「……つまり俺から基礎霊気をコピーして魔力の部分をもぎ取ってルシオラにくっ付けたわけだ」

「ああ……ただもぎ取っただけだから人の霊気も当然混ざってる」

「ヨコシマはそんな事されて大丈夫なの?」

「まあ基本的にコピーしたやつからの選別だからな……けどその時ちょっと面白い事が解った」

 佑輔がそう言うと、ルシオラと横島は顔を見合わせた。

「魔族にかなり近い霊気構造をしているようでね」

「まあルシオラに分けて貰ったようなもんだしそれは仕方ないけど……」

「まあそれでまず人に近い存在になるか魔族に近い存在になるか……どっちがいい?」

「へ?どっちも近いって……?」

「あなたは今旨い具合に双方の気が混ざり合っているんです。
 今、このまま生活を続けると霊気のほうが勝ってきて魔力が暴れます」

「う、まじっすか?」

「けどそれを押さえて、しばし安静にしていれば収まります」

「今ルシオラはちょうどその時なんだ」

「つまり今は魔力が勝っていて霊気がそれに負けまいと暴れてると?」

「ええ……本当はあと1年ぐらい後に起きるはずだったんだけど……」

「まあ結構力使わせてたもんな……ルシオラ、すまない」

 横島が頭を下げるとルシオラはその頭を上げさせた。





 ゴーストスイーパー美神 GOS

作:ガイギス

第15話






「……ふう、そう言えば明日は七夕か」

 横島はそう言うと虫を飛ばした窓を閉めた。

「はあ……さて、そんなじゃせっかくこれがあるんだし天頼みと行くか!」

 横島はそういって一回自分のひざをぽんと叩くと、紙切れを集めだした。
 その紙切れの中で短冊として使えそうなのを色々とピックアップしていった……
 なおその横にはどこから運んだのか小さめの竹がたたずんでいた。




「……でね、二人の恋人は、自分たちが会える日を祝ってくれた人の願いをかなえるの。
 だからこうしてささ竹に願いを書いた短冊を飾っておくのよ。
 年に一度の天の恋人のデート……ろまんちっくでしょ?」

 おキヌはそういいながら短冊を竹に飾った。

「拙者、書けたでござるよ――――っ!!」

「私も」

 シロとタマモそう言うとそれぞれ「さんぽ」、「油揚げ」と書いてある短冊を持ってきた。

「……てゆーか……これは単に好きなもの……?」

「うんっ!!」

 おキヌの感想にシロは素直に返事をした。

「幼稚園かここはっ!?」

「まあまあ、いーじゃないですか、美神さん」

 美神がつっこむと横島がそれを宥めた。
 この日は夕方までかかる依頼をこなし、せっかくだからと横島も事務所にいた。
 なお横島のバンダナの裏には一匹の虫がいたがその事は美神達は気づかなかった。

「せっかくだから僕らも短冊飾りましょうよ」

「横島クン?なんなの、その紙袋は!?」

 横島が床に置いた紙袋を見て美神はそう言った。
 その紙袋の中身は何百枚もの短冊で、その内容は全て「いい女と一緒に夜を明かしたい」と書かれていた。
 横島はそれを次から次へとその短冊を竹に括り付けた。
 短冊の一枚一枚は軽い物でもそれが束になれば相当な重さとなり、結果竹は折れた。

「あっ、竹が折れちゃった!?」

「もっとマシなことにエネルギーをまわせんのかおのれはッ!?」

 美神はそう言うと掌をグーにして突っ込んだ。
 すると行き成り横島が飾った短冊が光り始めた。

「ん?」

「な、なんだ!?」

「霊体だわ!? 事務所の結界の中に強引に割り込んできてる!?」

「横島さんの短冊が……!!」

「!! 共鳴してる!? まさか―――」

 光は短冊からその近くへと移動し丸い球体となった。
 そしていっそうの光があふれ出すとその中心に髪の長い人物が体を丸め片膝を突いていた。

「星に願いが届いたのかッ!? 宇宙からルシオラの出前が―――」

 横島はそういってその人物に近づくとその人物はむくっと起き上がった。

「…………!!」

 横島はその人物の大きさにぴたっと止まった。
 その人物は2メートル以上の男の格闘家のような背格好の女性の服をした何かだった。

「……」

 その何か<よく見ると唇に口紅がしてある>はふしゅ〜〜ふしゅ〜〜という効果音が似合う雰囲気を出していた。
 その女性はぬっと横島を掴んだ。

「ひ!?」

「せ、先生――――ッ!?」

 それに対しシロが女性に切り掛ろうとしたが、

「待った!! 危ないから手を出さないで!!」

 美神はそう言うとタマモと一緒にシロを止めた。

「あいつ少なくとも天界神クラスの霊力があるわ! あんたの通常攻撃じゃ歯が立たない!」

「しかし―――」

「美神さんの言うとおりよ。
 それにまだ敵だと決まってないわ」

 タマモがそういうがシロはそれでも抵抗していた。

「短冊に込めたおまえの念、しかと受けとめた。
 願いを叶えよう!」

「その前にあんた誰ッ!?」

 横島が胸倉を掴まれたままそう聞いた。

「我が名は―――織姫!!」

 女性……織姫がそう言うと横島以外の事務所の全員がずっこけた。

「望みどおりわらわと一夜を……!! こよいそなたはわらわのダーリンじゃ!!」

「は、話がちがう――――ッ!!」

 織姫が横島の顔を近づけてぽっと赤くなると横島は気ながらそう言った。

「ムッ!!」

 織姫は振り返るとそこには織姫と同じように光の玉ができていた。

「また浮気か、織姫!! 年に一度の逢瀬の日だというのに―――」

 その光の中から今度は男が現れた。

「女好きな男を見つけては人間界で浮気……!! 今年こそ許さんッ!!」

「ちッ、彦星!! そちの顔は見あきたわ!! わらわは刺激が欲しいのじゃ!!」

 織姫はそう言うと極太の霊波砲を彦星にぶつけた。

「おいッ! スピードの速い乗り物はあるか!? かけおいじゃっ!!」

「何で俺が、俺にはルシオラって言う―――」

「ふんッ!!」

 織姫は横島の言葉をさえぎって床を殴ると、床はあっけなく崩壊した。

「もう一度聞く! 乗り物は!?」

「ガレージにコブラがあります―――ッ!」

 横島は織姫のその怪力に泣く泣くそう言うと壁にある車のキーを指差した。
 織姫は横島を抱えたままそのキーを手にするとコブラに乗り込んだ。
 コブラは織姫の手によって事務所のガレージの扉を突き破りそのまま走り去ろうとした。
 とそこに、ガレージの横の扉から彦星が現れコブラの後ろに取りつき引きずられた。

「ぬうッ!!」

「た、助かった……」

「運転せいっ!!」

「は、はいいっ!!」

 織姫は横島を強引に運転席に移動させると自分を斧で彦星の手を切断した。

「どうすこい―――ッ!!」

「ぎゃ―――ッ!?」

 彦星は捕まっていた手を切断されそのままごろごろと車の後ろを転がった。

「う、うわ―――」

「ほれ、もっとスピードをあげい!!」

「許して―――ッ! 降ろして―――ッ!」

「そう騒ぐでない、ダーリン! せっかくの夜を楽しもうぞ」

「い、言っとくがGSは魔物の餌食にはならんからなっ!?
 俺に指一本でも触れれば──」

 ……いったい何が出来るのだろう?

「心配せずともそちもすぐに気が変わる! なぜなら我われ天星神族には―――」

 織姫はそういいながらシュウウッっと姿がぼやけ……

「変身能力があるからな」

 美神の姿に変わった。

「み、み゛か゛み゛さんっ!?」

 なお、その頃事情を聞いた美神達はタマモ以外それぞれ自分に織姫が変身したと思い騒ぎ出した。
 そんな中タマモは、

「……織姫ってルシオラさんのこと知ってるの?」

 と、冷静に彦星に質問していた。




「な……なんだ―――ッ!?」

「おどろくことはない。
 わらわの変身能力じゃ!
 一夜を過ごすにあたっては、誰でもおまえの好きなおなごになってやるぞ!」

「い……いや、しかし……!! 元はアレじゃねーか!! そんな手には―――」

 横島は思いっきり怖がりながらそう言った。

「横島クン……私とじゃ―――……イヤ?」

 織姫は汚水って横島の片腕に自分の胸を擦り付けた。

「う……って待て待て自分、あっちには彦星がいる。
 つまりこいつが変身能力を持っているのを知っている……って事はうわ―――ッ!」

 横島はそう言うと運転がかなり雑になった。

「こ、殺される! 今回は絶対、きっちり、ばっちり、完膚なきまでに殺される〜〜〜!!」

 どうやら今までの折檻の記憶を如実に思い出したようだ。

「ぬう……この女には何か特別な恐怖があるらしいの……」

 織姫はそう言うと今度はおキヌに変身した。

「うわ、おキヌちゃん!?」

「横島さん、私とじゃ嫌ですか?」

 織姫は顔を赤くして上目使いという男にはかなりぐらっと来る攻めで横島を誘惑した。

「うわあああああ―――ッ、ううう……って正気を保て俺!
 もしこれが美神さんとルシオラにばれたら……」

 横島はその後の風景を思い起こし頭に上りかけた血がさーっと引いた。

「いかんいかん! 危うく騙される所だった!」

「ぬうううう……ルシオラとはこやつの事か?」

 織姫はそう言うとシロに変身した。

「いや、それはシロっす」

「ではこやつか?」

「いや、それはタマモっす」

 続いてタマモに変身したがそれでは横島はぜんぜん反応はしなかった。

「……ルシオラとやらの写真はあるか?」

「そりゃもちろん肌身離さず……」

 横島がそう言うと織姫はおキヌに変身した。

「横島さん、その写真見せてください」

 織姫は横島の片腕を抱きしめ上目使いをしながらそう言った。
 横島はそれに素直に従って写真を出した。
 それは夜の東京タワーをバックに撮影されたルシオラが横島の右腕を抱きしめている写真だった。
 織姫はそれを見ると写真と同じ服装のルシオラに変身した。

「ヨコシマ……一緒にあそこにいっこ?」

 織姫はヨコシマの耳元でそう言いながらラブホテルを指差した。

「い、行き成りそんなラブホですか―――ッ!?」

 横島はそういいながらもそこへと車を向けた。
 と横島達の後ろから、パトカーが現れた。

「ん!?」

「止まりなさい――――――!! エンジンを切って、外へ―――」

「ちッ!! 彦星の差し金か!?」

 織姫はそう言うと横島にもたれ掛かりさらにスピードを上げさせた。




『うわ―――ッ!! 強行突破されたッ!!』

『応援要請……!!』

『手配車両は現在北上中!』

「全車両、そのまま北に追い込むように追跡!!
 警戒中の全パトカーは急行してください!!」

 美神は片手に持った無線機で警察の無線に違法介入し、パトカーに走指示を出した。

「すごい!! 警察が手足のように動いてくれるぞ!?」

「……こういう違法なことを続けているといつか破滅しますよ、美神さん」

 おキヌがそういうが美神は聞いていなかった。

「はあ……シロちゃんもタマモちゃんもああいう風になっちゃだめよ?」

「当たり前よ」

「も、勿論でござる!」

 おキヌがそう言うとタマモが断言しシロはこくこくと首を縦に振った。

「とゆーわけで先回りよッ!!」

「今年で浮気は終わりだ、織姫―――ッ!!」

 美神達は車に乗り込むとそういって発進した。




「数が増えてくるばかりじゃ……!!」

「あああっ……! ほっとしたような残念なよーな……!?」

 織姫が言うとおり10数台のパトカーが横島達の後を追っていた。

「そなた、もっと本気で逃げぬかっ!!」

「だって……!! あううっ俺はどーすれば……!?」

「迷うことなどない!!」

 織姫はそう言いながら変身し、ルシオラの下着姿になった。

「たぎる心の命ずるままにすればよいのじゃ!!」

 織姫はそう言うと横島にもたれ掛かった。

「……」

 横島はその織姫のアプローチに理性のたかが外れた。
 横島は「爆」の文殊を作り出すとそれをパトカーの群れへと投げ込んだ。
 文殊はパトカーの下に転がり込み、爆発した。

「どわ――――ッ!!」

 それにより大量のパトカーは一掃さえた。

「ああーん、素敵よっマイダーリン」

「カ――――ッ」

 織姫がそう言って耳を甘かみすると横島は意味不明な掛け声を上げた。
 どうやら完全に理性が崩壊したようだ。

「よーし追いついたッ!!」

「正気に戻ってください、横島先生―――っ!!」

 その時漸く美神達が織姫に追いついた。

「ダーリン!!」

「カ―――ッ!?」

 織姫がそう言うと横島は車を美神達が乗る車にぶつけた。

「うわああッ!!」

「シロ!! 彦星!?」

「うわ!!」

「あっ」

 その結果シロがまず車上から吹き飛ばされそのシロに服をつかまれた彦星がそのまま後を追い、
 彦星に手を指し伸ばしたタマモがその後に続いた。

「タマモちゃんも落ちた―――っ!?」

「もー許さんっ!! おキヌちゃん運転を!!」

 美神はおキヌに運転を任せると神通棍を構えて織姫へ跳躍した。

「この色魔どもめがああッ!! 極楽に行かせて―――」

 美神はそういって織姫へ斬りかかったが織姫はガシィッと攻撃を受け止めた。

「人間ふぜいがわらわに勝てるお思いか!? 人の恋路を邪魔する奴は、許さんッ!!」

「はッ!! お、俺は今まで何を……?」

 しかしそのせいで変身が解けてしまった。
 そのせいで横島は理性を取戻したが運転の事も頭から抜けていた……よって

「「「あ……!!」」」

「美神さん、横島さん!?」

 横島達の乗る車はそのままガードレールに突っ込んだ。
 それにより織姫は美神の首を掴み車から飛び降りた。

「年に一度のわらわの楽しみ……!! どーしても妨げるならようしゃはせん!!」

「ぐ……!!」

「織姫―――ッ!! いーかげんにせんかああッ!!」

 彦星はそうトラックの上から言った。

「ねえ、シロ……」

「なんでござるかっ!?」

「通りすがりのトラックを借りたまではいーんだけど、これってどーやったら止まるの?」

「え゛ッ!? ブ、ブレーキ……!!」

「こう?」

 タマモはそう言うとハンドルを大きく右へ切った。

「それはハンドル―――わああっ―――!!」

 その為トラックは大きく傾きそのまま電柱にぶつかり、
 荷台後部がぶち破れ、中に入っていた白い液体があふれ出した。

「ぶ、ぶわああッ―――!?」

 その液体は織姫にどば――っと頭からかかった。

「何、これ!? まさか液体窒素とかじゃないでしょうね!?」

 美神は織姫がかぶった時に手を離したので液体を避けながらそう言った。

「!! 美神さんこれ……!! 牛乳です―――っ!! も、もったいない―――っ!!」

 おキヌがそう言うと美神は織姫を見た。

「……どうやら決着ついたみたいね、織姫!! 今日は気温が高いし、風もあるわ……!!
 牛乳はすぐに乾いて固まる!!」

「ぬっ!! ―――って、それがどおしたああッ!?」

 織姫はそう言うと自分についた固まった牛乳を全て砕いた。

「あのね、牛乳ってのは乾くと―――ものすごくくさいのよッ!!」

「!!!」

 美神がそう言うとおり織姫の周りには物凄いにおいが漂っていた。

「それだけにおうと今日はもう浮気はムリね!! 誰もあんたには近づかないわ!!」

「い、いや―――っ!?」

「……これで懲りたろう、帰るぞ! ホラ!」

「!!」

 彦星はそう言うとすっとハンカチを織姫に差し出した。

「彦星、あんた……くさくないの!?」

「そりゃくさいけど……おまえにホレてんだ、このぐらいなんでもないさ!」

「あ……あ……わらわは……わらわは……もう浮気なんかしないっ!!」

 織姫は涙を流しながらそう言うと彦星を思いっきり抱きしめた。

「あっ!! そーいえば『天の川』って英語で……」

「確か『ミルクの道(ミルキーウェイ)』って言うわよね―――」

「……これのどこがロマンチックなの?」

「さあ……?」

 シロがそう言う横で横島は頭をぶつけ目を回していた。
 ただし自分のバンダナの裏に居る虫をかばう様に側面から血が流れていた。




 七夕の翌日ルシオラは事務所に現れた。

「あれ?ルシオラ、もういいの?」

「ええ……とりあえず通常生活ぐらいは出来る程度には……」

「で?横島クンは学校よ?」

「はい……実は美神さんにお願いが……」

「ん?何?」

「実はヨコシマの事なんですが……」

「横島クンの?」

「あの、今日と明日って何か依頼ありますか?」

「へ?」

「実は今日と明日、一緒に休みにして欲しいんですが……」

「う〜ん……」

 美神はそう唸ると一回予定表を見た。
 そこにはここ一週間は何も予定はかかれていなかった。

「まあ急な依頼が来なければ予定はないわね……まあいいわ」

「有難うございます!」

 ルシオラはそう言うと頭を下げた。




(あとがき)
作者>さあやってきました第15話!!
ルシオラ>ご心配をおかけしました!
作者>いや〜よかったですね〜ルシオラさん、何も起きなくて!
横島>いや、そうしたのはお前だろ?
作者>まあまあそれは言わない約束で……
   あそうそうルシオラさん、あなたはこれでかなり魔族に近づきましたので……
横島>近づいたって……
作者>ま、そういう設定です……ただしこれからはちゃんとパピリオとベスパに認識されますから
ルシオラ>そう……そういえばベスパ今頃どうしてるのかしら?
横島>今度の休みの時にでも二人で妙神山行ってみるか?
ルシオラ>クス、ありがと……
作者>さて……それではこれで……なお横島はお休みの間中ルシオラに色々な事をされました
   色々な……


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