竜の騎士

作:男闘虎之浪漫

第一章 『再会』 −9−




 デミアンは、その膨れ上がった巨体を突進させ、巨体で押し潰そうとする。
 ヨコシマとルシオラは、右側に跳躍して、その攻撃をかわした。
 すかさず二人で霊波砲を撃つが、胴体に大穴は開けたものの、すぐに修復されてしまった。

「こいつ、化け物か!」

「さっきからそうだったわ。何発撃ちこんでも全然こたえないの」

 デミアンが引きつった笑顔を浮かべる。

「クックック……私にダメージをあたえられる者など、この世にいるものか!」

 今度は巨大な尾を振って攻撃してきた。
 ヨコシマとルシオラは、空中に飛んでかわすが、すかさずデミアンが霊波砲を撃ちこんでくる。
 ヨコシマとルシオラは、かろうじてその攻撃を回避した。

「チッ、これならどうだ!」

 ヨコシマは『爆』の文珠を生成し、デミアンに投げつけた。
 文珠はデミアンに当たって爆発し、激しく爆炎をあげる。
 ヨコシマは、文珠の爆発でできた煙幕を利用し、デミアンに接近した。
 接近しながら、左手のサイキック・ソーサーに霊力を集中させる。

「ウオォォォ!」

 ヨコシマはデミアンにサイキック・ソーサーを投げつけた。
 至近距離から投げつけたそれはデミアンに命中し、その上半身を粉々に吹き飛ばす。

「決まったか!?」

「フッフッフ、言っただろう。私は不死身なんだ」

 背後から声が聞こえてくる。
 ヨコシマが振り返ると、吹き飛ばしたはずのデミアンの上半身が、竜の背から新たに生えてきていた。

「人間にしてはよくやるな。だがここまでだ!」

 新たに生えたデミアンのその胸に霊力が集中する。
 この至近距離で霊波砲を撃たれては、回避できない。
 しかし、その時……

「ヨコシマ! 危ない!!」

 遅れて突っ込んできたルシオラが、ヨコシマを突き飛ばした。
 デミアンから放たれた霊波砲がルシオラに命中する。
 ルシオラは、悲鳴をあげた。攻撃を受けた衝撃でそのまま弾き飛ばされてしまう。

「ルシオラ!!!」

 後を追ったヨコシマが、ルシオラを抱きかかえた。そのまま、空中へと退避する。



「しっかりしろ、ルシオラ!」

「ヨ…コ…シ…マ…」

「バカ、無理するんじゃない」

「聞いて……大事なことを思い出したの……
 デミアンのあの体は本体じゃないの……本体は別に、カプセルか何かに入っているわ。
 それを破壊しない限り、デミアンは倒せない……」

「もういい、しゃべるな」

「私ね……魔族(なかま)から切り捨てられたみたいなの……
 一人で闘って……そして、追い詰められてもうだめかと思った時……
 あなたが来てくれてすごくうれしかった……」

「ルシオラ!」

 ルシオラは目を閉じ、ガクンとうなだれる。
 ヨコシマの言葉に、ルシオラは返事を返さなかった。



 ヨコシマはルシオラを抱えたまま、地上へと降りた。
 そしてルシオラの体を地面の上に横たえさせる。
 しかし次の瞬間、彼は大きく()えた。

「ウオォォォァァァァア!!!」

 激しい怒りの感情がヨコシマの体からほとばしり、オーラへと変化した。
 (おびただ)しい霊気が彼を中心に渦巻き、舞い上がっていく。

「デミアン……貴様を……貴様を必ず倒す!!!」

 ヨコシマを取り囲む霊気の渦はやがて八つの流れに分かれ、彼の右手の中に収束されていった。
 ヨコシマの右手には、八つの文珠が握られている。
 ヨコシマはその文珠に念を込めると、二つの文珠をデミアンの右側の空間に投げつけた。

「東に青竜!」

 文珠が炸裂し、大量の霊気が発生する。その霊気は、胴長な東洋(イースタン)風の竜の姿へと変化した。

「な、何だこれは!!!」

 今度は、デミアンの左側に文珠が投げられた。

「西に白虎!」

 今度はデミアンの左側に、霊気の虎が現れる。
 デミアンはそちらを振り向くが、さらに驚愕(きょうがく)した。
 ヨコシマはすかさず空中に飛び、デミアンの背後に文珠を投げつけた。

「北に玄武!」

 デミアンの後方に霊獣が現れ、デミアンの退路をふさぐ。

「南に朱雀!」

 デミアンの正面に霊鳥が現れる。デミアンは四方を四匹の霊獣によって、完全に包囲された。

「見たかデミアン──これが文珠奥義、『四神結界』だ!」

 四匹の霊獣は、デミアンを取り囲んだまま動かない。
 しかし、霊獣たちから発せられる霊気がデミアンを囲み、強力な結界を形成していた。

「こ、小癪(こしゃく)な!」

 デミアンは霊波砲や触手で攻撃し、霊獣を追い払おうとする。
 しかしデミアンの攻撃は、結界によって完全に阻まれていた。

「四神結界は、内部からの攻撃を完全に無効とする。そして外部からの攻撃は、すべて内部に通すんだ。結界の霊力で数倍に増幅してな!!!」

 ヨコシマは霊波刀を出し、結界の中のデミアンの体に突き刺した。
 そして、霊波刀の霊圧を高め、デミアンの体内の共振点を探す。
 共振点は、すぐに見つかった。

「これで終わりだな──」

 ヨコシマは、左手に霊力を集中させる。

「ば、馬鹿な……不死身の私が、こんな人間ごときに……」

 ヨコシマの左手から、霊波砲が放たれる。
 その一撃は、デミアンの体内に隠されていたカプセルを破壊し、デミアンの本体を一瞬で消滅させた。
 本体が消滅すると、デミアンの体はたちまち崩れ落ちていった。



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