お正月2007

作:Nar9912




 お正月―

「どうして。俺はヤツに勝てないんだ……」

 伊達雪乃丞は、考えていた。親友と書いて強敵と読む、少しばかり普通とは異なる彼の実は幼い頃からの友人たる、横島忠夫との霊能バトルについてである。
 考えに考えるあまり、山に籠もったまま季節が一つ過ぎ去った事をうっかり失念しそうになった程に考えていたのだ。
 その彼の、専ら考えるより行動を好む彼の珍事とも言える思惟が打ち砕かれる時。
 其れが起きたなら互角以上の戦いが出来る何かに繋がる、そんな霊感が浮かんだからこその山籠もりであった。

 だが其処は彼の事。
 否彼でなくとも季節が一つ過ぎ去る程の時間を考えるだけに費やしたなら、流石に集中力も何も失われようもので。
 そろそろその辺の壊れ物……木々や岩、不運な小動物や、時に魔熊トリアタマなどとの大物も?……が危険な領域に。

 然れどその危険は現実しなかった。来訪者が彼に考える事を止めさせたからである。
 何時の間にやら纏っていた魔裝術の装甲が小気味良い程の甲高い打撃音を響かせて。

「雪乃丞。アナタは一体、何をしているのですか?」

 誕生日を忘れられた事に思わず軽装のままで恋人……であって欲しい……が籠もっている山まで一気に駆け上った。
 やはり常識からは少々外れた所に居るらしい弓かおりその人の、奥義と言う割りには毎回使われているような気さえする水晶観音に拠る複数発の同時パンチが響かせた其の音が。
 其の音否攻撃されたと言う事実が彼を現実に呼び戻したのだったが。

 が、恋人の美声に拠るものとして考えてあげよう。少なくとも弓かおりはそう思いたかっただろうから。
 野郎はこの際どうでも良いが、(カタチだけでも)見目麗しい女性が相手なら話は別なのだから。

 現実に戻った彼は遂に閃いた。そう、彼の霊感は正しかったのである。答えは最初から其処に在ったのだ。

「弓……。そうか、お前だ。お前となら俺は負けない!」

 唐突に飛び出た台詞からか、徐に……誤用の方でも元来の意味でもこの場合オッケーである……燃え上がる二人。
 いや片や恋にもう片やはバトルにである辺り、少しばかり否相当にすれ違っていたりもするのだが。
 だが実際には愛がなければダメな筈だからコレで良いのだ、多分。

 その後下山して何が行われたのかは此処では伏せておこう。
 只、雪乃丞は強くなった。それだけが真実である。







 ……と、言う訳で処変わってここオカルトGメン日本支部前。美神令子除霊事務所前とも言う其処で。
 この寒空に相対する四人が居た。
 懐具合と言う殺し文句がやる気に欠けるペアを駆り出して。目論見通りに見物人が集まって。
 だがしかし今回それを商売としたのはドクターカオスではなく、美神美智恵だったりする。
 美神家は家系家計もまた異常であって、家族が増えたこの冬は特に寒かったりしたのだ。
 お金は魔物である。詰まりはそう言う訳でこのバトル否見せ物もとい催しが開催される事となったのだ。







 自信に充ち満ちた雪乃丞、そして弓。雪乃丞の前口上も威勢良く、

「おめーが強いのは、女の為だからだ。だから、コレで、俺はお前と互角以上!!」

 傍らで否周囲が真っ赤になっていたりするのだがその台詞を吐いた当人にはその辺りの意識は殆ど無い。
 嗚呼全てはアイ故に。
 それはともあれ、叫びと共に弓かおりの手をしっかりと握り締めて集中する雪乃丞。
 二人の姿が寿限無もとい後光に包まれ、其処に顕れた未だ嘗て無かった其の姿。

 否実は何処かの誰かさん達の其れに酷似していなくもなく。
 其れをやるならいっそ二人で指輪を嵌めてウルホラタッーチ!とか叫ぶくらいの芸人魂を云々など。
 関西人としての何かを揺さぶられなくもなかった横島クンではあったが。
 それでもその有様には黙りを決め込んでスルーしたかったのだった。

 周囲の反応をどう受け取ったのか、勝ち誇る雪乃丞が叫んで。

「同期合体に対抗できるワザ、それが水晶観音と魔裝術の融合………… 愛染坊主 !!!!」

 胸元のどでかい「愛」文字がチャームポイントな紫紺に染め上げられた着物を着た融合体が、其処に現界した。
 恐ろしい程のテンションは確かに同期合体と同等以上の力を放ってはいた。尤もながらに周囲の全てが置き去りだが。
 その雰囲気には、さすがの覗き神さまもコメントを控えたとか何とか。

 余談ではあるがその愛文字には特定の色は無かった。愛には色々な色があるからである、多分。逃避終了。

 そして。
 ……スベテが制止した其処には徒、輝かしく寒風が吹き荒ぶのみであった、とか何とか。




 ばからかにもとい高らかに嗤う愛染明王の似姿を其処に残し、おこたに戻って未完を食べるいつもの面子であった。


(完)



【後書き?】
 ネタの賞味期限がとっくに切れていたり色々台無しですが、クレームは受付けません?
 て言うか覚えてもいないのに使うかなぁ。
 …と言うわけで元ネタ、アイゼンボーグで合ってますよね?(”爆”で吹っ飛べ>私)
 まぁ、お正月ですから、細かくない事も抜きにして、お気楽極楽でいきませう?

【メイキング?】
 何処かのご本尊が愛染明王に違いないなんてセルフ刷り込みしちゃったのが始まりで。
 やはりロン毛は最早ライバルではないだろうと勝手考えから。
 新ライバルと言うか元からの彼をもっと強化したい、とか何とか。
 実はこのネタで「GSユー&ユー」とか言いながら長編を書きたいと思ったりしなくもなく。
 この場合のSはより戦闘的にストライカーとか水晶観音は元が宝珠だから云々とか考えがなくもないのですが…
 でも無理無駄無謀です、私の現実では。よろしければ何方か書いて下さい<他力本願(泣)


カウンタ


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