「あち〜〜」

 横島はそう言うと眠っていたベットから起き上がった。

「クス、おはよヨコシマ」

「あ……おお、おはよ」

「朝ごはんできてるわよ?」

「おう……にしてもあちーな」

「エアコンはつけてるんだけど……ね」

 ルシオラはそう言うと手でぱたぱたをあおいだ。





 ゴーストスイーパー美神 GOS

作:ガイギス

第16話






「……さて、それじゃ俺達も行く準備を始めようか?」

「え? どこに? 何の準備?」

 きょろきょろと周りを見た後にやりと笑った横島にルシオラが首をかしげながらそう聞いた。
 ここは美神所霊事務所の中、さっき美神があわただしく六女の修学旅行のインストラクターとなる為、車で六女の生徒達と泊まるホテルへ向かった。
 横島は懐から双曲文殊を持ち出すと、

「ふっふっふ……俺の霊能力は日々進歩しているのだよルシオラ君」

「え? いったいどうしたの?」

「これを見たまえ!」

 横島はそう言うと「探」「査」の双曲文殊が埋め込まれている栄光の手と呼ばれる霊気のガンドレットを出した。

「それは……文殊を取り込んでる?」

「そ! そしてこの栄光の手は取り込んだ文殊の特性を生かすことが出来る!!」

「すごいじゃない、ヨコシマ! ……けどそれとさっきのとはどう繋がるの?」

「ちっちっち、解ってないなルシオラ。
 美神さんもといおキヌちゃん達はどこへ行った?」

「ええと、確かおキヌちゃんが言うには臨海学校……まさかヨコシマ!?」

「そ、臨海学校といえばリゾート、豪華なホテル! そこにどーして俺とルシオラだけが行けない!?」

「シロちゃん達だって一緒に留守番……そういえばシロちゃん達は? 朝から見ないけど」

「あいつらは己の欲望を抑えられなかったのさ……」

 横島はそう言うとふっと笑った。

「へ?」

「どーせ動物形態になっておキヌちゃんの鞄の中にでも入り込んだんだろ、
 美神さんにばれてるなんて知らずにね。
 ま、人狼、妖狐と言えどまだまだ子供……考えが浅はかよのう……
 行く時に姿を見せなきゃ一発でばれるってのによ」

「……けど私達も確か美神さんの車に荷物を運んだ後美神さんは多分姿は見てないと思うわよ?」

 と言うよりも荷物をルシオラと一緒に運んだ後横島はルシオラと一緒に、一度自宅へ文殊を用いて移転した。

「そ、つまり美神さんは俺達二人があのトランクケースの中に入っていると思い込んでいるわけだ!!」

「あの中に二人で……」

「しか〜し! 俺は今までの俺ではない! まず美神さんは……ってルシオラ? お〜い!!」

 横島はそう言うとなにやら宙を向いてブツブツ言っているルシオラの目のまで手をひらひらさせた。
 どうやらルシオラは二人で入ったトランクケースの事を色々と妄想しているようだ。
 まあ考えてみればかなりの密着率である。
 ルシオラの妄想(トリップ)は17分続いた。




「おまえが悪いんでござるぞっ!! 鞄にもぐりこめば楽ちんだなんつって……!!」

「最初についていこうって言いだしたのはあんたでしょ!?」

 シロとタマモはもぐりこんでいた鞄から頭を出し動物形態でそう罵り合った。
 二人はしばらく罵り合った後揃って人間形態となり、砂浜へ出た。

「……初めて見たけど……海ってこんなでっかいの!?」

「これが全部水でござるか……!?」

 二人はぼーぜんとしながら初めて見る海の感想を述べた。
 その後二人はせっかくだからと海へ入ろうとしたが、波打ち際で波に足を取られ、

「わああっ!? バ、バランスが―――!?」

「何これ―――っ!? しょっぱい―――ッ!!」

 二人して盛大に転んだ。

「……おまえら何やってんだ?」

「クスクス」

 そんな二人をどこからともなく現れた水着姿の横島とルシオラが笑いながら見ていた。

「え、先生!?」

「あんた達美神に海に放り投げられたはずじゃ……」

「ちっちっち」

 横島はそういいながら人差し指を振った。

「ここへ来るのに荷物に紛れるなんてもう古い手さ!!
 文殊を使えば場所を特定できるから後から移転すればそれで事がすむのだよッ!!」

 横島はそう胸を張って言った。

「この事をヨコシマから聞いた時はシロちゃん達はもういなかったの……ゴメンね?」

「いや、それは私達の自業自得よ」

「そうでござるよルシオラどの! ルシオラどのが気にする必要は無いでござるよっ!!」

「そー言えばおキヌちゃんたちはっ!?
 海岸をうめつくす水着の女子高生!! どこへ行ったあああ―――ッ!?」

「……来ないみたいでござるよ。
 プリチーな拙者がいるからそれでいいでござろう?」

「海で泳がん臨海学校がどこにあるッ!! これでは能力をフルに使ってせっかくここに来た……」

「ズバンッ!!」

 横島が全て言い切る前にルシオラは横島にハリセンの一撃を加えた。

「まったく……ちゃんと私というものがありながら……」

「まあ自業自得ね」

「先生〜〜!!」

 タマモはその様子を見て冷静にそう評した。
 シロが横島に駆け寄るとルシオラはため息を付いて海を見た。

「……あら?」

「どうしたの?」

 タマモが聞くとルシオラは海を指差した。
 水平線の向こうからザザザザザ―――と何かが迫ってきた。

「な……なんだ!? 津波か!?」

「!!」

「ちがう!! あれは―――」

 それはまさに歴史的瞬間……のはずだった。
 それまでバラバラにしか上陸してこなかった霊たちが、一斉に反攻に出たのである。
 しかし彼らは間が悪かった……なぜなら―――

「シロ、タマモ! おまえらは美神さんたちにこの事を連絡してくれ!」

「了解!」

「わ、わかっただござるが……先生達だけで大丈夫でござるか?」

「ああ、こっちにはルシオラがいる! それに俺もサポートするしな!」

「そうね……シロ、行くわよ!」

「了解でござる!!」

 なぜならGSのほうにはルシオラが地究号と共にいたからである。
 シロとタマモは美神たちが泊まっているホテルへ急いだ。
 横島はシロたちを見送ると自分の得意技、『ハンズ・オブ・グローリー』を展開し、その手の甲の部分に双曲文殊を2個組み込んだ。

「よっしゃ、行くぞ! この俺の新必殺技!!
 もはや掴むのは栄光ではなくGS界の皇帝への道、『ハンズ・オブ・エンペラー』ッ!!」

 横島がそう言うと双曲文殊のうち一つに『増強』の文字が浮かび上がった。

「そんじゃいくぜ!! 皇帝の命令(オーダー・オブ・エンペラー)!!」

 横島は最近覚えた英語を言ったが、ルシオラに後で文字が抜けている事を注意された。

「我等を脅かす者は滅びよッ!!」

 横島がそう言うと双曲文殊の二つ目に『拡散』の文字が浮かび上がり、
 『ハンズ・オブ・エンペラー』は伸びながら拡散していき、
 その拡散していった霊力一本一本が鋭い槍となり陸に上がろうとする霊を一気に突いていった。
 その頃ルシオラは、懐から地究号を取り出し、大きくした後中へ入っていった。

「ふっふっふ、こんな事もあろうかと用意しておいたものがたくさんあるのよね♪」

 ルシオラはそう言うとなにやら大きな装置を引っ張り出してきた。
 ルシオラはその装置を起動すると、装置につながったパイプを装置の上に置いてあった銃につけ、
 その銃の引き金をおもむろに引いた。
 すると銃口から霊力の塊が放出され、それが横島が叩き落とし損ねた悪霊と接触、その悪霊は消滅した。

 ルシオラは銃を2丁抱えて横島の援護に徹し、
 押し寄せた悪霊を1匹たりとも陸へ上がらせることはなかった。




「……ふう、終わった……かな?」

「……いいえ! まだくるわ!」

 ルシオラはそう言うと今度は車輪付きの大砲を引っ張り出した。
 横島はルシオラを手伝い、大砲にルシオラから渡された弾を込めた。

「うお! 今度は怪魚!?」

「……ヨコシマ、あれの口の中!」

「え?」

 ヨコシマが怪魚の口を用句見ると、その中には舟幽霊が多数入っていた。

「お、おい!! どうするんだ!? さすがに俺たちでもあの大群は捌けんぞ!?」

「大丈夫、任せてッ!!」

 ルシオラはそう言うとにっこり笑い、大砲についている発射ボタンを押した。

「ポチッとな♪」

「いや、あんな大群にこれいっぱ……ええ!?」

 横島は自分の目を疑った。
 ルシオラが撃った砲弾は弧を描きながら怪魚の群れの上空で爆発、
 数秒後その下で巨大な霊力の塊が発生した。
 その霊力の塊は海面に接し半円状となって広がり、
 その塊に触れた怪魚はもちろん、その周りにいた怪魚を吹き飛ばし、
 中にいた舟幽霊はあるものは吹き飛ばされ、あるものは仲間と一緒に消滅した。

「はい、ありがと。
 それでは第二射を発射、ポチッな♪」

 ルシオラはほうけている横島をよそにハニワ兵に用意させた第2射を発射し、
 今度は怪魚の群れの目の前で大きな霊力の塊を作った。
 その2発の砲弾による突風は大きかったが爆発音は普通の打ち上げ花火程度だった。
 横島とルシオラは地究号の陰に隠れてその衝撃波をやり過ごすと、海岸を見渡した。
 怪魚のおよそ半分がその姿を消し、舟幽霊が海の上を右往左往しながらも陸を目指していた。

「ルシオラ! さっきのをもう一発!!」

「ごめんヨコシマ、あれは2発しか用意できなかったの!!」

「まじっすか!?
 ……しゃあない、男横島、腹くくって全部相手してやら―――ッ!!」

 横島がそういって手を振り上げると迫ってきた舟幽霊の内3割が、
 横から飛んできた霊体ボウガンでしとめられた。

「霊体ボウガン班は両翼に展開!! どんどん撃つワケ!!」

「結界工作班を援護するのよッ!!」

「先生〜〜〜!!」

 横島は片腕を挙げたままあっけに取られていると、
 横からシロが尻尾を千切れんばかりに振りながら近づいてきた。

「おうシロ! タマモも、ご苦労さん」

「先生さっきの何でござる!?」

「いや、俺にもさっぱり……」

「そういえばルシオラさんは?」

 タマモがそう言ってあたりを見渡すと、
 美神が周りを鼓舞しつつ出来上がった結界を前に戦闘体制を整えていた。

「多分あの中でまたなんか引っ張り出してんだと思う」

 横島はそう言うと結界の奥にいる地究号を指差した。
 タマモはそれに近寄って開いている扉から中を覗くと、
 ルシオラがハニワ兵と共にいくつも連なった銃身が上を向いているものを引っ張り出していた。

 戦局はGS側がやや有利な展開で事は運んでいる。
 妖怪、幽霊達はコマンド部隊と称しメロウという人魚の一種を空高く射出、
 GSを攪乱しようとしたが、その部隊の3割は地究号からルシオラが引っ張り出した高射砲で、
 さらに4割は遊撃人員となったタマモやシロの手で葬られた。
 さらに美神が地究号に目をつけ、六女の学生を使ってどんどん試作兵器を運ばせて使わせた事により、
 妖怪、幽霊達はさらに不利な戦局となった。
 GSに有利ではあるがお互いに決定打にかけたまま、時間は刻々と過ぎていった。

「おキヌちゃん!? 横島クンは!?」

「それが結界を張ってちょっとしてから姿が見えないんです!!」

「こんの忙しい時に……」

 美神は決定打を与えるべくその駒を捜していたが、

「ふっふっふ……姿を隠せば誰にも邪魔はされまい!!
 水着―――ッ!! 女子高生の水着―――ッ!! しかもこの混乱で生写真撮り放題ッ!!
 真実を記録し、後世に伝えねばッ!!」

 それを行う駒は己の身を隠し自分の趣味をひた走っていた。

「くう、こうなったら……ルシオラッ!!」

「美神さんどうしました!?」

「あんたんとこに魚雷ない? 霊格が高い奴を探知できる奴ならなおいいんだけど……」

「ええと……」

 ルシオラはそう言うと懐から開発リストを取り出した。

「あ、あります!」

「それちょっと貸してくんない?」

「ちょっと待ってください! …………美神さん、直接行かなくてもこれで打ち上げれば……」

「ナイスッ!! それじゃさっさと用意しちゃいましょッ!!」

 ルシオラと美神はそう言うと地究号の中に入っていった。




「くう……ちょっとこれは辛いワケ……」

「あ〜〜ん、きりがないわ〜〜〜〜!!」

 ルシオラから借り出された兵器の活躍もありGS側は善戦していたが、
 それでも相手は組織的に数で攻めていた。

「美神はいったいどこにいるワケ!? この忙しい時に……」

 エミはそういってあたりを見渡すと数人が力を合わせて何かを運んでいた。

「よ〜〜し、この辺でいいわね……それじゃ発射!」

 美神はそう言うと運んできた小型のロケットの発射台のボタンを押し、ロケットを発射した。
 そのロケットはいったん海上を上昇し失速、そのまま急降下して海へ入った。
 美神とルシオラが見守る中、しばらくして会場の奥で水柱が立った。
 この一撃により、固まって指揮をしていた霊格の高い妖怪は吹き飛んだ。

「よっしゃ―――ッ!!」

 美神は水柱を見てそう言いガッツポウズを決めた。
 統率を書いた例たちは夜明けまでにはほぼ一掃された。
 数々の試作兵器が戦局を支え、そして決定打を決めた。
 こーして霊による史上最大の上陸作戦は阻止されたのだった。
 その頃その功労者達は……

「よ〜こ〜し〜ま〜ク〜ン!? いったいあんたはどこで何をやってたのかな〜?」

「え? いや、おれは、その……」

「きちっと全部白状してもらうわよ、ヨコシマ!?」

「そ、そんな〜……」

 横島がそういうと美神とルシオラの手によりずるずると引きずられていった。
 ……なお写真のネガは文殊である場所へと転送していた。




(あとがき)
作者>さて、やってきました第16話!! ルシオラ>そういうでだし、毎回やってるけど飽きないの? 横島>…… 作者>うん ルシオラ>はあ…… 横島>…… 作者>横島君? 横島>…… ルシオラ>あ、ヨコシマは今ちょっと話しかけても無駄よ? 作者>いったい何をやったんだか…… それでは次の話で……なお次は時間がかかりそうなので今年中に出来るかどうか…… ルシオラ>そんなに時間がかかるの? 作者>まあ色々とあるんで……それではまた!

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