さながらビッグバン直後のように広がる妄想領域。まくーくーかんで三倍量?!



 モンジュは反則異聞 絶対なんて無い

作:Nar9912

あまり(03)




 唐巣だが彼は少なくとも美智恵の師である事を隠して居たのだろう、時間移動は知っていたのか不明だが彼女が彼に師事した間の事は彼の口から語られるそれしか美神でさえ知らない。
 何らかの秘密があっても公彦同様に彼も黙っていたのならば……
 そう唐巣にも謎がある。
 それは六道との繋がり、其処から来る冥子だけでなく美神とエミにも関する事。
 まず六道との繋がりは聞けば判明するだろう師弟の関係であろう、宗派は異なるが霊能家としての最初の師では無かろうとGSとしての後見人が六道であったなど、容易に推測出来ようもの。

 さて、美神が通っていた女子校と現在の六道女学院とで制服が異なるが、一方で彼女は六道夫人と面識があった、六道家を訪れたのはヒミコ降臨の儀式が初めてだとの事実にも関わらず。
 その際その姿に一瞬であれ驚いていたがそれは暫く遭っていなかった乃至はその服装の夫人に遭っていなかった事の証明に過ぎないだろう、
 何故なら同じく一流のGSであるエミが知らなかった六道家の女達と式神の関係を説明しているのだから。
 それは六道家以外の場所で会っていた証明に他ならない。もしそれがGS試験後にあるのなら同じ年度に
 GS試験を受けたエミが六道夫人を詳しく知らなかった点が些かおかしい。
 小学生になって初めて遭った父親そして中学生の際に母の死、
 荒れていた中学時代が終わって公彦が妻の師であった六道夫人へ娘を託し故に母の死を乗り越えた美神が当時の六道女学院へ入学、
 それ故に千穂は霊視程度の経験しか無い彼女に霊能力があると知っていたと考えられよう、勿論千穂は女学院の普通科であった筈だ、六道女学院は霊能専門学校では無いのだから。

 冥子との出会いがGS試験の際であったという点でその考えは多少無理があるが、あの六道夫人が問題のあった冥子を己の経営する学院に入学させて霊能科に通わせただろうか。
 学院には通わさせず六道家内に於いて家庭教師などで対応させたとは考えられないだろうか、高校は義務教育ではないのだから学校へと通わなければならない訳ではない。
 霊能家となる事を運命付けられた一人娘である冥子に英才教育を施そうと、多少遅いのではとも余人には映るそれをしていなかった方がおかしくはないだろうか。

 尤も、それでも結局は暴走を繰り返し遂には死の試練を受ける羽目になったのであるが。
 ところでその業績いや偉業とさえ言えるだろうその脅威の記憶が新しい嘗ての依頼者達や関係者達そしてその者達から事情を聞いた多くが誤解しているのだが、冥子はその後、暴走してなどいないのだ。
 美神が死んだと聞かされた時でさえ、エミが皆を立ち直らせるまでギリギリであろうと我慢もしている。

 言うまでもなく試練が効いたのではなくその後の美神とエミのスパルタ教育が効いたのだろうが、其処に大切なお友達に迷惑を掛けていた自覚も多少あったのだろういやあって欲しい、無かったなら問題だ。
 ともあれその件以前の冥子は六道女学院と関わらせる事に問題があった、が為に初顔合わせがGS試験であった点はそれ程には意外でない。

 また美神とエミの出遭いだがそれは本当にGS試験時だろうか、むしろ高校時代に知り合っていたとする方が自然では無かろうか。
 何故ならエミは霊能自体は十分にあったがその過去が伏せられている、詳細を知る者は少ないのだ、嘗て呪殺を行ってきた殺し屋だったとの過去など知る者は。
 そして10歳で親が死んだ彼女に霊能以外の教養が身に付いたのは一体何処からなのだろうか、誰かが手を回して高校へ……六道女学院へ……と通わせたとして不自然に過ぎるだろうか。
 だからこそ千穂の様子を見ていた彼女は美神を同性愛者呼ばわりしてからかっていたのでは無かろうか。
 だからこそ美神はあれ程安い挑発に乗っていたのでは無かろうか、幾度も幾度も言われ続けたからこそ。
 そも果たしてエミが独りで噂を揉み消し得たのだろうか、一体どうやって。
 更には妙神山にて修業を受けているのだが、その紹介状は一体誰が書いたのだろうか、そう美神にエミの妙神山での修業の事実を告げたのは他ならぬ、唐巣なのだ。
 それ即ち彼が紹介した証拠として早計だろうか、彼等がエミと美神とを合い競わせていたとするのは。
 美神の魂が遂に奪われたあの時エミが、自他共に認める美神の好敵手であるエミが居なければ、GS達は崩れてしまったかも知れない、だからこそ彼女達は知り合っていなければならなかったのでは無かろうか。
 彼女が六道女学院に通っていたと示す根拠がある、それは学院のインストラクターを務めている事。
 無論美神もそうであるがエミは縁が無ければその様な事をするだろうか。
 此処で六道夫人との面識の無さが問題となるかも知れないがそれは説明出来る。
 通常一介の学生と理事は親密にはならないもの、一方で美神ならば少なくとも母の師であると明らかで彼女が立ち直った事に関し夫人や周囲の努力があったと考えられよう、自ずとエミのそれとは親密さに違いが生じるだろう。
 そもGS試験で競っただけであれば暴走させられた者を冥子が家に呼ぶだろうか、母が経営する学院での優等生……霊能と成績が……であったからこそその後も付き合い、家に呼んだのではないか。
 美神には夫人も唐巣も力を貸す義理もあるがエミにはそれ程無くそれが夫人とエミの親密さとの形で表に表れたのでは無かろうか。
 そも理事であり己達が学生であったからこそ放置せず死の試練の後にスパルタ教育を施す即ち修業に付き合ったのでは無かろうか。

 唐巣もまた霊感に導かれたかある程度の真相を知って美智恵などと組みこの現在を編み上げて来たのでは無かろうか。いや何よりも結果が物語っている。
 美神、エミ、冥子そしてピート。
 本人だけでなく魔神戦へと関わった者にあまりにも彼の弟子や関係者が多いのだから。
 更にはドクターカオスとマリアもまた唐巣に拠ってブラドー島へ呼ばれている、本当に単なる偶然なのか。
 いや横島やキヌと冥子の出会いも或いは唐巣や六道夫人が……それ故の将来の日本GS協会会長では無かろうか。

 更に謎がある。何故カオスは人格交換の実行場所に日本を選んだのであろう、オカルトGメンや世界GS本部がある様にザンスがある様に他国にも霊能者はいるであろうに。
 カオスもまた何者かに呼ばれて来たとは言い難いだろうか。
 そして一時であれ横島の身体に乗り移った事で碌々使えてなどいなかった霊能の開花に一役買ったのでは無かろうか……何せカオスはボケている、知った事も忘れていておかしくない。
 考えてみれば隠し事をするにこれ程都合の良い隠れ蓑はそう無いのでは無かろうか。

 だとしたらいやそうでなくとも唐巣がエミの後見であった事はほぼ間違いない。
 何故ならブラドー島での決戦に於いて唐巣は名指しでエミを呼んでいるのだ、如何に一流であろうと呪い専門との自分と全く逆方向の彼女を何故呼んだのか。
 冥子であれば師の娘であり暴走の噂はあれ強力な戦力との点は保証付。
 だがエミとは普段から付き合いがあるなどしない限り噂だけで呼んだとするには無理が有り過ぎるのだ。
 そもエミが公安から一旦は見捨てられたのであろうその際に身柄は何故に無事だったのか。
 其処に六道の力を借り彼が後見して、呪殺との手段を暴くと脅したならとの仮説は成立しないと言い得るだろうか。
 六道家が後見であったとするには夫人との面識の無さがおかしい。
 ならば、それを為したのは消去法から彼となるだろう、今の彼では想像も付かないが嘗てかなりの無茶をしていたらしいのだ、それならそしてあの六道の母であればその程度造作もない事では無かっただろうか、
 いや他に一体誰が国家権力に立ち向かえると言うのだ、それも身内のいない一介の呪殺者の為に。
 エミもまた唐巣が呼んだそれだけで他の仕事を放り出してまで海外へと応援に駆け付けたのか。
 其処にピートの誘いであるとの要因が働いたとは言えそれこそ唐巣の狙いであったとしたなら、それならピートを出しにその後に彼女と共同戦線を張る事を正当化出来ないか、いや出来たのだ。
 金穴の唐巣がヘルシング教授との縁からとは言え何故ピートを自分の下で教えていたのだろうか。
 唐巣ならば六道を頼り他の研修先を紹介する事も不可能では無かった筈なのに。
 ヘルシング教授そしてアンとは美神も知り合いである筈なのに。

 ……其処にも謎がある。美神がアンと遭っていたのは10年前、それは美智恵が病床に居たとされ始めた時。
 それを押して美智恵は教授の許に行ったのだ、その美智恵は真にその時の彼女だったのだろうか。
 またヘルシング教授も状況を作る為に一役買った可能性が高い。彼はオックスフォード大のオカルト学者。
 即ち西条もまた師や師の更に師である者達が受けたゼミに居た可能性があるのだ、其処で魔鈴と出逢った可能性もあろう。
 教授はアンの件では健康が優れず来日しなかったそうであるがそれは真にそうなのか。
 最早やらねばならない事を終えた彼は後進の修業となる機会を作ったのでは無かろうか……。

 そもそもの縁を作ったヘルシング教授は健康上の問題で教鞭を執れなくなっていたとした可能性はある。
 故にピートは唐巣を頼った。其処に何らかの意思が無かったと断言出来ようか。

 カオスを呼んだ事には問題は無い。何故なら彼は魔王と呼ばれていてもそれは技術的な力が超越のそれであったから。
 嘗ては荒らし回ったのであろうがそれは唐巣もまた似たようなものだ。
 義賊じみたと言える行動もその偉業として霊能業界には伝わっていただろうから。

 更に小竜姫いや鬼門の香港での行動、何故にエミと冥子を送ったか、其処に唐巣の知り合いという理由があったのでは無かろうか、修業させてもいない冥子を送った事には。

 唐巣は実力も人柄もそして六道との繋がりもある稀少な人材である。
 人を騙す事もそれが正しいと思えばやるだろう、除霊の為に破門を厭わなかった彼ならば。
 自分に暗示を掛けるなりして全てを覆い隠す事さえしたかも知れない。
 唐巣には強力無比な霊力こそ無いだろうがそれを補う千万の技もとい年の功また六道の知識がある。
 何らかの術を用い全て隠す事をしなかったと断言し得るだろうか。
 それを成したのが本人ではなく六道夫人であったとしたら。
 偽装の死を迎える前の美智恵乃至公彦の強力なテレパシーであったとしたなら。
 可能性は零では無いのだ。

 それら可能性は他の人物にも言い得る。例えばエミは何故碌に確認もせずタイガーを横島と同じクラスへ編入させたのだろうか、偶然だったのか、それとも……
 いやあの学校に入学させたのは何故か、勧めた者が其処に居たのではないか。

 美智恵、公彦、唐巣、そして六道夫人。
 人間だけでもこれら人物は未来をある程度知っていた可能性があるだろう。命懸けの試練である妙神山の紹介状をまだ早いとまで言った唐巣が何故すんなり書いたのだろう、
 そもそも美神の横島に対する扱いを知っている唐巣……パイパーの際に根拠がある……が何故に何も注意さえしなかったのであろう、香港で荷物持ちをさせられた際などしっかり美神に文句を言い立てているのに。
 ピートやキヌは美神の師ではない、だが彼は師だ。彼が言えばある程度は扱いも変わっていておかしくは無く良識が服を着たかの様な彼に言わない理由は……
 知っていたのか、メフィストそして美神が彼の魂を掴んでいるも同然と、有ると信じたい或る感情の裏返しと。

 ……常ならばそう考えた時点で叫んだだろうが今彼は殺し別れと自覚する失恋直後、そも女性への感情は何も浮かばないに斉しくなっている。だからこそ美神やキヌが気遣ってくれたのに慰めを求めも出来などしなかったのだ、塞ぎ込み反応もしない程では無かったが……。

 さて小竜姫である。
 彼女は横島に素質があると見抜いた。確かに手加減したとは言え彼女の剣を不意打ちのそれを避けた事は賞賛に値するだろう。
 それまでの横島を殆ど知らないが故にそれを以て素質があると見てもおかしくなく、その後の美神との夫婦漫才で更に確信したとしておかしくはない。
 だが影法師を見てどう思ったか。
 その後小竜姫の超加速にさえ追い着いて更に自身記憶に無かろうとも竜化した彼女の額へと刺さった矢はその影法師である。
 見直すには十分でもあるのだが最初の印象が良かったならばそしてその後失望に近い感情を経たのならば、一度落ちた評価はそうそう戻りはしない。
 確かにGS試験ではそこそこではあると見たのだろう。それでもトップクラスとは到底言い難い事もまた感じていた筈だ。
 香港で栄光の手を出した際に素質は思ったより有ると感じただろうがそれまでは思っていなかっただろう、いや女神の霊感は彼の素質をかなりの所まで見抜いていたのかも知れないが。
 だが何かを知っていた可能性はある、彼女は横島に好意的過ぎるのだ。
 無論人外ならば老若男女お構い無しに惹き付ける彼の性質故かも知れないが。
 彼女が知っていたならそれは神魔の最上層部が知っていた事の証明ともなるだろう。
 ならば人が挑戦した事無い師匠との修業にいきなり取り組ませた事実もそれ程に無茶とは限らない。
 そしてワルキューレ。
 彼女が派遣されたのも偶然なのか。ジークが妙神山に留学生として訪れていた際に姉である彼女が派遣とされ、故に横島は妙神山に向かう事となった。
 勿論偶然のいや霊感に因る勘が全てであった可能性も高いが、この二人は戦神である。
 戦いに於いて只単に策も無く動くだろうか。本当に小竜姫は兵法を全く知らなかったのかいや知っていただろうが使いはしなかったのだろうか。事が魔神ならば策は彼女達の実力からすれば必然であり……

 これらは仮定の話。更に知っていたとしても全容は知らなかっただろう。
 全容を知っていたなら神魔なら力尽くで別の展開となる様に対応したであろうし、唐巣神父や六道夫人も美智恵だけに全てを賭け傍観とする立場ではなくもっと積極的に関わったであろう。
 一番可能性が高い美智恵でさえ全てを知っていた訳では無いと推測出来るのだ、彼等は知っていたとして断片だけであろう。
 例えば、キーマンは横島である、と言った程度の。

 …

 まだ不可思議な事はある。小竜姫やワルキューレ達は一体何時究極の魔体の怖さを知ったのだろうか。
 逆天号の断末魔砲の威力を知らず情報も無いと言った彼女達が、何時バリアに気付いたのか。
 ヒャクメ無くして一体誰が魔体のバリアに気付けたのだろう。
 随分とおかしな話ではないか。

 神魔混成部隊は秘密兵鬼逆天号の存在すら知らなかったいや知って存在くらいでスペックなど詳細は一切知らなかったのだ。
 最も調査に適したヒャクメが最初に捕まった……その事実は小竜姫達に明確には伝わっていない、何しろ多くの神魔が倒された、壊滅したチームの生き残りからの情報を元に囚われたと推測し得たのみ……事が大打撃だったのだ、
 平安時代での活躍が裏目に出たとも言えよう。
 しかもそのヒャクメは未だ平安時代で得た情報即ち好奇心からメフィストの記憶を調べその中から魔体の存在と大凡の経緯を知って上層部に伝えたそれを、分析終了していなかったのだ。
 其処に調べたのは美神でありメフィスト本人で無い点また彼女がプロテクトしている点があったのだろう。

 ……情報収集済みだったが故に魔体が現われた際、事情をGS達に説明し得たのだ、ヒャクメは……。

 分析がバリアに迄至っていなかった彼女は月の件でも駆り出されるなど忙しく……人の世でも一つの件に専念させてもらえるとは限らない、有能な者は……余裕など無かったのだろう。

 またバリアの何を伝えようとしたのか、バリアが為に適わないと撤退させようとしたのか。
 当然その可能性はある、同期合体した状態は僅かな例外を除き人界最強だ。
 7000マイト以上とヒャクメに言わしめた美智恵であろうとベスパには及ばなかっただろう、そのベスパが圧倒される程には南極の時点で同期した美神は強かった。
 南極での同期は女性を守る為という横島が力を発揮する条件に加えて煩悩も上乗せされており、文珠から霊気が溢れ出す程の高出力での同期であった。
 理論上限界な数千倍に届いていたかも知れず、そうであるなら大凡 100マイトの二人では10万マイト級と化す、確かにベスパからは桁違いの力と映ったであろう。
 更には竜の牙とニーベルンゲンの指輪も使っており凡そ10倍の増幅率を持つそれを加味して 100万マイト程の瞬間霊圧を得ていた計算となる。
 攻撃に特化した訳では無いだろうから増幅率は同じと考えても。
 数千倍である点を考慮するなら1000万マイトに近付いていた可能性さえ、攻撃した瞬間だけであれあろう。
 そう、魔神はその程度と評したのだがそれでも身体の治癒の為に外に出せる霊圧が下がる成果を出した。
 もし後少しだけ横島の意識が保ったならば、もし後数回同じ威力の攻撃が出来ていたならば、もし……美智恵が最後の希望と考えたのには強ち無理がなかったとの帰結となろう。
 彼女は常に最善の結果へとなる様に動いていたと見えなくもない。
 勿論同期のアイディアを見抜いた時点でヒャクメも分かっていた筈だ、魔神にも対抗可能と。
 互角には至らないにせよ、人界に於いてその時点で望める最強の戦力と。
 同調が激し過ぎれば持続時間が短くなるとの致命的欠点はあったが。
 その同期を成せる存在……である事は彼女達は知らなかったかも知れないが手段は別として魔神を人間が倒した事は自明であった……を失う訳にはいかず、一時撤退させる為にこそ小竜姫達が急行したのだろう。

 ……魔体との決戦では神魔の武具を用いなかった、武具が出力に耐え切れないと判断されたのか。それもまた其処まで出力が上がると誰かが知っていた証では無かろうか……。

 ヒャクメの情報から究極の魔体はかなりの範囲で調べられていたのだろう、バリアの説明はそう考えれば付く。
 彼女自身は分析が未だ終わらないままトランクを失った事で知り得なかったのだろう。
 では何故に小竜姫達がそれを知ったのか、逆天号に拠る妙神山襲撃の際には知っていたのだろうか。
 その可能性も零では無い。ヒャクメが落とすなり強い誰かに託すなりしたトランクを同じく情報を扱えるジークが用いて分析を進め強過ぎる魔体の弱点を探し出そうとした際バリアに、防御に関して真の脅威に気付いてしまったと考えられるのだ。
 そうジークは情報士官である、更に戦闘も可能な謂わば万能タイプ。
 器用貧乏との言い方もありそうだが逆天砲魔に遭っても生き延びていた彼はその攻撃の前であろうといやそれは少々おかしい。
 そのタイミングならば美神の霊体にでも情報を伝えた筈だ、美神に後を託した小竜姫かワルキューレが。

 ならば知ったタイミングはむしろ霊的冬眠から復帰して小竜姫がその戦闘霊感で第二ラウンドの始まりを感じた直後ではないか。
 此処で可能性が二つは有る。
 一つは妨害霊波が消えた事で最高指導者達また分析していたその部下達が冥界から彼等に伝えたとのそれ。
 だがそれでは元来情報を扱うヒャクメ現場に居たヒャクメに伝えなかった疑問が残る。
 妙神山は霊的拠点、だが破壊された。
 ならば霊的に燃費が悪いであろうヒャクメが回復し得た程の霊的エネルギー濃度を誇る、日本人の叡智の結集である都庁地下、東京心霊災害管理施設に、
 大打撃を受けた逆天号行方調査にヒャクメが用いたそれ程に霊的にも情報を収集し得る施設に居た彼女に伝えない根拠は少なくないか。
 壊れた神族の拠点と健在な人間の拠点、情報専門でない神魔と情報専門の神族、何れにより可能性があるだろうか、何れかに伝えるなら現場に居るヒャクメであるべきで無理をしても霊的に祝聖された地に居る彼女へと伝えるべきだろう、トランクは無くとも施設が代わりとなっただろうから。
 もう一つは小竜姫の霊感を信じたジークがその時点から敵の最後の兵鬼であろう魔体、その情報が未だに分析終了していない事を懸念し霊的に休養を取りつつ最優先でトランクを用いて分析したとするそれ。

 他にも可能性はあるだろう、風が吹いたとのそれ即ち努力しない者には援助しないとの宇宙意思。
 死力を振り絞る者にしかソレが介入出来ないとしたなら、ならば美智恵が倒れた事さえ説明が付くのかも知れない。
 その判断基準はソレ自体の独自なそれあろう故に可能性はむしろ高いかも知れない。
 だがそれでもヒャクメとて可能な限りを尽くし平安時代のみならず現在に於いても駐留神魔の壊滅を防ぐ情報を送りまた逆天号捜索など力を尽くしている、彼女にだけ宇宙意思は援助しないのか、仮にも女神に。


「宇宙意思に嫌われた女神。すると次の反乱はヒャクメが起こすのか、んな阿保なー。」


 どうにも二番目で有りそうだ。
 そう考えればいやそも宇宙意思は個々の存在もまたソレを為す一部と美神が断言した、宇宙意思の意思は本当に神魔人妖の如きそれか、恐らくは異なるだろう。
 なれば霊感と復元力こそがソレに出来る限界ではないか。
 ヒャクメに分からなかった理由は魔体の情報をそれ以上分析する暇、情報の入ったトランクさえ無かった事に由来するのではないか。
 ならば分析出来る為にバリアの存在を知り得る小竜姫達にこそ霊感が閃いた事に疑問が無くなる。
 囚われていた事にさえ確信が無かった小竜姫やワルキューレがヒャクメの所在ばかりか状況までも正確に知ったのは、追い風からの霊感と。
 それにヒャクメは霊感に疎いのだろう、戦闘面では。キャメランの弱点も見抜けず海兵隊の真に装備など特製かも分からない変装にも気付けていない。
 戦闘など危急時に霊感が働くと言うよりむしろじっくりと調査する際に霊感が働くのではないか。
 ヒャクメは自ら戦士タイプではないと言った、それは戦闘霊感は働かないと取れないか。
 神魔を相手取る事さえ臆せず勝ちを掴む美神もギャンブル運は全く無いのだ、またヒャクメは全能では無い。
 ジークなら戦闘タイプでもある万能タイプな筈だ、視て無事を確かめ安心したと同時に小竜姫の発言からまたは美智恵からの報告からか施設の中央に赴き状況を確認する事に専念して、
 仲間達のその後をトレースしなかったとしてもおかしくないヒャクメとは異なり、小竜姫と同じ霊感が働いた可能性がある。
 無論霊感が働かずとも手持ち無沙汰となった状態で未だ分析が終了していない点など考慮してそれを進め気付いた可能性も大きい。
 霊感に根ざす予感は武神である小竜姫の研ぎ澄まされたそれと見るべきである可能性も高い、宇宙意思など働かずとも。

 さてエネルギーがぎりぎりであった神魔が一旦休憩を取ったのは東京タワー。
 偶然か、それにしては其処でベスパに遭わなければ横島達が負けていた可能性が高くないか。
 全て繋がっていると考えるに足る要素の一つな気がする。

 GS達が嘗てテレパシーでかなりの距離を経て念を届け得た事……無論人工幽霊一号と早苗が居てこそであるが……はしかしこの場合には当て嵌まらないだろう、小竜姫達にはエネルギーが不足していたのだ。
 元より人界の住人である人間とは異なり神魔は小竜姫が妙神山に括られている様に人界で制限無く力など使えるか不明なのだ。
 それをすればエネルギーが一気に無くなりそれこそ魔体戦時の様に存在を保つ事が精一杯となる可能性もある。
 故に貴重な神魔を失いたくは無い冥界がリミッターを掛けていた可能性さえあるのだ、ルシオラ達三姉妹が妨害霊波があっても問題無く動けた事は多少根拠として弱いがベスパへのパワーアップ処置はリミッターの設定をずらしたと考えられなくもない。
 怨霊道真は最初に与えた力が大きかっただけで故に一時であれ魔神をさえ止め得たと考えられる。
 そこにリミッター設定変更など無関係だろう。
 無論リミッターなどそも無い可能性もあり神魔が念波を送らなかった理由は妨害霊波の余波で出来ないでいた為とも考えられる、その方が自然かも知れない。
 いや大食らいの女神様もとい燃費の悪い調査官殿の様に衰弱してしまう以上、リミッターと言える何かはあった方がより自然だろうか。
 ルシオラ達が寿命と引き替えにパワーを上げられたと言っていた様にその元来ある潜在能力と引き出せる量そして貯めておける原動力は冥界でならともかく人界ではリミッターが必要なのではないか、容易にバランスが崩れ得るだけに。

 まだ不可思議はある。何故美神はバリアにスキがあるとしたのだろう。
 何故に皆はパピリオが来てスキを知らせた際すんなり受け入れたのだろう。
 勿論これらの答えはどのみち勝てないから可能性に賭けた、だろう。
 ベスパとパピリオ以外誰も知らないでいただろうから。だが本当にそれだけだったのか。
 何者かがその様な考えを植え付けた……或いは霊感が閃いた……のでは無かろうか。

 そう言えば嘗てのスライムの件も謎である、何故スライムが喋ったのか。
 メットマンの動きはどうか、影法師も喋った。他にもあるかも知れないいやあるのだ。
 彼のそのまま口から出ている妄想を聞く者が居たならそして過去を知っていたなら、恐竜の幽霊と横島の合体魔獣“P助平”など考えもしただろう。
 他にもコンプレックスも彼と同調した。
 人外ならば老若男女問わず惹き付ける。

 勘九郎と直接一対一で戦わなくて良かったね、横島クン。君は不幸じゃないぞー、閑話休題。

 横島は物の怪との親和性が強く人外や人外じみた者達を惹き出す何かがあるのではないのか。
 だからルシオラは……いや考えたくない、問題は謎と対策だ。

 記録に残っていない部分に多くの謎が存在する。
 一番簡単に考えるなら全ては宇宙意思のままに進んだあるべくしてあった結果とする事。
 それでは偶然が重ね重なったと思える事件解決も出会いも、そして別れも、全て運命との事となる。
 魔神が反乱するに至った動機ですら……

 待てそう言えばどう逆天号に攻撃出来たのだろう、美智恵は。
 時間移動能力を用いた事に疑いの余地は無い、だがその使い方が問題だ。
 逆天号の攻撃は二回、幻の逆天号からは三回。数が合わないが仮説ならある。

・同一時刻の逆天号を幾度も喚んだ可能性。
 美智恵は自在に時間の流れを動き得るとなる。
 其処まで強い能力なのか、反則だろう。文珠では無いのだから。それに同一ではあり得ない。
・同一時刻で無い“今”とは異なる時間軸の逆天号を喚んだ可能性。
 彼女は未来も過去にも時間移動可能と帰結する。
 何故なら最初は幻からの攻撃、故に召還したのは“今から未来”の逆天号。
 回避出来たが応戦一撃目も回避された、恐らく召還を解除したから、電力の面でも。
 幻からの二撃目、応戦前に逆天号は“潜航装置と羽を損傷”して応戦出来なかった。
 だがルシオラが横島を伴い修理していた運命の時、三撃目を放った幻の“羽は損傷していなかった”。
 詰まりその幻は“今から過去”の時間軸から喚ばれたのだ。

 一番目の説は二番目の説に拠って打ち消された。そして幻は未来だけで無く過去からも召還出来たとなる。
 ならば美智恵が未来に跳ぶだけでなく過去にも跳べる証拠と成り得る。
 実体験や情報収集が未来だけでなく過去でも可能なら、より周囲を説得しやすいだろう、己自身をも。

 美神もまた過去に行って戻るだけで無く未来にも跳び得る可能性が示されているのだ、ヒャクメに拠って。
 それは魔神をあの時点から未来に跳ばした事。
 仮に現在が基点となるのであれ特定の過去に行き来との限定は当て嵌まらない、むしろ基点は能力使用のその時刻で過去にも未来にも跳び得るとするべきであろう、横島の死の際を考えても。
 カオスやヒャクメが送ったからこそ元の時間へと戻り得ただけ、時間移動能力は経験など無ければ何時に跳ぶかも分からない、エネルギー源が雷である点含め危険な能力と考えるべきではないか。
 それは時間の流れを自在に動き得る事と同意ではないかとの疑問に、答えは有る。
 それこそ逆天号の幻に横島が気付いたそれ、横島がルシオラを助けた直後に放たれた逆天号からの二撃目、その際に攻撃を受けて幻は“羽を損傷した”。
 それはまず間違いなく潜航装置を破壊された時刻の逆天号を召還したからだろう。
 だがその必要など何処にあるのか、任意の時刻から喚べずある程度の限定があるからこそではないか。
 然も無くばその事実が美智恵は知っており誘導していた説の強い証明となりかねないのだから。
 一方で数が合わない事実こそ同一時刻の逆天号を少なくとも一回は喚んだ証明ともなる。
 ならば二番目の説を拡張して限界はあるが同一時刻のそれを喚ぶ事も可能となりはしないか。
 それが更に幻が羽を損傷した事に疑いを招きはするが経験則で知った制限があり仕方が無かった可能性も無くはないだろう、時間移動能力など美神家以外に殆ど無いのだから、無事で居る存在は。
 大抵は時間の狭間にでも落ちて自滅するのだろう、多くの念力発火能力者の様に。
 ひのめがそれを持つ事で美神家が霊能者の家系であると同時に超能力者でもある証明にもなりはしないか。
 ともあれ幾許かを知っていないとする根拠は薄くなる一方だが。
 いや攻撃回数の矛盾さえ解があった、美神家の時間移動ならではのそれが。そう空間移動も伴うのだ。
 故に妨害霊波が既に有った範囲の過去である妙神山乃至は他の霊的拠点を攻撃した際の逆天号を召還する事で回数の矛盾が消える。
 しかしそれは二番目の説を満たしその拡大解釈を不要即ち同一時刻からは重ね重ねて喚ぶ事が出来ないと示しても拠りに拠ってわざわざ逆天号側正確には横島にヒントを与えるが如く被弾したそれを喚んだ理由にはならない。
 依然美智恵に作意があった可能性は高いままなのだ。
 尚其処まで過去の存在を召還し得るのか、それは可能だろう。
 何故なら妨害霊波を逆手に取ったとの事は妨害霊波に拠って時間が特定の狭い範囲即ち一年……実際は美智恵が後数ヶ月と言った為に10ヶ月未満であり更に有利……と区切られたからこそ、
 閉じた時間の中に居る存在を元来本人と携帯物しか移動させは出来ない筈のしかし永遠との永い時間の内に移動させる能力で、竜の牙と魔法陣の力も借り他の存在即ち逆天号を召還し得たと言い得るから。
 合間に存在する時間の流れの為に霊力から無理との可能性もあるがその場合は二番目の説の拡大解釈へと戻り美智恵が怪しい事に変わりは無い。
 そして何故自身では無く時間軸のずれた他のモノを召還するなど出来たのか、それは美智恵の能力が全てでは無いだろう、竜の牙あってこそと思われる。
 何れにしても怪し過ぎるのだ、あの戦いは。
 そも他に時間を操るなどそれこそヨーロッパの魔王カオスの時空内服消滅液くらい、如何にそれが困難な事か示していると言える。それ程の能力を敵に解を示すも同然の召還に用いるのか……

 勝つ為には手段を選ばないとの彼女の台詞、それはあの戦闘ではなく知っていた事を隠した件ではないか。

 待てその前に核ミサイルさえおかしくないか。
 それこそ魔神さえ最初から事件がこの終わり方をする事を半ば知っていたとの証拠とならないか。
 あれがあったからこそ人類は団結せざるを得なくなった。
 本来なら軋轢があるだろう各国各組織が団結を決意したのは、あの魔神の行動故だ。
 そして一度は魔神を退けたそれも核あっての事。
 出し抜けていると思っていた魔神さえより上位の者達の掌の上で踊らされていたのでは無かろうか。
 仮に美智恵が全て企んだとしたなら幾らなんでもこれは無理が無いか。
 故に最高指導者達また宇宙意思が怪しいと言えよう。
 核ミサイルの件は出来過ぎにも程があるのだから。

 尤も知っていようとも魔神からすれば選択肢など無かったのかも知れない。
 自身動けない状態だからこそ美神を呼んだとの事実があるのだから。

 …

 ……

 妄想に耽るのも時には良いだろう、だが何事もそうある様に何時か終わりの時は来る。

 憶測が何の役に立つのか、横島。
 確信出来る事は一つ、それは宇宙意思が何を考えているか我等にはついぞ知り得ないとの真理である。

 GS達の物語全体に指導者達の“下意識”が働いていたかどうか、真相は全く以て不明なのだ。
 最高指導者達の手に一つずつあった文珠に“G”,“J”と籠められていたかも知れぬ事も。


(完)



“G”,“J”(GJ)は想像を広げられる原作に対してです。
やっぱ、祟られるかも。
日輪の輝きを持って、カムヘア光る神父さん!(どうしようもなく終わる)


BACK/INDEX/NEXT

inserted by FC2 system