「いってきま〜す」

「ヨコシマ、気をつけて…」

 ルシオラがそう言うと横島は玄関にかけていた手を離してルシオラにキスをした。





 ゴーストスイーパー美神 GOS

作:ガイギス

第3話






「…今日は横島君遅いわね?」

「そうですね〜いつもならとっくに来ているんですが…」

 ここは美神除霊事務所この日は休日の為朝から来るはずの横島を女二人は待っていたが未だに来ない。
 といっても未だ佑輔の影響か仕事の依頼はこれっぽっちもないわけだが…

「おキヌちゃん、仕事の依頼今日も無し?」

「…はい」

「…は〜…ああもうなんで無いのよ〜」

「そうなのよね〜台風一過的なものにしてはこれは長いわ」

 美神がそう言うと美知恵がそう言いながら部屋に入ってきた。

「ママ!」

「まさかまた違う魔族が動き出してる…なんて事はないわよね?」

「…あぁぁぁ!」

「美神さんしっかり!」

 美神はそう言うと頭を抱えて崩れ落ちた。

「何? 令子心当たりでもあるの?」

「ううん、またあんなふうに大規模なただ働きすると思うと…」

「…あなたって子は」

 そんな美神の発言に美知恵は頭を抱えた。
 と丁度その時、

「うっ! …」

 美知恵はがくっとお腹を抱えてうずくまった。

「ちょ、ママどうしたの!」

「大丈夫よ…陣痛みたい…」

「「え?」」

 美神とおキヌはそれを聞いて一瞬停止後、

「た、大変、救急車〜〜!!!」

「もしもし! 米国国防総省!?」

 混乱した。

「あ、ちょっと、二人とも落ち着きなさい! 陣痛が始まってもすぐには生まれないのよ!」

 美知恵はそんな二人をそう言ってなだめさせた。
 と、そこへ

「(う〜む、調子に乗って第2ラウンドまで引きずっちゃったから遅くなってしまった…けどやわらかかったな〜)
 すみませ〜ん、遅くなりま…どうしたんすか、隊長!」

 横島が現れた。

「あ、横島さん!」

「あ、丁度良かった! 横島君ママはこぶの手伝って!」

「え? え?」

「早く!」

「は、はい!」

 その為事態が解からず言われるがまま美知恵を運んだ。
 なお彼女が陣痛だったと知ったのは病院に着いた時であった。




「女の子か〜おめでとうございます、先生!」

「ありがとう西條クン! 主人と相談して名前ももう決めてあるの」

 ここは白井総合病院、その病室の一室に美知恵と西條、それと…

「『ひのめ』、美神ひのめ! どう思う、令子?」

 ぐったりと部屋の隅に座り込んでいる美神とおキヌ、横島がいた。

「…いーんじゃない?」

「お産って時間が掛かるんですねぇ…」

「待ってるほうが緊張でヘトヘト…ルシオラの時もこうなのかな?」

「「「「え!?」」」」

「え? あ、なんでもないっす!」

 横島はそう言うとひのめが泣き出した。

「ほわあッ! ほわあッ! ほわあッ!」

「…そろそろオッパイの時間なのよ」

「あ、失礼、外へ出ます!」

「そうっすね(助かった…)」

 横島はほっとため息をつきながら病室を後にした。
 その時横島は西條に病院の屋上に呼び出された。

「なんだよ? 行き成り呼び出して」

「実はさっきの君の発言で気になった事があってね」

「え?」

 横島は一歩後ろへ下がった。
 西條はそんな横島にずいと近づいた。

「まさか君はもう令子君に手を出しているんじゃないだろうね?」

「え? …なんだそっちか〜」

 横島はそう言うとほっと胸をなでおろした。

「という事は違うのかい?」

「俺が美神さんにんな子供が出来るようなことさせてもらえると思うか?」

「いや、君だったら文殊を使って色々と…」

「俺を見くびるな! んなことするわきゃないだろうが!」

「そ、そうか、それならいいんだが…」

 西條は引きながらそう言った。

「そ、それじゃあほかの人とそういう事をしたのかい?」

「そ、そういう事って…」

 横島はそう言われると朝の出発間際の事を思い出して顔を紅くした。

「し、したのかい! 一体誰と!」

「え、え〜と…」

 横島はそういいながら後ろ手に文殊を作りながら後ろに下がった。

「さ、さいなら!」

 横島はそう言うと「移」「転」の文殊で転送した。

「ち、もうちょっとだったのに!」

「令子君! おキヌちゃんも」

「そうですよ! 横島さんの様子からして絶対何かありますって!」

「ううう、しかしだね文殊を使われたらどうしようも…」

「おキヌちゃん! 横島君のマンションに行くわよ!」

「はい!」

 二人は土煙を上げながらその場を後にしボツンと西條だけが残った。

「あははは…横島君死ぬんじゃないぞ…いや、成仏してくれ」




「あら? お帰りなさいヨコシマ」

「ただいま」

「とりあえず靴脱いでね?」

 横島の移転先はルシオラが見ていてテレビの前であった。
 とりあえずルシオラは横島を退かしてテレビの続きを見ていた。
 内容は料理番組だった。

「…ああなるとちょっとやそっとじゃ離れないからな」

 横島はそう言うと靴を脱いで玄関に向かった。
 横島が靴を置くと丁度チャイムが鳴った。

「は〜い」

「こんにちわ〜」

「遊びにきたで〜」

 花戸小鳩と福の神がその真新しいマンションの扉を開けた。
 佑輔が手紙で書いていた事は早々に実践されその際小鳩とルシオラは顔をあわせている。

「ルシオラさんは?」

「あ、いま…」

「いらっしゃい」

「あれ? テレビは?」

「さっき終わったわ、それよりも」

「そうだな、小鳩ちゃん入りなよ」

「お邪魔します」

「邪魔するで〜」

 横島達は小鳩と福の神をマンションの中に入れた。

「そういえば今日はどうしたの?」

「実はルシオラさんに頼まれて…」

「わいはその付き添いや」

「ルシオラに?」

「ううう…ちょっと料理を教えてほしいなって…テレビで見ても上手く行かない時とかもあるし…」

 ルシオラは少しずつ人が食べるような物を食べられるようにはなっているが、
 しかしまだ甘党なため上手く作ろうとすると自然と料理が甘くなってしまう。
 普段は横島がいない時間を見計らって小鳩か小鳩の母に教えてもらったりしている。
 しかし今日は横島が予想以上に早く帰ってきた為小鳩に料理を教えてもらっている事がばれてしまった。

「だからすぐに料理が甘くなくなったわけか」

「ごめんね、まだどうも味付けが解からないの…」

 ルシオラはそう言うと下を見た。
 横島はそんなルシオラを抱きしめるとゆっくりと諭すように言った。

「仕方ないよ、ルシオラは今までは水と砂糖しか食べなかったんだから」

「くす、そうしていると本当に夫婦みたいですね」

 横島とルシオラの一連の行動を見て小鳩はそう言って笑った。
 それを訊いて横島とルシオラは「え?」と小鳩を見て今の二人の状況を思い出して二人とも離れて紅くなった。

「そ、それじゃあ小鳩さん、お願いします。ヨコシマはそこで待っててね?」

「解かった、小鳩ちゃんよろしく」

「ええ…」

 小鳩は頷いてルシオラの後に続いてキッチンへと向かった。

「なあ貧乏神、小鳩ちゃん家はちゃんと裕福になってるのか?」

「今のわいは福の神や…勿論…と言いたいがまだまだやな。
 わいはまだ修行中やで?」

「やっぱ?」

「なんや? やっぱって…」

「だって小鳩ちゃんまだまだ苦労してそうだもん」

「まあな、そやけど少しずつ、少しずつやけど上向きやで?
 その証拠にこんな立派な家を今までとおんなじ価格っちゅう訳やし」

「…まあ確かに」

 二人はそう言うとチャイムが鳴った。

「今日は客人が多いな」

 横島はそう言うとどっこいしょと立ち上がった。
 チャイムに気付いた小鳩は横島と福の神が気付いてないと思い自分が出る事にした。

「あ、ルシオラさん。私でます」

「え? 誰か来たの?」

「みたいです」

「それじゃおねがい」

「はい」

 小鳩はそう言うと玄関に向かったがそこには横島が先にいて玄関のドアを開けようとしていた時だった。

「ハ〜イ…あ、美神さん、おキヌちゃんも…どうしたんすか?」

「あ、お二人ともお久しぶりです」

「「…」」

「あれ? 二人とも同士たんすか?」

「横島君、ちょっと…」

「は、はあ〜…」

「小鳩さんはここで待っていてくださいね」

「え? は、はい!?」

 その後横島は美神とおキヌにより声も出せないまま袋叩きにされた。
 小鳩はおキヌに言われた時に怯えた為逆らえず三人を追いかける事は出来なかった。
 その時キッチンで料理をしていたはずのルシオラが小鳩の脇を潜り抜け飛び出した…が、現場に到着した時にはもう横島はぼろきれと化していた。

「ヨコシマ! 大丈夫!?」

『ルシオラ、すま…な…い』

 横島はそう念話で話すと意識を手放した。

「ヨコシマ〜〜!!!」

 ととりあえずその場のノリで叫んだ後、とりあえず心臓が動いているかを確認した。
 その様子を呆然と美神とおキヌは見ていた。




 ルシオラが横島を丁寧に部屋に運び介抱すると寝室から出てテーブルを挟んで反対側にいる美神とおキヌを見た。
 二人は未だに信じられないという顔でルシオラを見ていた。

「で? あんた言ったいどっからわいてきたの?」

「ちょ、美神さん、そんな虫みたいに言わなくても…」

「だって元々虫でしょ?」

「う…まあ確かに私は蛍の化身ですけど…」

 ルシオラはそう言ってグサッと何かが刺さったがそれを何とかかき消して今までの経緯を簡単に話した。

「ふ〜ん、なんか胡散臭いな〜と思ってたらそんなことが」

「胡散臭いって思ってたんですか? じゃあなんであんな依頼引き受けたんです?」

 美神は納得したという表情で言いそんな美神をおキヌは少し責めるように見た。

「いや〜だってあんな大金つまれたらさ〜もうここはいっそ金に目がくらむっきゃないというか…」

「…はあ〜」

 美神にそう言われるとおキヌは何も言えなくなった。

「あ、夕ご飯一緒に食べます?
 横島さんはまだ復活してませんしお母さんももうすぐこっちに来ますから」

「え? う〜ん、なんか悪いわね」

「でも折角ですし…ご馳走になります」

 小鳩の提案に美神達は頷いた。
 なおこれはルシオラと小鳩の共同料理と解かっている為横島が食べる前に食べきってやろうという魂胆だったりする。
 まあもう一度作り直せば良いだけなのだが、ルシオラの復活した事による一種の混乱でそこまで頭が回らない両者だった。
 なお横島はストックしてあった双極文殊をルシオラが使い復活していたのだが、ルシオラとの念話した結果美神達が帰るまで気絶したふりをしていた。

「…ご馳走様、おいしかったわ」

「「ありがとうございます」」

「二人とも本当腕をあげたわね」

「お母さん」

「色々教えていただきありがとうございます」

「それにしても驚いたわね、まさかあんたが復活して横島君と暮らしているなんて」

「ええ…まあ…」

「それに行き成りこんな真新しい高性能マンションに住んじゃって」

「それはやっぱワイの影響やろな!」

 福の神はそう言うとえへんと胸を張った。

「あ、あの…」

「どうしたんですか? おキヌさん?」

 小鳩がそう言うとおキヌが顔を真っ赤にしながら、

「そのルシオラさん…あの、横島さんと…えと…こ、こど…」

 と言い掛けたので、

「おキヌちゃんストーープ!」

「え? …あ、はい」

 美神はそう言うとおキヌにだけ解かるように小鳩を指差した。

「美神さん、どうしたんですか?」

「な、なんでもないわ」

「そ、そうです! 何でもありません!」

「「?」」

 小鳩とルシオラは首をかしげた。

「そ、それじゃあ私達はこれで…」

「そ、そうですね、ご馳走様でした」

 美神がそう言うとおキヌも賛同してそそくさと横島宅から出て行った。

「…何しに来たのかしら?」

「…さあ?」

 ルシオラと小鳩は首をかしげた。

「まあワイには解かったでぇ、あのねえちゃ…うぐ」

「さ、それじゃ小鳩。私達もそろそろ…」

 福の神がなにやら言おうとした時に小鳩のお母さんに口を押さえられ、そのまま3人は横島の部屋を出て行った。

「またおねがいしますね」

「ええ、喜んで」

 ルシオラはそう言うと玄関まで3人を送り出した。

「…さ〜てと、ヨコシマの為にも…キャ!」

「ルシオラ〜!!」

 ルシオラがキッチンに向かうと後ろから横島がダイブしてルシオラに抱きついた。

「ど、どうしたの?」

「いや、折角二人っきりになった事だし…とりあえず抱きつこうかと」

「とりあえずって…もう」

「ルシオラ…」

「行き成りだなんてびっくりするじゃない…」

 ルシオラはそういいながらも横島のなすがままになっていた。
 横島は一度強く抱きしめるとルシオラの右頬にキスをした。
 そしてそのまま横島はソファーにルシオラを抱き閉めたままソファーに座った。
 ……………なお横島は夕食と朝食を一緒に取った事を追記しておく。




「きゃ〜〜〜〜かわい〜〜〜!!」

 ここは美神事務所、今日はルシオラがひのめを見たいといったので普段の3人にひのめ、ルシオラがいる。
 ルシオラはひのめを抱きしめるとそう言った。

「どれどれ…へ〜可愛くなりましたね〜〜〜〜!! 一ヶ月もすると顔が変わるもんですね〜」

「えへヘーーーー♪ 私はしょっちゅう会いに行ってますけどね…!」

 おキヌがそう言うとひのめがぐずりだした。

「きゃ!」

「おっ…!」

「ほわあ、ほわ!!」

「どれ、貸してみ! …はは〜んさてはオシメだね?」

 美神はそう言うとルシオラからひのめを受け取るとてきぱきとオシメを交換した。

「て、手早い!」

「すごい…あ、あの…」

「なによ?」

「あの、私にも後で遣り方教えてもらえませんか? その…ヨコシマとの将来の為にも…」

 ルシオラはそう顔を紅くしながら言った。
 これには横島やおキヌも顔を紅くした。

「べ、別に良いわよ?」

 美神はちょっと無理しながらも答えた。

「それにしても何か慣れた感じがありましたね?」

 横島は変なふうに話が進む前に話題を変えた。

「まあね、仕事はヒマだしさ、ママと交替で世話してるうちに、できるよーになっちゃったのよ」

 美神はそう言うとひのめを抱き上げた。

「なんで私が…!! そう思うと時々泣けてくるけど……ま、かわいーからしゃーないか」

『グチもなんだかヤンママっぽいな』

『ヤンママ?』

『美神さんぐらいの年のお母さんってこと』

『そうなの?』

『まあ詳しくはそれにも部類があるんだけど…それは後でな』

『後で、ね』

 美神の言葉を聞いて横島とルシオラは念話でそう話した。

「で、今日は隊長は?」

「ひのめを私に預けてお出かけよ。パパが帰国するんで買い物だってさ」

「…あら? 美神さん? オムツもうないですよ?」

「え? …あ、ほんとだ」

 ルシオラが言うとおりオムツの袋は外からは立っているが中は空っぽだった。

「ちょっとまずったわね、買いに行くしかないか…」

「あ、なら私が買いに行っても良いですか?」

 ルシオラの問いに美神とおキヌはびっくりした。

「え? いいの?」

「はい、それにほら」

 ルシオラはそう言うと袋を持ち上げた。

「ここにオムツの遣り方が書いてありますから読みながら行きます」

「悪いわね、確かそのオムツはデパートで売ってる筈だから…」

「私も一緒に行きましょうか?」

 おキヌがそう言うとルシオラは首を横に振った。

「この前ヨコシマと一緒に出かけたから大丈夫、それじゃ行ってきます」

「気をつけろよ」

「大丈夫よ、ありがと」

 なにやら横島とルシオラの周りだけいい雰囲気となって美神とおキヌはむくれた。
 ルシオラが出てしばらくはなんと見えない沈黙がその場を支配した。
 その沈黙をひのめが破った。

「うぐっ…ふぎっ…ほああっ!!」

「うわ…こ、今度はなんスか?」

「ふぎぃ、ほげぁ!!」

「だーいじょぶだって、多分ミルクよ」

 美神はそう言うと手際よくミルクを用意した。

「変ね、飲まない…? げっぷでもなさそうだし」

「ほああっ、ほんああ、ほああ!」

「ママがいないのに気づいちゃったんじゃ…」

「ほああッ!! ほああッ!! ほああああッ!!」

「ど、どーしたのっ!? ホラホラッ令子おねーちゃんよっ!?」

 美神はそう言うとぶんぶんとひのめを振り回した。

「やっぱキャリアが浅いなー、いきなりもうパニックだもん」

「…!! このコ…熱いわ!?」

 美神は押す言うと横島にひのめを預け、

「かっ…家庭の医学書!! おキヌちゃんは体温計を!!」

「ほ、本当だ! ものすごく熱くなって…」

「ほああああッ、ほああッ!!」

「る…ぎゃああああ!!」

 いきなり横島の上半身が爆発した。

「な、ひのめ!!」

「ほわああッ!! ほんわあッ!!」

 しかしその時横島はひのめをひじを伸ばして抱えていた為、爆発がひのめまでこなかった。

「よかった…!! ちょっと横島クン!!? いったい…うわッ!?」

「な…何事ですか?」

「あああああッ!!」

 美神がひのめを抱き上げると炎が美神をかすめ机に燃え移った。

「!! こっ…これは…!?」

 美神はひのめの額に指を当てた。

「霊波だわ…!! それも強力だわ!! 今の…このコがやったわけ!!
 た…たいへん…!! このコは…」

「な、何がどうしたってゆーんです!?」

「このコ…念力発火能力者(パイロキネシスト)だわッ…!!」

 美神は驚いたようにそう言った。
 その直後…

「ほあああああ〜〜〜!!!」

 ひのめが盛大に泣いた。




「ふぎっ…ぎ…!! ひぐっ!」

 ひのめはようやく泣き止み横島が焼かれながらも何とか設置した天井のがらがらを見た。

「…少し気がまぎれたみたいね。なんとか泣きやみそうよ」

「な…なんです、その…パイロなんとかって!?」

「パイロキネシスト、文字通り精神の力で火を起こす能力よ!
 自然の燃焼とは違うから、どんなものでも燃やせるし、消火も難しいわ。
 それに普通の念力と違って、火そのもののエネルギーが加わるからコントロールがとても難しい能力なの。
 [人体発火現象]ってきいたことない?
 あれはパイロキネシスが暴走して自分自身を燃やしちゃった事件なのよ」

「コ…コントロールっていっても、ひのめちゃんはまだ赤ちゃんですよ!?」

「ええ…! オムツも取れない赤ん坊にはそんなしつけは不可能よ!
 今すぐ封印しなくちゃ……!」

「どうやって!?」

「念力封じのお札を使うの! え〜と、あれは確か、机の引き出しに」

 美神はそう言うと机のほうを見た…がそこには黒い燃えカスだけがあった。

「…」

「てことは?」

「今度ぐずりだしたらアウトよっ!! 急いでママを!!」

 美神はそう言うと携帯電話を取り出しダイヤルを押したが…

「おかけになった電話は電源が切れているか電波の届かないところに…」

「〜〜!! おっ、おキヌちゃんっ!! 大至急ママを探してきてっ!!」

「は…はい!!」

 おキヌはそう言うと幽体離脱した。

「ふ…ふに…」

「「!!」」

 ひのめがぐずりだすと二人はびくっと震えた。

「お、俺もルシオラと隊長探しに行きます!」」

「逃げるな〜!!!!」

 美神がそう叫んで横島を捕まえると…

「ほああッ、ほあッ!!」

 その声に驚いてひのめが泣きだした。

「みっ、美神さんが大声出すからっ!!」

「あんたのせいでしょーがっ!!」

 二人がそう言い争いしている間も部屋は爆発していた。




「やれやれ…これで一安心」

 横島はぬいぐるみから這い出ながらそう言った。
 ひのめが泣き始めてから横島と美神は定番のいないいないバーや変な顔、高い高いなどをしたが通用せず、美神から「インパクト」を求められた為文殊を使って幼児番組のきぐるみに似ている物を作り出した。
 なおこのきぐるみは3つ目で最初の一つ目はひのめに燃やされ、二つ目は不評だった。

「私のオフィスが〜〜〜〜! 火災保険きくかしらね」

「建物に引火しなくてよかったじゃないですか…!」

「ここは耐火・耐震・耐霊建築よ! よほどの事がない限り…」

 美神がそう言いかけると建物の壁の一部が光りだすとそこから念波が暴れだした。

「うわッ…!」

「な、なんだーっ!?」

「まずい!! 横島クン、防御結界を……!!」

 念波はそのまま部屋中を跳ねまわった。

「な、なんですかこれはっ!?」

「ひのめが放出した念波が強すぎて、結界が吸収しきれなくなったのよ!
 逆流して燃やすものを探してる!!
 まだ生後三か月なのに! なんてパワーなの…!?」

「か、感心している場合じゃないっすよ! どうするんすか!?
 建物が変なきしみ方始めてます!!」

「やば…!! 結界ごと崩壊しかかってる!? 念波が外へもれたら大変よ!!」

「大変ってどのくらいっすか!?」

「四方にとび散れば、念波は街中に火をつけるわ! あたりは火の海になる。
 さらに上昇気流で竜巻が起こり…熱風がすさまじい勢いで何もかも焼き尽くしながら吹き飛ばすのよ!!」

「この世の地獄じゃないですかああッ!!」

 横島はそう言うと頭を抱えて泣き叫んだ。
 美神はぎゅっとひのめを抱きしめた。

「ひのめ…大丈夫よ…おねえちゃんが絶対守ってあげる! どんなことをしてもね…!
 私は消防士じゃないけど、念波なら扱い方はわかってる!
 問題は念波が建物を壊す前にどうやって無力化するか…」

 美神はそう言うと色々と考えをめぐらしたが…

「火はイヤー!! 地獄キライー!!」

「うるさいわねっ!!」

 横島の叫びにより思考は邪魔された。

「は! そういえばルシオラは!」

 美神に言われとりあえず今の現状をルシオラに報告すべく念話でルシオラを呼んだ。

『ルシオラー!!』

『ヨコシマ!? どうしたの?』

『実は…』

「霊波結界一部解除!!」

 横島がルシオラに説明しようとした矢先美神が動いた。
 念波は結界をすり抜け天井を突き抜けた。

「な、何をする気ですか!?」

「念波を屋根裏に閉じこめるのよ!」

「屋根裏が火事になるだけで状況は変わらんじゃないですかっ!!
 ガラクタが燃えて、その後残った念波が建物の結界を破壊しますよ!?」

「いいえ! ここと一つ条件が違うわ。あそこは今密閉空間なのよ!」

 美神はそう言ったが横島がつまりそれがどうしたんだと首をひねった。

『ヨコシマ! どうしたの!?』

『え? あ、悪い。実は…』

 横島は美神の指示で屋根裏部屋に通じる扉のほうへ行きながら今までの経緯をルシオラに説明した。

『そう…美神さんはどうやって治めるんだろう?』

『俺にもわからん』

『兎に角気をつけてね!? 私もすぐにそっちに行くから!』

『わかってる』

「横島クン! どうしたの!?」

 ルシオラとの話についつい夢中で美神への連絡をしばらくたっていた。
 なお連絡はトランシーバーを使って行っている。

「あ、すんません。
 ええと…念波は閉じこめられていますけどやっぱり結界がオーバーヒートしてます…!」

「合図したら扉を開けて!」

「えッ!? そんな事をしたら」

「大丈夫!! 私があんたを危険な目に合わせると思う!?」

「説得力全然ないぞっ!!」

 横島はそうトランシーバーに返したがそうしている間にもぎしぎしと建物が軋んでいる。

『…これはやるっきゃない…よな?』

『ヨコシマ、文殊は効かないの?』

『その手があったか!』

 横島はルシオラの助言で文殊を作ると「消」と文字を表した。

「うし、これでいきなり来ても消せるはず!」

 横島はそう言って文殊をかざしながら扉をあけた。
 次の瞬間その場は大爆発した。




「ヨコシマ〜!!」

 ルシオラは言葉通り飛んで帰ってみると事務所の屋根部分は黒く焼け焦げていた。
 その玄関付近では美神とおキヌ、美知恵がいた。

「ヨコシマは!?」

「あ、ルシオラさんの帰りなさい」

「あら? あなたは確か…なんでここに?」

 ルシオラがその場に下りると美知恵が訊いた。

「そんな事よりもヨコシマは!? 文殊でちゃんと念波消えたの!?」

「「…ああ!!」」

 ルシオラがそう言うと2人は手をぽんと打った。

「そうか、その手があったんだ!」

「<発火防止>、または<念力排除>ってやればそれですむわね!」

「な〜んでそんなことにも気付かなかったんだろ?」

「やっぱり人間パニックになるとそういう冷静な判断できないわよね〜」

 美神二人はそう言うとどこか引きつりながらも笑っていた。
 その横を右手のみ健在な横島が担架に乗せられてやって来た。

「ヨコシマ……!!!」

「ふひ…ふひひひ…炎だ、炎は生きている!! 俺は炎の目を見たぞーッ!!」

「ヨコシマ〜〜〜〜!!!!!!」




(あとがき)
ルシオラ>…これは?
作者>…まあ最初と予定は狂いましたが…君の美神たちへの認知のために必要な事で…ね
横島>て言うかルシオラがいても結局俺はこんな扱いかよ!!
作者>うん、けど前半は結構おいしいとこあげたでしょ?
横島>う、そ、そうだけど…
作者>まあこれからも基本的に怪我はするけど原作ほどひどくないってのが通説になると思うよ
横島>そんな〜!!
作者>後どうやってルシオラを出すか…その一言に尽きるね
ルシオラ>あの…
作者>ん?
ルシオラ>私が出るときって…ちゃんとヨコシマと…その…
作者>安心して、ちゃんとラブラブ<死語>させてあげるから…
まあその度合いは過激…な時があるのも否めないけど
ルシオラ>ボン<顔を真っ赤にして頭から湯気を出す
横島>おお!!
作者>それじゃそういう訳で…しばらくこんなノリで話は続くと思います
横島>いうなれば原作テイストってやつか?
作者>うん、この後原作終了後に話はオリジナルに移行する予定だよ、それではまた…


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