「……ええ、解ったわ……場所は? ……その食堂ね? ……ええ、またね」

 美神はそう言うと電話を置いて頭を抱えた。

「ああ〜〜〜!!! 何であたしがまたボランティアなんて!!! ……けどやらないとママは煩いし、もしばれたら横島クン達も騒ぐから無視はできないのよね……」

 美神はそう言うとおキヌと横島に連絡を入れた。





 ゴーストスイーパー美神 GOS

作:ガイギス

第10話






「おはようございま〜す」

「美神さんおはようございます」

「お手伝いに来ました」

 美神が電話した翌日、旅行用の荷物を持ったおキヌと、手ぶらの横島、ルシオラが事務所に現れた。

「あれ? あんた達荷物は?」

「これです」

 ルシオラはそう言うと地究号を懐から取り出した。

「……カブトムシのメス?」

「けど今の時期はまだ土の中じゃ……」

「ああちがうっす、これは逆天号と同じ兵鬼です」

「「……兵鬼?」」

「兵鬼って言うの……もが」

「ま、簡単にいえば荷物をコンパクトに出来る装置です……ただもう入りませんが」

 横島はルシオラの口を押さえてそう言った。
 ルシオラは念話で猛烈に反論したが横島はそれをスルーした。

「ふ〜ん……二人分の旅行の荷物が入るって事は結構使えそうね……」

「あ、いっときますけどルシオラが居ないとこれ発動しませんよ?」

「ちっ! 後でこっそり奪い取ろうと思ったのに……」

「美神さん、奪い取るって……」

 おキヌがそう言って呆れると美神は気を取り直して車に乗り込んだ。
 その横では横島が念話で必死にルシオラを説得していた。
 美神がどれほどがめつく手段を選ばないかを……




「せんせ〜〜〜〜〜〜!!!」

「おう! シロ、ひさし……グオ!」

 車から降りた横島をシロは轢いた……もとい抱きついた。
 そのあまりの威力にルシオラを始め女性人は一時呆然となってしまった。

「ええと……彼女は?」

「あ、シロちゃんです」

 ルシオラの質問におキヌがそのまんま言った。
 ルシオラはどういおうかと美神を見ると美神は仕方ないわねと言う様な呆れた顔をしていた。

「え〜い! いい加減離れんか!!」

「ク〜〜ン」

 横島がそう言うとシロは仕方なさそうに離れると鼻をひくつかせた。

「あれ? 先生に知らない女の匂いが……」

「え?」

 横島はそう言うとルシオラと目を合わせ二人してあははと笑った。

「……あの美神殿」

「ん? どうしたの?」

「こちらの御仁は一体……」

「始めまして私はルシオラ、一応魔族よ」

「拙者は犬塚シロといいます!」

 シロがそう元気よく答えるとルシオラはくすっと笑った。
 その後駐在の警察官から今回の騒動を聞いた一行は全員(シロを抜かす)ある一人の人(?)物を思い浮かべた。

「……心あたりならあるわ……! きつねうどん月の妖孤……!」

「この女じゃ――――ッ!! このお女にも化けとった――――!!」

「……やっぱり……」

「あのこ……ね」

「ですね」

 食堂のおばさんの話により美神達の予想は確信へと変わった。

「妖孤に知り合いがいるでござるか?」

「……ま、ちょっといろいろあってな―――」

「でも、最初が美神さん、次が横島さんの姿だったってことは……」

「今度は私かおキヌちゃんに化けるってことね……」

「それだとちょっとふんじばりたくないな。
 ま、なるべくおんびんに捕まえよう」

 横島がそう言うと食堂の扉が空いて一人の長髪の男が入ってきた。

「きつねうどん一丁――――!!」

「このただ食い野郎――――ッ!!」

「う……うわッ!! おまえは―――」

 長髪の男……西条がきつねうどんを頼むと横島はのりのりで西条に攻撃した。

「おんびんに捕まえるんでしょ!?」

「どう見ても徹底的に殲滅よ!?」

「い……いや、あのツラなんでつい……!!」

 おキヌとルシオラに攻められ横島は押す弁解したがどことなく反省の色はなかった。

「キツネ野郎ッ!! 西条殿にまで化けやがって――――!!」

「!! シロ、危ないッ!!」

「え!?」

「くらいなッ!!」

 シロは飛び出したはいいものの西条(偽)のはなった狐火にどうすることも出来なかった。

「狐火……!!」

「シロッ!!」

「大丈夫よ、ヨコシマ!」

 ルシオラがそう言うと横島は手にした文殊を一度見つめ、『壁』から『縛』に変えて発動した。
 シロに向かった狐火はぎりぎりのところでそれ、置いてあった水入りのバケツに群がった。

「やめなさい!! タダ食いのあげくこんなところで死にたいの!? 金毛百面九尾の名に傷がつくわよ、みっともない!!」

 美神がそういいながら縄を取り出すと西条(偽)は変身を解いた。

「やっぱりあんたか……! タマモ!!」

「お……女!? 女狐でござったか!?」

 シロがそう言うと横島とルシオラがほっとしたように言った。

「元気そうね?」

「ケガも治ったみたいだな」

「フン!」

「おいッ!! なんだその態度は!?」

 タマモの態度にシロは注意したが逆に、

「うるさい犬だな……!! 私を捕まえるのに、こんな役立たずを呼んだの?」

 と言われぷっちんときれた。

「無礼者――――――ッ!! 切り捨ててくれるッ!!」

「ま……待てシロッ!! おすわりッ!!」

「…………会わせるのはまずかったかも……!」

「え? 何でですか?」

「犬族同士遠い親戚なんでしょう?」

 あまりのシロの起こりっぷりに引きながら訊いたルシオラと警察官に美神が答えた。

「狼は群れで生活するけど、狐は単独生活……種族は近くても狐の修正はむしろネコに近いのよ。
 こりゃ――血を見るかも……!!」

 美神がそう言うとルシオラは心配そうにシロを見た。
 その後ルシオラと横島が協力して何とかシロを取り押さえた。




「武士の情けでござるッ!! あの女狐切らせてください―――ッ!!」

「え―いくどいぞっ!! おとなしくしろっ!!」

 横島とルシオラ二人で協力してシロを縛りあげた。

「先生のアホ―――――ッ!! なんであんな奴かばうんでござるよ!?」

「いーからおちついて!!」

 それでも暴れるシロを二人は必死に宥めていた。

『ルシオラ、幻術は!?』

『さっきからやってるんだけど、この子興奮しててどうやってもおちつかないの!!』

 横島は念話でルシオラらに訊くがそう返されある意味畏敬の目でシロを見た。
 そんなこんなでシロとルシオラ達が押し問答を繰り返していると話がまとまったようで美神達が出てきた。

「……あんたは私が退治したことになってんのよ!? 無事だとバレると私もあんたもヤバいのよ! しばらく言うとおりにしなさい!」

「……双方の安全のために仕方ないわね。
 きつねうどんが食べられるならついていくわ」

「OK。いらっしゃい!」

 どうやらタマモは美神が預かることで落着したようだ。
 横島とルシオラはその結論に半ばほっとしたが、そのため力が緩みシロにずるずると引きずられてしまった。

「異議あり――――ッ!! せっ……拙者をさしおいて、そんな女狐を飼ってやるつもりでござるかッ!? 許さ―――ん!!」

「しょーがないでしょ!? 事情があんだからっ!!」

「なら拙者も一緒に……!!」

「ダメ!! あんたは帰る村があるでしょ!?」

「修行のためなら、長老も許可するでござるっ!!」

「うちはムツゴロウ王国じゃないんだからっ!! 片っぱしから妖怪飼ってやる気はないの!!」

「どーしてもダメとゆーなら……」

「切腹でもする気!? 私は気にしないからねっ!?」

 美神がそう言うといつの間にか縄を切って抜け出したシロが、

「腹いせに車のシートに粗相をしてやるでござるッ!!」

 と言ってコートを脱ぎ、ズボンのベルトを取ってファスナーを下ろした。

「やめんかはしたない――――ッ!!」

「それ買ったばっかりなのよッ!!」

「女の子がそんなことしないのッ!!」

 その行動に横島、美神、ルシオラがつっこんだ。








 結局シロに押されシロとタマモの二人が美神の事務所に住む事になった。

「いい!? あいてる部屋はここだけなんだから、くれぐれも問題起こさないでよね!?」

「大丈夫でござるよ」

「……」

 二人はそう言うと事務所の上の屋根裏部屋があてがわれた。
 その様子を見ていたルシオラは横島に念話ではなした。

『ここって確か北極の後私とパピリオが一緒に暮らしてた部屋よね?』

『一回燃えたからきれーに何にも残っちゃいないがな』

『クスいいのよ、ここがそうだったって言う雰囲気は残っているもの』

 ルシオラはそう言うとそっと横島に寄り添った。
 横島は少し慌てたが仕方ないなと言う風にため息を吐くとそのまま好きなようにさせた。
 その二人を無視するかのようにおキヌが、

「すぐ、ごはんにするからね」

 と言うと二人が返事をしてその場を後にした。
 横島とルシオラは美神の後に続いてその後を追った。
 しばらく四人は事務所にいたが、人口幽霊壱号の報告により、シロとタマモが険悪な雰囲気になっていることを告げた。
 美神はため息をつくとどこからかとり出した槍をブスッと天井にさした。

「……先が思いやられるわね」

「シロの奴、あんなにヤキモチやきだったとは……」

「とにかくしばらくいるんだし、仲良くさせないと……」

 ルシオラが全部言い切る前に事務所のドアが開けられなにやら不吉な雰囲気があたりに充満した。

「うわ!? な、なんだ!?」

 横島が驚いてドアを見るとそこにはブツブツと呟いている西条とそんな西条を注意している美智恵がいた。

「ど……どしたの!? ひどい有様ね?」

「そ……そうかい?」

 そういう西条の周りには心なしか人魂が見えた。

「う、うわっ!? なんでござるか、このニオイはっ!?」

「うぷっ……!!」

 と、そこへ屋根裏から降りてきた二人が同時に鼻をつまんだ。

「汗とタバコとコーヒーと……」

「ウンチとオシッコのニオイも……!?」

「し、失礼なことを言うなッ!! そこまで不潔にしとらんっ!!」

「あ、ひのめだわ。
 おむつ替えなきゃ……!」

「……」

「ちょっとワケありで、二人ともしばらくウチに……」

「人狼と……妖狐……!! 理想的だ!! 君たちの超感覚なら――――」

 西条はそう言うと二人を引き連れてまずはICPOの事務所に向かった。

「ヨコシマ」

「ん?」

「これって誘拐になるのかしら?」

「……さあ?」

 その様子に美智恵はもとより美神達全員はあっけに取られていた。




「殺人現場の―――」

「霊視……?」

 西条に何かわからないが着替えを渡され二人は状況に流され着替えると美神達と共に街中に連れ出され、ここでようやく説明された。

「そうだ! 君たちのあらゆる感覚を総動員してくれ! 人間以上の能力を持つ[犬神]が二人もいるんだ! これなら可能性が高い……!!」

「まあ、そりゃな……警察犬とかもいる事だし」

「二人はそれよりも上……なのよね?」

「当たり前でござる!」

「先入観を与えないよう、現場がここだったと言う以外は教えない。
 やってくれるかい?」

 西条の質問にシロは右手を勢いよく挙げ尻尾をぱたぱた振った。

「やるやるっ!! 拙者、やるでござるっ!!
 悪者をやっつけるのは武士のつとめ!! 必ず犯人をあばいてみせるでござるよっ!!」

「……」

 そんなシロに対してタマモは何か考えるように下を向いた。

「……君はイヤなのかい?」

「私に何のメリットがあるの?
 私は自分が生き残るために、人間社会を学習しに来ただけよ。
 この仕事はあまり一般的だとはいえないと思う。
 犬と違って人間の道具に使われるのはシュミじゃないわ。」

「気持ちはわかるがしかし……」

「放っておくでござるよ、西条どの!!」

 西条が説得しようとした時シロが割り込んだ。

「狐の感覚なんか狼の足元にも及ばないでござる! どーせ奴には何もできないでござるよ!」

 シロが押す言うとタマモはムッとして言い返した。

「狐族の感覚はお前なんかよりすぐれてるわ! 私は「やらない」と言ってるのよ! 「できない」なんていつ言った!?」

「えっと、その……」

「ま、言うだけならタダでござるしな……! そーゆーのを負け犬の遠吠えってゆーでござる! 帰れ帰れ!!」

「……あの……ね、もっと……」

 ルシオラは必死に二人の間を取り持とうとしたが二人はそれに気づかずにヒートアップしていった。

「気が変わったわ……!! やってあげる!! ただし、条件がひとつ!!」

『ヨコシマ、どうしよ……?』

「こんな犬ころと協力できないわ。私は私で犯人を追う」

『……こうなりゃなりゆきに任すしかないだろ?』

「私が犯人を捕まえたら、こいつは山に追い返して、二度と顔を見なくてすむようにして!」

『……本当に大丈夫? このままで?』

「やる気か、女狐!! 狐の分際で、狼に勝てると本気で思ってるんでござるか!?」

『ま……なるようになるだろ』

「拙者が勝ったらどーしてくれる!?」

「その時は一生あんたの子分になってやるわ!!」

「その言葉忘れんなよ!?」

「そっちこそね……!!」

 シロとタマモはさらにヒートアップし、その様子を心配そうにルシオラ、おキヌは見ていた。

「れ、令子ちゃん? い、いいのかな……?」

「も、やらせるしかないわね。
 どっちみちこのままじゃ、二人とも追い解けないわ」

 心配になったのはさらにもうひとり、西条は美神に倉庫と得られ釈然としない顔をした。

「決まったでござるな、それじゃ……」

「「狩の開始よッ!!」」

 二人はそう言うと駆け出した。
 その横では横島が集まったギャラリーを見てため息をついた。




(あとがき)
作者>はい、長いのでここまでにします!
横島>ずいぶん時間かかったな?
作者>次はもっと時間がかかるかも……最悪一週間あきます……投稿が
ルシオラ>そ、そう……がんばってね
作者>はい……
横島>こんな作者ですが感想、意見等ありましたら……
ルシオラ>お気軽に送ってくださいね


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