原作私的勝手解釈の説迷惑、もとい説明役もこなせる横島君。
何て便利なキャラなんだ君は!
モンジュは反則異聞 絶対なんて無い
作:Nar9912
あまり(02)
そも美智恵の死因……偽装されたそれ……は何だったのか。
もし美神夫妻以外に誰も仮初めの死であると知らなかったのならば、強運を要求されるGSとして寿命でなく死んだ筈の美智恵に全権をすんなり委任したなど思えない。
考えれば考える程絡み合うかの様な妄想は生み出され続けるのだった。
此処に於いて最低でも二つの可能性がある。
一つは神魔……恐らくは神……が神託を行っていた可能性。
ラプラスがその役を買ったのかも知れないが人間同士の争いでないなら人は一致団結して準備を整えてもいただろう、彼の予知は飽くまで日記を視るだけ。
情報源は彼でなく日記を書いた当人即ちローマ法王の文言。なれば神族から日記へ書かぬ様に言われればそれだけで彼でさえ知る事は出来ない。
彼は只の前知魔に過ぎず全知で無いのだから。
日記に書いたとしても“大事件があったが最小の被害で食い止められた事を主に感謝する”とでも書いたならば、彼には内容など分からない。
彼の能力は日記の内容と保管状況を知る程度でありそれを触った者の心情まで読めはしないだろう、そうなれば夢がテレパシーで繋がる以上全て知り得るとの帰結となろうから。
彼が悪魔である以上たとえ全て主の創造物とするカトリックに於いてもその言葉を信用しはしないだろう、誰にも確かめられないのだから如何にも悪魔の言に相応しい事もあり、いやそれは真か。
如何あれこの事件に於いて神魔族最上層部は神魔と人間の極一部にだけ真相を知らしめた可能性がある。
それが法王にであれ最高指導者が直接夢枕に立つなどしないだろう故に知っていた神魔が居た筈だ。
勝てる戦ならまた勝つ為に隠匿する必要があるならそれに反対する理由も無く、伝えられた者達が出来るだけの事をしていたとしておかしくない。
もう一つは美智恵が予め必要な者達にだけ真相の一部を知らせていた可能性。
唐巣は日本GS協会に於いて相応に力のある人物で、美智恵の最初の師……真に最初の師は両親であろう、小学生の彼女が破魔札を使ったのだから……である六道夫人は言うまでも無く大きな力を持つ。
この二人に知らせていたなら日本GS協会は問題無く世界GS本部には日本GS協会から伝えられた事が容易に想像出来る。
日本人は責任に弱く魔神が核ジャックするなどとの大事件を知ってしまったなら上位組織である世界GS本部に知らせない訳が無い、解決策もあるのだから……美智恵が生き証人……霊的に世界に対して優位に立てるメリットもあり知らせない理由が少ない。
この場合もやはり結局は美智恵を通じて神魔が知らせたとも言えようものだがこの場合は最上層部以外の神魔が知らなかった説明が付きもする。
美智恵は確かに小竜姫達へ、関係者との連絡は一切断つと言った。だが関係者とは一体誰なのか。
その上その後の約束を守るとは一体何の約束であったのか。
神魔の最上層部との約束と見るのは、果たして荒唐無稽であろうか。
現場で対応したのは小竜姫、ヒャクメ、ワルキューレ、ジークであるが機密事項全てが彼等に知らされただろうか。
最上層部からの通達を受けその中身の全てを知ったのは美智恵だけとの可能性は皆無だろうか。
関係者とは知ってしまえば歴史が変わっただろう者達だけとは取れないだろうか。
更に知らせるべき事柄を知らせるべき者達だけに知らせられる様、最上層部が行動したとはあり得ないか。
法を遵守しもしないGS達をそうそう逮捕しない事なども含め。
神魔の許可があってこそ元の時間へと還り得たのだ、時空の混乱を避ける事は神魔最上層部の決定であり美智恵や公彦が五年前から知っていながら事実を告げずに居た事は彼等だけの責任では無いと見るべきで無かろうか、いや本当に時空は混乱するのか。
記憶操作乃至は意識操作、知っていても想起出来ないとするなど神魔の最高指導者に取って困難か。
過去に戻った美智恵自身が詳細を思い出せない状態でありながら最上層部の必要に応じて断片的な経験を“思い出して”手を打っていたとして、矛盾はあるだろうか。
よく言われる様に知らなければ答えようが無いが、知っていて思い出せないのであっても同様では無いか。
必要に応じて“思い出させられる”のならば。
美智恵自身が全てを思い出せないなら当然誰も全てを知り得ない。心を読める公彦も美智恵だけは読めはしない、ならば誰に分かるのだろう、本人さえ分からない事を。
ヒャクメなら分かるかも知れないが美智恵と接点など有ったのか。
そうしたなら、元よりルシオラの喪失を他人の所為になどする気は無いが、それでも美智恵を責める事があろうと彼女には言い逃れ出来る。
神魔の最高指導者は人に恨まれるなど日常茶飯事だ。
美智恵自身がそれを良しとしない事もあるだろうが神魔として手は打ったと言えよう。
何もGS達だけが生き物ではなく、彼等が世界の中心でもない。世界では日々生き物が死んでおりそれは余人も同じ、偉大な成果を残した人物が苦悩の裡に生を終えるなど嘗てもこれからも有る。
GS達やルシオラだけ特例となる訳も無い。
……あの時彼女の霊体が入っていた事が魔体を破壊し得た決定打でなかったか。あの時横島は霊力の源となる煩悩を自分で封印したも同然だった。
にも関わらず力を出せたのは怒りの為か、勿論それ相応にその為でもあっただろうベスパの結界を独力で破り得たのは美神の死に際して引き出された怒りからの霊力であった筈だから、だがそれだけではない筈だ。
同期の力は確かに落ちていたがベスパを見て引き出し得た力は本当に横島だけのものだったか。
あの時の同期は実際の所四人のそれであったのでは無かろうか、人外との親和性が無闇に高い横島と美神ルシオラそしてメフィストの。
各々思いは異なれど魔神を倒す事横島を助ける事に於いて彼女達の意思が一致したと言えないか、美神は何だかんだで横島のフォローをしている、正に同調率四百パーセントだったかも知れないのだ。
その際に煩悩を全開出来た理由が彼女達にあったとして無理があるか、あの時の妄想で最も大きな範囲を占めていたのが美神であった事がメフィストの介入もあった証とならないか、美神は横島の煩悩までをも支配するのでは無かったか。
余談であるが、あの煩悩全開には興味深い点がある。
例えば面積で美神が一番であるが効果音に重なり隠されてもいる。それが美神の裸身を見せたのが美神でなくメフィストだった可能性即ち如何に来世であれ他人の裸身を見せる事に躊躇いもありまたメフィスト自身を想像して欲しいとの、
女の我が儘があるのではないかと。
ルシオラについてはその様な問題など一切無いからこそあの想像となったと。
小竜姫やキヌの顔しか出なかった者達については横島が無意識に神聖視している者達だからではないかと。
神魔族では小竜姫にだけ横島は様付けなのだ、キヌについてもむしろ妹の様に大事にしている節さえある事が無かったか。
前面は気安さなりを表わし後面に行く程に心理的距離が遠いと表わしてはいないか。
詰まりどれだけ明らかになっているかが横島の深層意識と同期している者達の心境を如実に表わしている可能性は無いか。
無論全くの余談ではあり思い付いた順と知識がある順に過ぎない可能性は高いが。
そして相乗効果である同期の倍率は二人での数千倍でなく四人即ち数千倍×数千倍で軽く数百万倍以上となった可能性もある、効率を考え尚数千万倍に届いておかしくないのだ、怒りと煩悩が上乗せされたから。
魔神であれ魔体であれその力の前に一撃で倒されても当然だったのでは無かろうか、事実が示す様。
さて美神だけは実際に裸を見たとの点がありそうだが妄想にシロの姿があった事はロリ説の証では……。
もし美智恵達がその様な形で知っていたならとして皆の行動を振り返ろう。
まず第一に時間移動能力者が狙われていると知ったのはハーピーとの戦いに於いて。
娘を狙わないでいて欲しいと言いはした。
だが狙われているのが時間移動能力者ではなく娘であると気付いただろう時が、娘に時間移動能力が発現する事件。その際、美智恵はテレパシーを用いて横島の夢や娘に警告を送った。
彼は内容を覚えていなかったが彼女は、支えてやらなければ、彼しか側に居てやれないと名指しで伝えた。
それはその彼女が魔神戦を経た証拠ではないか。
故に仮にも霊能者である横島さえ何者かの意思が働いて内容を覚えていなかったと言えるのだ。
「そーだ、そーでも無ければ俺が忘れる訳無いじゃねーか。」
あの娘を守って、親が言えば横島の妄想は……忘れる道理が無い気もする。
それは雷で霊力を圧倒的に増していた美智恵の仕業かも知れない。その当時の横島であれば美神でさえも気の所為かと思ってしまう程の慎重な接触に気付けなくとも無理は無い。
だが本当に美智恵の力であったのか、仮に美智恵の力を含んでいても美智恵だけだったのか。
あの事件は偶然だったのかいや必然であろう。
横島が夢で美智恵と出遭った為に遅刻して、マリアが偶々充電中で居て、横島がマリアに触れて充電中であったマリアが何故か放電して……
横島が美神に助けを求めて触れるのは当然であろうし、美神も何だかんだで横島を常に助けて来た以上は感電死を防止する為に眠っていた能力を発現させ得たと言えるだろう、横島の為に。
だが本当に上記が全て偶然であろうか、偶然なら美智恵は何故知っていたのか。
そして何故、横島に美神を助けられる程の何か……力や強運……があり側に居てやれると知っていたのか。
あの美智恵は魔神戦後の彼女と見て間違いなかろう。
待て、空母の作戦は大前提がおかしくないか。
確かに仮定に過ぎない状況を実現させるのは指揮官次第。だが仮定に根拠が薄過ぎはしないか。
あれは時間移動を用いた技に相手が気付けず大打撃を受ける事と業を煮やし飛び出す事が前提だ。
しかし美智恵はどうやってその状況になると知ったのだ。
三姉妹は実力も性格さえ碌に見せてはいなかったではないか。ルシオラ達は横島が指摘した途端に真相に気付いた、魔族のファイルや断末魔砲独特の発射音、指摘せずとも気付いた可能性は零では無い。
相手と火力が同等で相手には攻撃が当たらない、普通ならば回避に専念しつつ観察しておかしくない局面だった、二撃目で潜航装置が破壊されたのは偶然なのか。
そも知っていないとおかしい作戦ではないか。
コストが掛かる上に変換魔法陣を使えない西条達まで連れての総力戦とさえ言える状況。
守るべき娘ターゲットである娘に怪我を負わせ附いて来させなかったその状況。
己が倒れた際リーダーとなる西条の信頼を得る為いやそれ以上ではないか。
正に彼の言葉通り“全部美智恵の計算”だったのではないか、知っていたが故の。
ルシオラとの始まりさえ知っていた者が居たと思えてくる。
あのシチュエーション以外でどうやって恋が芽生え得たか、そしてルシオラは横島に匹敵いやそれ以上にキーパーソンだった。
逆天号もルシオラさえブリッジに居たならあの様な目に遭わなかった可能性がある、ベスパ飛び出しも長姉が制したなら踏み止まったかも知れない。
ルシオラが修理する事もベスパの飛び出しも美智恵が知っていたなら。
西条も霊能者、その勘がそう簡単に外れるのか。
渦巻く断片は更に混沌としていく。
…
横島は確かに美神の為に強くなろうとした。いやそれは時にキヌの為でありケイの為だった事もあり他の仲間達の為だった事もあるのだが、殆どに於いて美神の為だった。
美神の元に引き寄せられ事務所に雇われた。
荷物持ちとセクハラへの体罰で肉体は鍛えられた。
GSに必須の強運はその当時でさえ人並み以上に有った。
霊能も無い状態で美神、唐巣、ピートが倒されたパイパーに立ち向かい侠気を見せた。
小竜姫に出逢ったのも美神と共にであり横島とキヌ無くして美神はあの修業を生き延びられはしなかった可能性が高い、その出逢いで小竜姫の目に止まった。
天龍童子があの時、結界破りを持っていたのは真実偶然だろうか。
結界破りは妙神山のそれでなく、火角結界をこそ破る為だったのでは。
余りに短時間で行われた神業、正に背後から見守っていた者が居たのでは。
GS試験で小竜姫は心眼を与えさえした。
理由である天龍童子の一件は小竜姫が美神除霊事務所に持ち込み、その時既に天龍童子は横島と出遭っていた。
小竜姫が美神を訪ねたのは人里を知らず、唐巣が偶々外国へと赴いていた、からでもある。
妙神山から出ず居る様に役目を課したならばそうそう留守には出来ずそうなくとも生き急ぐ人の世の移り変わりについて行けないだろう。
GS試験、横島は煩悩を霊力に変換した事が明らか。ではその対象は誰だったか。
確かに九能市や痴漢対象となった女性達も煩悩源となってはいたがここぞとの時は二度とも対象は美神であった。
一度目は陰念に対し霊力が枯渇した際、二度目は霊力枯渇は疎か心眼さえ失う雪乃丞との戦いの最後の一幕。
尤も煩悩だけでは無い事も同時に示されている。それは陰念に対して二度目に霊力が枯渇した際、自力で霊力を引き出し人間離れした動きで魔装術に対抗した、栄光の手も同様。
雪乃丞は人間では誰より素質を分かっていたのかも知れず、それが次の修行に繋がった。
美神暗殺を試みた魔族達の事件に於いては何故か情報が漏れもした。
時間移動能力者を狙っていた事件は遙かな過去から起きていたにも関わらず、美智恵も狙われた。
神魔はそれまで何をしていたのだろう。
いやむしろ美神の場合に限って護衛が附いたのは何故であろう。
それまでは美智恵の場合に於いてさえ放置した……正確には情報を得られなかった……と言うのに美神の場合に限り強力な護衛を附けたのだ、デミアンの疑問は当然であろう。
……デミアンが受けた命は美神を殺し魂を持ち帰る、神魔が魂を扱える事はメフィストが高島の魂を手にした件から明かであり、故に魔神戦で美智恵に対し抵抗勢力だっただろう者達が即時暗殺可能とした事に不思議は無い。
神魔が力で為す事を人は知識技術と装備儀式で成すのだから殺した美神の魂を封印すれば感知されない何処かに隠せば時間切れで人の勝利が決まっていた。
其処までせずとも魔神の勢力が居ない場で殺すだけでも事は決まっていた筈だ、転生の輪に入れたなら。
本人が赴く余裕さえ無しに居たのだ、核を奪ったのはパピリオで魔神は妨害霊波を保つ為地球の霊的中枢から出られもしない状態だった、其処まで衰えていたのだ。
人の戦略は間違いで無くむしろ美智恵こそ皆に危ない橋を渡らせ過ぎていたかに思える。
未だ同期を見出していない筈のその時期に説得し得たのは未来を上部に伝えていたからではないか……。
実行犯の主犯格デミアンが知らなかったにも関わらず、魔界正規軍はワルキューレを寄越した。
小竜姫がそれを全く知らなかった事から魔族に拠る時間移動能力者殺人事件は魔族の問題であって神族が人界で対抗する訳にいかない政治的な問題だったと言えよう、妙神山に来たデミアンさえ小竜姫が相手をする事を猿神は控えさせたのだから。
そのお陰で横島は文珠に目覚め、雪乃丞も魔装術の極意を極めたのであり、美神もそれなりには魔族とも戦える様になり、前世の秘密がその際に初めて神族の知る所となった、表向きは。
……その時既に魔神は美神こそターゲットと知っていた、名前も含め。
其処にある三姉妹達へ何故伝えなかったのかとの謎は神魔が名前を重要視するか否かが一つあろう。
神魔は上位となる程に名の全てを言わない傾向があり無用なら名を出しさえしない。人界に於いて名前を知られたなら相手の装備力量次第で神魔が操られる事さえあり得るのが一つの理由だろう。
一方人間ならその危険性は言霊でも使われない限りそうありはせず、偽名を名乗る事も容易。
普通の変装なら霊的特徴を知ればそちらが決め手となるだろう。勿論其処には失念していたとしか言えぬ誤りがあるが真に魔神のうっかりミスかは……。
横島を追い払ったのがワルキューレ、妙神山へ誘ったのが雪乃丞、老師との修業を認めたのが小竜姫。
美神もそれが為に受けヒャクメの来訪となる。
ヒャクメは逆天号に囚われた際、神魔の転位を封じていたであろう其処からの脱出いや檻から出る事すら不能であったにも関わらず美神に忠告と情報を与えて只檻を開けさせたのみだった……それが出来た事で美神が幽体時のキヌに斉しい力を持つと分かる。
横島を正確には彼の“爆”を当てにした、それ程には彼の実力を分かっていたのだ。
ルシオラでさえ当てにしないけれどと言った美神が美智恵立ち会いで試合を行うまで同等と認めなかった程に分かり難かったそれを、ヒャクメは如何に知ったのか。
「ヒャクメは力を隠してたのか、全てはヒャクメの意のままに……
嘘だ、あり得ねー、ナッシングっ! てゆーかナン・センスっ!!」
更に檻は霊能自体を封じていた可能性 が高い、そう無くばケルベロス達を閉じ込め得た理由に欠ける。
ならば何故美神は擦り抜けられたか、それはパピリオが横島を檻にぶつけた事で壊れていた可能性がある。
だからこそ横島の霊能で助かるとヒャクメが踏んだ可能性が。
小竜姫は美神の修業に於いて時間移動はそれ程のものではないとの見方を示している。
制約の多い神魔に取ってはそうあるのかも知れないがその見解はドクターカオスとは丸で逆。
彼は時間移動能力を全ての因果律を覆す究極の超能力と言った、解説モードの彼が嘘を言うだろうか。
彼女から見たなら時間の復元力は十分強いのかも知れないが誰からもそうとは限らない。
時間移動能力は霊力で行われる事もあるだろうがカオスが説明した通り超能力と見るべきであろう。
霊能から掛け離れた奇跡を起こす横島や美神家の様な非常識な者でなければそうそう為し得ない超能力と。
それは神魔にさえ当て嵌まるかも知れない。
何故ならヒャクメは美神の能力を使って時間移動した、機転は見事だったが魔神も含めそれは時間移動が出来ないとの証明では無かろうか。
或いは神魔の時間移動は禁じられているのかも知れない、如何に最高指導者達であろうと時間を超え跳ぶ者ばかりではバランスを取る事さえ困難であろう、その様な神魔は居るとしても厳重な監視が付いているかも知れないのだ、デタントが訪れた後では。
ハーピーの台詞もその証と成りはしないか、己達が時間移動出来ぬからこそ能力者を殺す名分に従ったと。
美智恵の行動が娘が狙われる事とその理由を知っていたからこそと考えるに無理が過ぎるだろうか。
そも当時の横島が美神に戦闘面で戦力として支える程の力を持つとは誰一人として考えてもいなかったであろうに、小竜姫でさえその後ワルキューレが来た事で妙神山を訪れて初めて理解した事であろうに。
……雪乃丞は自身と互角と見ていただろうが一方自身が美神に勝てると思ってもいなかっただろう戦闘と限ればそうでも無かっただろうが罠など手段を選ばせなければ美神に勝てる者はそう居ない……。
少なくとも横島の夢に現れた時点で美智恵は娘にも時間移動能力が発現すると知っていた。
人工幽霊一号に頼っていた節のある当時の美神に気取られない様に見守るくらいは出来たであろう、当の事務所に気付かれずに警告を与え得た以上は。
ハーピーの件で見守っていると言っていたがそれが霊では無かった事は明かされている。
過去から彼女が来ても美神は気付けなかった、ならば常に美智恵が見ていた可能性は。
美智恵には心強い弟子である西条が居るだろうに、夢で横島に伝えているのだ。
当時なら圧倒的に西条の方が実力者であっただろうに。
その西条が現われたタイミングは時間移動能力発現直後、それも場所は美神除霊事務所の隣。
其処に何者かの作意が無かったと言い切れようか。
側に居られない美智恵が信頼出来る弟子を派遣して娘を守らせるとの意が無かったと言い切れようか。
然も無くば女性経験豊富な彼があれ程強引自身そう言っていた強引さで美神をGメンへ入れた事の説明が付き難くはないか。
ならば彼が横島を呼び出し戦ったのは、もし横島が負けていたなら彼に娘を任せるとした美智恵の意思が働いていた可能性その意を受け横島の戦闘に於ける実力を彼が知ろうとした可能性は……
いやそもオカルトGメンは何時出来た、精霊石弾頭ミサイルだの無茶苦茶な装備を持つ国際機関に過ぎぬ筈が湯水の様に予算を使えるあの組織は、どう出来たのだ。
その創設に霊能の大家で呻る程の金持ちである六道家、その弟子で聖人を絵に描いた様な一面を持つ唐巣、そして二人の弟子であり他には知り得ない知識を持つ美智恵の影が無かったと言い切れるのか。
唐巣が海外に出向いていたのは果たして修業と除霊の為だけか。
其処にオカルトGメンの如き組織を創設する意義を伝道との側面は無かったのか、いやそも貧乏な筈の唐巣がどうして海外へ幾度も……小竜姫が天龍童子の件で訪ねようとした時も含め……渡航出来ていたのか、
美智恵は正義を諦め娘の為に動く事を何時第一義としたかいや娘を守る事は親に取り正義であろうが。
そもオカルトGメンが魔神戦の為に創設された可能性は皆無なのか。
美智恵が病床にいたとされた時即ち美神が10歳の時……彼女が死んだとされた際から五年前……に西条は何故イギリスを選んだのか、
Gメンに入れと彼女が勧めたなどそして彼女の紹介であったその点で修業を兼ねてのGメン加入が認められたのでは無かろうか、彼女は元々Gメン内で強い立場に居たのではないか、自身所属しておらずとも。
だからこそ時間を置いても美智恵は隊長と成り得てそれが面白くない内部の者達が美神暗殺に動いたとの背景があったのでは無かろうか、神魔もそうある様に人は一枚岩では無いのだから。
暗殺部隊は期限が迫ったから侵入したとヒャクメが言ったそれもおかしい。
魔神自身が早々に赴いた可能性が皆無と何故思える、知っていないとおかしくはないか。
さてイギリスで西条は魔鈴と出逢っている、それは偶然の為した業なのか。
また美智恵は、美神が10歳の頃から病に冒されたとした事を以て行動の自由を確保したのでは無かろうか、公彦と引き合わせる機会ともして。
病床ならば一緒に暮らせずとも不思議は無く美智恵が抜け出し修業や準備を行っていたとしても時間の問題は時間移動を使わず解決し得る。
当時美神は霊能など霊視が関の山であった筈だ、故に幾らでも誤魔化しようがあろう。
そう松尾総合病院自体隠れ蓑であったとも思えて来る、今これ程の影響力を持ち得た事からは。
無論仮定に過ぎない事だがオカルトGメンの様な存在は何れ出来た可能性はある。
だが組合の如き組織であって儲けを必要とするGS協会やGS本部がそれに何故反対しきれなかったのか。
オカルトGメン所属者であろうがGS協会などには登録されているのだ、ザンスの件で西条と横島の情報漏洩はGS協会の名簿盗難に由来するのだから。
ならば所得から組合費を出すであろう組織がオカルトGメンの様な公費で動くそれの存在を簡単に認める訳が無いのではないか、得てして協会というものは利益を得なければならないのだから。
故に創設を認めるにはそれなりに何かがあった筈でまた軋轢はある筈なのだ。
だからこそ美神暗殺などと世界GS本部が決定を下したとも言え……お役所で無い専門家集団には弱い一般人の為にと尊い犠牲などむしろ歓迎したかも知れない……美智恵が反対を貫けたのは、
オカルトGメンをこの事態を想定して創設していたからではないか、人命を救うとの名目があればそれが自らに縁有る者ならば六道だろうと唐巣であろうと手を貸した可能性は無いか。
当然ながら、お役所であるオカルトGメンの横島への扱いに疑問が生じるがもし美智恵が知っていたなら、未来を知っていたのなら答えなど簡単だ。
横島がスパイとして潜入するからこそ勝てると預言者美智恵が言えば、皆従わざるを得ないだろうから、
だから人類の敵としてTVにはっきり映りさえした横島へのフォローがこれ程まで徹底し、元通りと言える……心中以外は……状況と成し得たのでは無かろうか。
人権を尊重して人道を守るべき公的機関であるオカルトGメンなのだからトップクラスと言えるGSとは言え未だ学生の彼への潜入指令を認めた事には美智恵の暗躍があったとすべきではないか。
「詰まり……やっぱ俺の人生、あの母娘の所為で無茶苦茶?」
可能性は決して低くない。
だが何時もの様に、こーなったら美神さんの身体で払って貰おーか、などとは考えられない。
如何にタフにも程がある横島でも、殺し別れの後は、そんな気になれない。
そんな時に限って美神がはっきりした気遣いを見せたりもする辺りがまた、全てはヒャクメの意のままに、もとい宇宙意思や神魔族最高指導者そして美智恵達の企てであった可能性を広げている。
飽くまでもこれは憶測で確信など其処には得られはしないのであるが美智恵ならば遣りそうだ、
唐巣達も弟子の娘そして人類を救う為なら協力した可能性もあり全て知らせてはいなかったとして唐巣を誤魔化す事は彼女に取ってそれ程困難では無かったであろう、
六道夫人は表舞台に出ておらず霊能科などと特異な科を持つ学院、普通科以外にそれを持つ学院を創設したがそれは地価高騰などでGSとの異質な職こそが全盛期を迎えるとの予感のみからだったのか。
其処に魔神戦に備えGSを鍛えるとの意向は無かったのだろうか、六道家が横島GS試験時にあの冥子を救護班に送り込んだのは果たして偶然か、其処に霊的に大打撃を受ける陰念の治療そして起きるであろう災厄への対抗としての意味は無かったのか。
冥子を送り込んだのは仕事の成功率を高める為で修業の為でもあっただろうが、それだけで多くの同業が集まる中で暴走の可能性がある冥子を送り込んだだろうか。
時間移動能力を持ちある程度それを自在に操れる者が絡んでいる以上は前知魔じみた行動があっても別段おかしくはない、特に神魔の最上層部が絡んでいたのなら。
そしてその能力を知っている者達なら味方に附く方が有利と判断出来もしただろう、何しろ相手は未来を知っているのだ、限られていようと。
だが美智恵が全てをコントロールしていたとも限らない。それにしては彼女自身が倒れるなどあって仮に妖毒がもう少し強ければ、仮に時間移動応用攻撃での消耗が予定外に激しければ、仮に……
ほんの少し切っ掛けがあれば異なっただろう事態に対して予防措置が無かったのだ。
いやそれこそ暗躍したと疑わせない為の偽装では無かろうか。
美智恵が未来をある程度知っていたのはほぼ確実であろう。
夢の件だけでなく妨害霊波発生前を狙って時間移動している事も大きな根拠の一つだ。
だが全てを知っていたとも思えない、知っていたなら行動に幾つかおかしな点があるから。
彼女自身、誰かから概要を知らされたそれを以て計画を練っただけと見る方がより自然なのだ。
その誰かが未来の彼女自身であったのか神魔の誰かであったのか或いは未来を予知し得た誰かから六道やGS協会はたまた世界GS本部或いはオカルトGメンを介して伝えられたのかは別として。
勿論未来の本人である可能性も無くはない。
未来から還った彼女は自身言った様に過去の自身から逃げただろう、魔神戦の間は。
しかしそれ以前に於いて過去の彼女とその時点での彼女が接触しないでいられたかどうか。
ハーピーとの戦いに於いて公彦へ言付けた手紙の中で、彼女自身彼に逢っていると明かしていた。
その時点で未来から還った彼女も彼の元に居た筈なのにである。
美智恵はタイムパラドックスさえ自在に操れると言うのか、それは無いだろう、故に知っていた筈なのだ。
魔神戦を経た彼女が隠れようと公彦の態度で見破るくらい霊能ある妻なら出来て不思議で無いから。
他にも根拠はある。
ハーピー戦直後に有った唐巣との再会に際して美智恵は唐巣を美神の師匠としてしか見ていない。
唐巣が彼女の師匠であるにも関わらず。此処で重要な事は唐巣もそれに対して普通に振舞った事実である。
またその時点で美神は彼が彼女の師匠とは知らなかったであろう。
その根拠が師匠である彼に全く敬意を払っていなかった事。
時空内服消滅液の際に研修中の美神が師を尊敬していない事が横島の目から見ても如実に分かった、無論ブラドー島の件での遣り取りで、確実となったが。
彼女は師に仲間へ対してのそれと同程度の対応しかしていなかった。
だが仮にも尊敬する母親の師にその様な態度を取ったであろうか、たとえ美神であろうと。
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