「……」

「……」

「……」

「……う〜」

「……」

「だあー!!、やっぱ駄目だ!!」
「ヨコシマ?」

 横島が本を閉じて机にぐてっとつぶれるとルシオラが本から顔をあげた。





 ゴーストスイーパー美神 GOS

作:ガイギス

第19話






 ここはケリポット図書館の中央にある長い机が整然と並んでいる場所、
 そこに横島とルシオラが対面で座り、それぞれ本を読んでいた。

「やっぱり活字ばっかの本は俺には無理があるとです。
 といっても絵ばっかの絵本でもダメだけどな」

「クス、ゴメンね? 私はもうちょっとこの世界の『魔法』について知りたいの」

「いや、それは全然構わねえけど…」

「ま、漫画なんて日本独特の文化だからな…この世界でお目にかかるって事はないだろ」

 佑輔が2〜3冊本を抱えながら奥の通路より現れた。

「あ、ども…」

「そういえば俺達が奥に行く時なんか騒いでたけど…なんかあったのか?」

「えっと、それは…」

「クス」

 佑輔の質問に横島は目を背け、ルシオラはクスっと笑った。

「それは?」

「それは…」

「ここの館長さんからナンパされて、その時ヨコシマがヤキモチを妬いて……」

「だ〜!! それはいいだろ、もう!」

「クスクス」

「あっはっは」

 横島がそう言って机に伏せて耳をふさぐとルシオラと佑輔はそんな横島を笑った。

「あれ?いったい何やってるの?」

 佑輔たちが笑っているとそこへ蒼いどんぐり目、
 左右で束ねた髪、まだ小学校に通っているぐらいの少女が近づいてきた。

「え〜と、君は?」

「私はリーフ・エスペランサ、リーフって呼んでね?」

「こんにちわリーフちゃん、俺は横島忠夫」

「私はルシオラ、よろしくね」

「俺は長田佑輔、呼び名はご自由に」

「ああ、そういえば今日新しく会員になってくれてレクト君がそのカップルに手を出したって、
 ヒャッカちゃんが嘆いていたな〜。」

「レクト君? ヒャッカちゃん? ……誰?」

「レクト君はここの館長だよ」

「ヒャッカちゃんってのは…」

「その大世話係…だそうです」

 ルシオラが横島の説明をさえぎって冷静にそう言った。

「何かあったのか?」

「いや〜、なんでもないっす」

「あ〜、その時カップルの男の人がレクト君と同じように、
 ヒャッカちゃんにナンパまがいな事をしたってテレサちゃん言ってたよ?」

「いや、俺はただ純粋に…いて!!」

 横島が弁明するようにあたふたと言おうとするが、ルシオラに足を踏まれた。

「ル、ルシオラ〜」

「ぷん」

 ルシオラは足を踏みつけたまま横を向いた。

「あれ〜?さっきまで普通にいい雰囲気だったのに、リーフ余計な事しちゃった?」

「ま、普段は物凄く仲いいからたまにはこういう風になるのもいいんでない?」

「う〜ん…リーフ子供だから良く解んない」

「ま、好きな人がいれば解る様になるだろうよ」

「好きな人ならいるよ〜?」

「へ〜」

「レクト君でしょ? ヒャッカちゃんでしょ? コンラッドにあ、テレサちゃん…それとね〜」

「いやもう結構…どうやらまだ子供だから早かったみたいだね」

「む〜…早くレクト君、私を大人にしてくれないかな〜?」

「「ぶ〜〜!!」」

「それじゃ、ごゆっくり〜」

 リーフの呟きに佑輔と横島が吹いてルシオラが驚いて本から顔を上げているに構わず、
 リーフはそういって手を振るとすたすたとその場を後にした。

「あれ? どうしたんですか?」

「え? ああ…」

「なんでもないっす…な?」

「う、うん…」

 しばらくして零が3人を見つけたとき、3人ともその場で固まっていた。




「おう! …あれ? みんなどうしたんだ?」

「? …どうしました?」

 日も暮れてきたので4人は図書館を出ようとカウンターまでもどってくると、
 カウンターに座っていたレクトが4人に声をかけた。
 4人はそっちのほうを向いたが、そのうち3人が何かまるで珍獣を見るような目で見ていた。

「どうしたんですか?」

「いや…ねえ?」

「俺でもちゃんとそこらへんの分別はつけるってのに…」

「ヨコシマ以上の人っているのね…」

「へ?」

「いやいや、こちらの事で…」

 佑輔がそう言うと零とレクトは取りあえず聞かなかったことにしたようだ。

「それじゃあ今日はこれで」

「有難うございました、またのご利用をお待ちしています」

 カウンターの犬耳少女<後にテレサと言う名前が解り横島はその時複雑な顔をした>がそう言ってお辞儀をした。
 横島たちはそれに手を振って答えつつその日は家へと真っ直ぐ帰った。




「なあ、俺は取りあえずもう一つの図書館に行ってみたいんだが…」

 翌朝家を出かける時横島はこういった。
 どうやらケリポットの方にこれといって彼の気を引く本は見つからなかった様だ。

「え?私はまだ昨日の図書館で色々調べたいんだけど…」

 それに比べルシオラは幾つか本の目星をつけて来たようだ。

「ふ〜ん…零、お前はどうするんだ?」

「私はここの世界の昔の事をちょっと…」

「了解、それじゃ俺が横島を案内すっから、後はよろしくな?」

「はい」

 零がそういって頷くと佑輔はそんな零の頭をそっと撫でた。
 横島たちは二手に分かれ、それぞれの図書館へと向かったが、
 午後には横島達男組みはケリポットに戻ってきた事を追記しておく。




「…で? 横島君はあんときのせいで向こう一ヶ月近く休み?
 んで? ルシオラがそれに付きっ切りで看病? ふざけんじゃないわよ!」

「ふぜけてなんかいなよ、わたしゃ言われた事をそのまま伝えたに過ぎないからね〜」

 ここは美神の事務所、回りはあちこち散らかっていておキヌが一生懸命片付けている。
 ここにメドーサが現れ、美神がメドーサの意見も聞かずに攻撃、
 メドーサはその全てを避けたが、避けた先には本棚やら椅子やらがあり、結果部屋はぼろぼろになった。
 そこで漸く美神は冷静になり、取りあえずメドーサの用件を聞いたのである。

「それで横島さんは大丈夫なんですか?」

「ああ、こっちが呆れるほど健康でね、私達が手を下さなくても、
 もしかしたら霊能力をちょっと失うだけで通常生活してたかもしれないんだそうだ」

 メドーサの意見を聞き、掃除の手を止めておキヌは安堵のため息を付いた。
 美神はその意見に眉を近づけたが、とくにそれには何も言わないようだ。

「で? もちろんこれとかそれとかの費用はそっちが払ってくれるのよね?」

 美神はそう言うと切り裂かれた後が目立つ本棚や椅子を指差した。

「それこそふざけるんじゃないって感じだな、お前が自分でやったんだろう?
 自分でやった事は自分で責任を取れって親に教えてもらわなかったのかい?」

「………教えてもらったような教えてもらわなかったような?」

「いや、私に聞かれても…」

「アハハハ…」

 おキヌの乾いた笑い声が事務所にこだました。
 その時、ちょうど隣のビルで仕事をしていた美智恵はくしゃみをして西条に心配をかけていた。




「ここがこうなって…それであれが…」

「ふむふむ……だからこうなるのね…」

 美女二人は、この世界を訪れてから毎日ケリポット図書館に通いつめた。
 そして興味深い本などを借りてはそれを自作のノートに写したりしていた。
 佑輔はそれを最初手伝っていたが、横島はそれとは全然無関係に位置する高校生なので、自然と街に繰り出している。
 もちろんルシオラの作った 『通信兵鬼』 を持たせているため、ナンパなどはできない。
 と言うか偶にナンパまがいな事をして後でルシオラに色々な事をされている。

「そういえばここのお金って誰が管理しているの?」

「それはあの人が…」

「気になってたんだけどあの長田って人いったい何をやっているの?」

「とりあえず会社を経営しているみたいな事は聞いた事あるけど…詳しい事は何も…」

「会社…まああんな風にお金をバンバン使っているんなら大企業の社長とかでしょうけど…」

「それと多分メドーサも関係があると思う」

「え? …ああ、そういえばヨコシマがメドーサさんって長く人間界にいたって聞いた事が…」

「人間界では何かする時にお金が必要…隠し財宝でも使ったのかな?」

「…そう言えば私達もそうやってお金を作った事が…」

 ルシオラはどこか懐かしそうな顔でそう言った。
 しかし次の瞬間、何か真剣な顔になり、次に鬼気迫る顔でその場を後にした。

「???」

 零はその様子に首を傾げていたが、その3時間後ルシオラによるお説教を食らった横島がいまだに少し怒っているルシオラと共に帰って来た。

「…何をしたの?」

「いや、ちょっとここら辺でいいレストランがないかなって通りかかった人に話しかけたんだけど」

「その人かなり美人でスタイルも私なんかよりもよかったわよね〜?」

「いやだから! 俺は純粋に訊きたかっただけで!!」

「ふんだ」

 ルシオラはそういってそっぽを向くと横島はあわあわとルシオラの機嫌とろうとした。

「…痴話喧嘩?」

 その様子を零は首をかしげながらそう言った。
 なお途中で置いてきぼりを食らった佑輔が帰ってきたのは夜遅くでなぜか少しぼろぼろになっていた。
 その姿を見たとき横島はぽんと手を打ち、零は佑輔へ駆け出し、ルシオラは冷や汗をかきながら乾いた笑いをしていた。
 どうやらルシオラが出会いがしらに一撃放ち、その余波でどこかへ吹っ飛んだようだ。
 結局この日より、4人全員でケリポットの図書館に行くほうが被害が少ないと佑輔が主張し、それから半年は横島を無理やりつれて、色々な歴史や魔法などの知識を深めていった。
 なお横島を引っ張っていたのはルシオラだった事を追記しておく。




「もしもし? ああそうだよ……どこだって?」

「どうしました? メド」

 横島たちが装置に入って半月が過ぎ、9月になって間もない頃、一本の電話がメドーサ達にかかった。

「ちょっと待って…え?…ああ、今はちょっと出かけてるよ……んなこと言われてもねえ…後半月は帰ってこないよ?
 …そうかい…解った、伝えとくよ」

 メドーサはそう言うと電話の受話器を置いた。

「何でもあの魔王の曽祖父だかが連絡を会社に入れたらしくてね」

「曽祖父…佑輔様にいましたっけ?」

「結構前に事故で死んだって聞かされてたけどねえ、家族全員…なんでも葬式の帰りに」

「お名前はなんて言うんです?」

「それがあいにくはっきり聞こえなかったらしくてね、どっかの貴族らしいんだけど…」

「佑輔様に貴族? どこのかわかりますか?」

「さあ? 取り合えずドイツ語だったそうだよ」

「ヨーロッパですか…」

「あの魔王との相性は悪いほうだと思ったんだがねえ?」

「零様ならともかく…」

「いや、古い天使は信仰の対象から外されてるんじゃないのかい?」

 メドーサがそう言うとヴォルツはなるほどと手をポンの打った。




(あとがき)
作者>さあやってき…
メドーサ>これでおわりかい?
作者>はい…私ではこれで限界です。
メドーサ>まったく、下手にほかの作品に手を出すからこうなるんだよ?
作者>ですがこの作品は後々ひび………かせる予定です。
メドーサ>それすらかなり怪しいねえ?
作者>う…
ヴォルツ>さて、次は?
作者>取り合えず横島達は元の世界に戻します。
メドーサ>で?
作者>取り合えず渡しこのごろ忙しくなってきましたので次はいつになるか不明です
メドーサ>だからってサボるんじゃないよ?<さす叉を作者に突きつける
作者>サーイエッサー!!


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