「お帰り……ヨコシマ、大丈夫?」

「な……なんとか」

 横島はそう言うとまるで死んだように倒れて動かなくなった。
 ルシオラはシロにどこまで散歩しに行ったのかを聞くと、ルシオラの予想をはるかに超える距離だったのが判明した。
 ルシオラはため息を付いて横島にヒーリングを施した。





 ゴーストスイーパー美神 GOS

作:ガイギス

第13話






「先生――――っ、サンポ行こっサンポ!! 退屈でござるよっ!!」

 この日は除霊の依頼がなく、つい最近事務所内の掃除をした為シロや横島は暇を持て余していた。

「一人で行って来いよっ!!」

「それじゃつまらないでござる―――っ!!」

 シロはそんな横島にサンポへと誘ったがそれはつまり死のトライアスロンであるため横島は嫌がった。

「今日は近くで済ませるからっ!! ねっねっねっ!? ね――――っ!?」

「暑っくるしいからくっつくなーっ!! 顔をナメるな――――っ!!」

 この日は6月の上旬にもかかわらず予想最高気温が30℃越えという暑さだった。

「うるさ――――いッ!! 散歩でも何でも行って来なさいっ!! 今すぐッ!!」

 ドタバタと煩い横島とシロに美神はあまりにも少ない我慢のボルテージが一気に爆発した。

「クソ暑い……!! なのにクーラーが故障して、しかも明日までの書類仕事がたまってんのよッ!!」

 美神はイライラしながらそう言うと書類を整理していた。
 その横ではルシオラが黙々と、たまに汗を拭きながらその手伝いを行い、
 タマモはなぜか長袖のままグデッと机にひれ伏し、おキヌは人数分の冷たい飲み物を用意した。

「あんたよくこの暑さに平気ね―――」

「拙者は侍でござる!! グータラな野良キツネとは修行のレベルがちがうでござる!」

 タマモはそれこそ犬のようにはっはっ……と息を細かくしながらそう言うとシロは胸を張ってそう言い返した。
 ルシオラは一度手を休めるとシロに散歩はなるべく近くでする様にと言った。
 シロはそのときのルシオラの迫力から黙ってこくこくと頷いた。
 ルシオラはそれを見ると一応納得して、横島に一緒に行けないことを謝ると、
 横島も自分を気遣ってくれるルシオラに感動して涙を浮かべながら気にするなと答えた。
 その二人の甘い空気に美神とタマモは無視、おキヌとシロは羨ましそうな顔で見ていた。




 おキヌと一緒にシロと横島を送り出したルシオラは一回よし!と気合を入れて美神の書類を手伝った。

「そう言えばなんであの人、美神を手伝ってんの?」

 タマモがルシオラを指差しながらそっとおキヌに訊いた。

「ルシオラさん?」

 おキヌが確認の為訊きかえすとタマモは黙って頷いた。

「ゆーなれば暇だから……かしら?」

「いや、そうじゃなくて……彼女って魔族なんでしょ?」

「ええ」

「その魔族がどうして人間の手伝いをする事になったの?」

「う〜ん、する事になったというよりか……横島さんがいるから?」

「いや、私はその経緯を知りたいんだけど……」

 タマモがそう言うとおキヌはチラッとルシオラを見た。
 ルシオラは相変わらず黙々と書類を片付けていった。

「う〜ん……私なんかが話していい内容じゃあ……」

「……そんなに重い話?」

 タマモがそう訊くとルシオラはくすっと笑ってタマモ達の方を向いた。

「おキヌちゃん、別に私はいいわよ? 多分ヨコシマも……」

「あ、聞いてたの!?」

「クス、ええ」

「てゆーか聞こえるわよ、途中から普通の音量だったわよ?」

 美神にそういわれ、タマモはそりゃそうねと、おキヌは自分もそれに入るのかと少し顔を赤くした。

「でもいいの、ルシオラ? 横島クンいないけど……?」

「タマモちゃんはどうして私がここでって言う事ですから……」

「ま、あんたが良いのなら良いけどさ」

 美神はそう言うと書類仕事に戻った。
 ルシオラはおキヌに自分の変わりに話す様に言うと自分も書類仕事へと向かった。

「……と言われても、どこから話して良いのか……」

「出来れば最初から」

「う〜ん、それじゃ――――」

 おキヌはそう言うと話し始めた。
 それは悲しい蛍の話、そしていつの間にか話しの中心になってしまった少年の悲愛……
 おキヌが話し終わるとタマモは自分が軽い気持ちで話を訊いた事を少し後悔した。
 もしこの場にルシオラがいなかったら……きっとおキヌは話さなかっただろうし、
 聞いたとしてもそれはきっとものすごく後悔しただろう……

「……けど結局復活したんでしょ?」

「ええ……けどどうやってかは私には全然……」

「ふうん……」

 タマモはそう言うと黙々と書類に何かを書き込んでいるルシオラを見た。




「た……ただいまでござる……」

 その日の夕方、美神とルシオラは漸く書類仕事をすべてやり終えて一服すると、
 事務所にシロが申し訳なさそうな顔で現れた。

「シロちゃんお帰り……あれ?」

「ヨコシマは?」

 ルシオラがそう言うと一度ビクッと反応し、恐る恐るという感じで後ろを見た。
 ルシオラはドアの間からそっとのぞいた。
 そこにはひたすら脂汗をかいている横島が立っていた。

「ヨコシマ!? ……大丈夫? どうしたの?」

「あはははははは……」

「シロちゃん? ……とりあえずヨコシマ、入ろ?」

 ルシオラはそう言うが横島はいつまでもそこから動かなかった。
 シロは横島を見ていったいどうしようという顔でおろおろしていた。
 おキヌはその反応に気になってルシオラと横島の傍まで来た。

「よ、横島さん!?」

「いったいどうしたの、これ!?」

 二人が横島の後ろに回ると横島の尻は血だらけだった。
 ルシオラはとりあえずおキヌとヒーリングを施すと横島を抱えた。

「それじゃ美神さん、ヨコシマがこんな風になっちゃいましたから私達はこれで……」

「そうね……ま、書類の締め切りも間に合ったし、いいわよ」

「それじゃヨコシマ、いこ?」

 ルシオラはそう言うとヨコシマに抱きついて抱き合うようにして飛んだ。
 最初横島はこの格好に照れたが、尻を触る訳には行かないのででれでれしながら従った。




「それでヨコシマ? いったい何があったの?」

「いや、大した事じゃないから大丈夫……」

「もう!」

 ルシオラは横島と家に帰った後何があったのかと訊いたが横島はそれに一切答えなかった。
 横島はヒーリングのおかげで漸く歩けるようになりベットに倒れた。
 ルシオラはそれを見て溜息を付くと夕食を作ろうと台所へ向かった。
 ただしその途中二回ほどよろめいたが……




(あとがき)
作者>さあやってきました13話!!
横島>ううう……俺今回は原作どおり酷い目にあってないか?
作者>けどその分早く回復してるだろ?
横島>それだけ!?
作者>うん
横島>ひで〜……な、ルシオラ?
ルシオラ>……え?
横島>どうしたんだ? ルシオラ
ルシオラ>ううん、なんでもないの……それよりも何?
横島>いや……
作者>さて、それではこれで、感想等お待ちしています!


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