「……んで美神さん、今日の依頼はどっからっすか?」

「ん? 自衛隊からよ?」

「……なんでGメンじゃなくてこっちに?」

「さあ?」

「さあって……」

「ただ報酬が相場よりも高いわよ♪」

「書類も多かったですけどね」

 おキヌがそう言うと美神はごまかすように乾いた笑いをあげた。




 ゴーストスイーパー美神 GOS

作:ガイギス

第6話






「いつもこう言う風に他人と協力して依頼をしてるの?」

 ルシオラは横島に訊いた。

「いいや、普段は俺達だけでやってるね。

 ルシオラは知らないかもしれないけど、基本的に合同ってのは殆ど無いんだ」

「ふ〜ん」

 ルシオラはそういいながら自分達の周りに張られている捕縛用の結界を見た。

「……けどこの結果使えるの? 私が入っても作動しないんだけど……」

「ああこれな? それは……」

 横島はそう言うとルシオラに近づいた。

「え? ……」

「ほらこれ……ルシオラ?」

 横島はルシオラの服のポケットから文殊を取り出した。

「……『人間』?」

「おう、この結界はあくまで悪霊用の捕縛結界だからな。
 生きている人間には効果が無いんだよ」

「へ〜」

 ルシオラがそう感心して言うとトランシーバーから音がした。

『横島クン!?』

「はい、なんですか?」

『そろそろ出番よ! 妖狐追われてそこに出てくるわ! 結界に捕らえたら止めを……!!』

「もしもし! 美神さんどうしたんすか!?」

「ヨコシマ?」

「……駄目だ、切れてる」

「どうしたのかしら?」

「相手は妖狐って言ってたみたいだけど……なんで自衛隊が出て来たりしてるくせに正体不明なんだ?
 この仕事なんか胡散臭いんだよな……おキヌちゃんも書類が多い……」

 横島が言い終わる前に近くの草むらから妖狐が結界内に飛び込んで来た。

「ギャインッ!!」

「こいつかッ!! 結界に捕まっている間に……トドメを!」

「キューッ! キューッ……!! キュ……!」

 結界内に飛び込んで来たのは尻尾が9つある子狐だった。

「こりゃ九尾の……」

「けどまだほんの子供よ?」

「う……け、けどこれも仕事……………………」

 横島はお札をしばらく子狐にかざしていたがさっとしまい辺りを気にしながら自分の背負ったリュックの中に子狐を入れた。
 その時最初は抵抗していた子狐も途中から抵抗しなくなった。
 横島はルシオラを見るとルシオラは嬉しそうに微笑んだ。

「ルシオラ……」

「大丈夫、あの狐にはしばらく眠ってもらったわ」

「すまん、ありがとうな」

「クス……そういう風にけっして弱いもの虐めとかはしないお前だから私もお前と一緒にいるんだよ」

 ルシオラはそう言うと横島の頬にキスをした。
 それからしばらくして怒っているおキヌとそれをなだめている美神、そして自衛隊の隊員が現れた。

「で、仕留めたのね?」

「ヨコシマがお札に吸引して私が燃やしました」

「そう、よく……」

「本当ですか!? 横島さん!?」

 美神が言い切る前におキヌが横島に詰め寄ろう落とした。

「わ、おキヌちゃん落ち……」

「どうな……んで……す……か………………」

「ふう……今日はやけに力を使うわね」

 おキヌは途中から意識を失った。

「ちょ、ちょっとおキヌちゃん!? 大丈夫なの?」

「ええ、極度の興奮が続いたのか気絶したみたいです」

「身体には異常はないんだよな?」

 横島は2重の意味でルシオラに訊いた。

「ええ、大丈夫よ」

「そうか……けど話を聞くと別に退治じゃなくて封印でもよかったんじゃないすか?」

「ま……まーね。でも途中でやめたら莫大な違約金とられちゃうし、
 あんた達がトドメさしたんだから私は悪くないってことで……」

「それで俺達にやらせたんかい!?」

「経済がこんなで政局もややこしい時期だし……政府も神経過敏になってるのね。
 どのみちあれだけいじめちゃったら私達は妖狐の敵なんだもん、やるしかなかったのよ。
 手負のまま逃がす訳には行かないでしょ?」

「「……」」

 美神がそう言うと二人は黙り込んだ。




「……ここは? ……あ! 子狐!」

 おキヌはそう言うとがばっと布団を跳ね除け起き上がった。

「あれ? ここは……」

 そこであんまり見慣れぬ、けど見た事が無い訳じゃない一室に自分が寝ていた事が解った。

「あ、おキヌちゃん起きたの?」

「ルシオラさん!? てことはここは……」

「そ、私達のうちよ」

 ルシオラがそう言うとおキヌはルシオラに詰め寄った。

「あの子狐はどうなりました!? まさか本当に……」

「クス、そんなわけ無いでしょ? あのヨコシマよ? あ、そうだおキヌちゃん、ちょっと手伝ってくれない?」

「え? ……ああ、はい」

 おキヌはそういって頷くとルシオラの後に続いてキッチンに向かった。
 そこではできたてのきつねうどんが四つお盆に二つずつ乗せてあり、その横には救急箱があった。

「……? ルシオラさん、これは?」

「ああ、それは私が持って行くから先にこれお願い」

 ルシオラはそう言うとお盆一つと七味唐辛子、砂糖をおキヌに渡した。

「横島さん、きつねうどん……あ!」

 おキヌがリビングに入るとそこには子狐と格闘しているヨコシマがいた。
 手にはドックフードを持ち何とか子狐に触ろうとしたがことごとく噛み付かれたり引っかかれたりした。

「あ、おキヌちゃん起きたんだ」

「はい……あの、さっきは取り乱してごめんなさい」

「いや、おキヌちゃんは優しいからね。

 ああいう風になるのもおキヌちゃんらしいよ」

 横島とおキヌがそう談笑していると今まで唸っていた子狐がじっとおキヌが持ってきたどんぶりを見つめていた。
 とそこへルシオラがお盆と救急箱、そしてお皿を持って入ってきた。

「おキヌちゃんごめんね? 起きた早々手伝わせて」

「いえ、それはいいんです! ……それは?」

「お、なんだなんだ?」

「ヨコシマ大丈夫?」

 ルシオラはとりあえず持っている物をリビングにあるテーブルに置き横島の腕を見た。
 そこには子狐に付けられたと思われる多数の引っかき傷、噛み付いた跡があった。

「ま、この程度は問題ねえ。
 美神さんのお仕置きのほうがもっとひどいしな!」

 横島がそう言うと二人はそれを毎日見ている為納得した。

「さてと……妖狐は油揚げが好物って聞いたけど……そうみたいね」

 ルシオラがそう言うと狐は一回そっぽを向いたがすぐにテーブルの上にあるお皿やどんぶりを見た。

「あ、そうか! 授業で習った事がある!」

「さすがルシオラ!」

「二人とも落ち着いて……ほらこっちおいで?」

 ルシオラがそういってテーブルの近くに油揚げが入ったお皿を置くと子狐はそこと部屋の隅を行ったり来たりしている。

「迷ってる迷ってる」

 横島たちが見守るなか子狐はしばらく往復を続けていたがやがて皿の前に踏ん張り、さらにもう一度横島達を見ると、

「ウ……ウ、ウ、ウ……ウー!!」

 と唸った。

「ほらお食べ、お前もお腹空いてるでしょ?」

 ルシオラがそう言うと子狐はもう一度ルシオラを見るとルシオラはにこっと笑った。
 それを見たためか子狐はとうとう油揚げにかぶりついた。

「食べた!!」

「よかった……!! 仲良くするきっかけが、見つかりましたねっ!!」

「わはははは、しょせ……」

「そんな見下してなんて言わないの……解った?」

 横島が勝ち誇って何か言う前にルシオラが横島の口を手で押さえた。
 横島は片手を挙げ頷くとルシオラは手をはなした。

「な……ナメるんじゃないよっ!!
 このままじゃ妖力がなくなるから、あえて食べてやっただけなんだからっ!!」

 子狐はそうしゃべると大体14歳ぐらいの女の子に化けた。

「「!!!」」

「ば、化けた!?」

「人間なんか、大っ嫌いだ!!」

「まあまあ、ちょっと落ち着いて?」

 ルシオラはそう言いながらもいくばくかの魔力を開放した。

「な! お前……魔族!?」

「大人しくして……危害は加えないから」

 ルシオラがそう言うとしばし子狐が化けた女の子はルシオラを睨んだが敵わないと悟ったのかとりあえずは落ち着いた。

「折角化けられたんだからこっちにきて一緒に食べましょ? お前もあれだけじゃ足りないはずよ」

 ルシオラがそう言うとギュルルと島のお腹から音がした。

「あ……」

「横島さん……」

「クスクス、それじゃ私達も一緒に食べるわね……ほら、ここへおいで?」

 ルシオラはそう言うと椅子に座り隣の椅子を引いてポンポンと叩いた。
 横島は言われるままに座ろうとしたがルシオラに止められた。

「ヨコシマはこっちね……ほら、おいで?」

 ルシオラがさらにそう女の子に言うと観念したのか女の子は立ち上がろうとして……

「ギャンッ!」

 といって片膝を突いた。

「お……おい!?」

「足が折れてますね」

「はい、おキヌちゃんそえ木と包帯」

「あ、ありがとうございます!」

「固定してヒーリングしておくわね」

「しばらく痛いかもしれないけど、お前の妖力は強いから、すぐに治るわ」

 二人はそういいながら子狐の応急手当をした。

「ええと……俺は何をすれば?」

 手持ち無沙汰になった横島はどうしようかと唸っていた。

「クス、そうね……あ、私はルシオラ」

「私、おキヌ、あなたは?」

「タ……タマモ」

「へ〜、俺は横島忠夫、よろしくな」

「タマモ……きれいな名前ね」

 おキヌがそう言うと子狐……タマモは照れたのか顔を赤くしながら

「う……うるさい――――ッ!」

 タマモはそう言うと3人に幻術をかけた。

「甘い!」

 しかしの幻術はルシオラにはかからなかった。

「そんな!?」

「まあまあ、そんなに照れないの。それより食べない?」

 ルシオラはそう言うと椅子に座った。
 なお幻術にかかった横島とおキヌはボクサーとそのセコンドという設定らしくなにやら世界に向けて〜などと叫んでいた。
 タマモはそれを横目にルシオラとよそわれたきつねうどんを食べた後、どうして自分の術がルシオラに聞かなかったのかを尋ねた。

「私は魔族よ、それに幻術は私にとっても得意分野でもあるしね……」

「何でその魔族がこんなのと一緒にいるのよ?」

 タマモはそう言うとなにやら試合に突入したらしい横島達を横目に言った。

「色々あってね、話せば長くなるけど……」

「ふ〜ん……」

「とりあえず人間は良い人もいれば悪い人もいるって事よ。
 そしてこの二人は良い人、これは絶対に揺れないわ」

「……まーね」

 二人はそう言うとしばし黙ってきつねうどんを食べた。

「ご馳走様」

「はい、お粗末さまでした……ふふ、一度言ってみたかったのよね、これ」

「それじゃ私はこれで」

「いくあてでもあるの?」

「とりあえずあの妖怪退治屋の所に復讐に行くわ、それじゃ!」

「あ、ちょっと! ……美神さんには絶対敵わないって言おうとしたのに……」

 ルシオラは遠くにいるタマモにそう呟くといまだ幻術にかかっている横島達を現実にもどした。
 今までの経緯を聞いた横島とおキヌは美智恵が一緒にいるだろうから大丈夫かと納得しもう冷めてしまったきつねうどんを食べ始めた。




「……それで結局どっかいっちゃったのね」

「そうよ……ま、あの様子なら当分大人しくしてるでしょ」

 横島達3人は翌日事務所に行くともうタマモの襲撃後で予想通り美智恵が美神と一緒に居た。
 二人の話を総合するとタマモは復讐しようとおキヌに化けたが、ひのめの発火能力で右手を火傷し変化が完璧でなく結局それを看破されて逃げたそうだ。

「まあ、あんた達の事だからどうせ匿ってるとは思ってたけどね」

 美神にそう言われ横島とルシオラは苦笑した。




(あとがき)
作者>はい、とうとうタマモの登場です!
横島>といっても本格的に合流するのはまだ先だろ?
作者>ええ、そうですね
ルシオラ>そ〜れ〜よ〜り〜〜!!
作者>な、なんですか?
ルシオラ>なんで今回は前回見たく甘甘が無いのよ!?
作者>いや〜ネタ切れ?
ルシオラ>もしつぎもこうだったら許さないわよ!!
作者>つぎ……マイ・フェア・レディーですか……
横島>……なんか次も無しっぽいな
ルシオラ>そんな……ふえ〜ん<そういいながら横島に抱きつく
横島>よしよし
作者>そ、それじゃあこれで!


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