスのところに行く」
「アシュタロスが核ミサイルで
「間違いないの?」
「非公式だけど、アメリカとロシアの原子力潜水艦のうち数隻が連絡を絶ったという通達があった。たぶんアシュタロスの配下に乗っ取られたんだろう」
「おそらくパピリオの
「誰がやったにせよ、俺たちにはもう打つ手はない。相手の本拠地に乗り込んで、一か八かの決戦をするしかないってわけさ」
「……勝てないわ。あのアシュ様を相手にして、勝ち目があるわけないじゃない!」
「何とかなるさ。俺と美神さんはそのための訓練をしてきたんだ。それにまだみんなには明かしていないが、俺には秘策がある。少なくとも負けることはないと思う」
「……信じていいのね?」
「大丈夫。まかせなさいって」
「もう茶化さないでよ。真剣なんだかどうか、わからないじゃない」
「そうそう一つだけ、お願いがあるんだ」
「何かしら?」
「ひょっとしたら、向こうでルシオラを必要とすることがあるかもしれない。一緒には行けないから文珠で強制転送することになると思うけど、連絡のためにこれを渡しておくよ」
「わかったわ」
「でもヨコシマって、本当に不思議。普段はどう見てもたいしたことなさそうなのに、いざって時は必ず何とかしてくれる。まるでトランプのワイルド・カードみたい……」
「期待して、待っているからね」