登山の目標は山頂と決まっている。
 しかし、人生の面白さはその山頂にはなく、かえって逆境の、山の中腹にある。

by 吉○英○




 ゴーストスイーパー美神 GOS

作:ガイギス

第21話





「ふわ〜〜〜………良く寝た」

「ふふふ、タダオおはよ♪」

 横島が二人一緒のベットから起き上がるとその前にいるルシオラがそう言って微笑んだ。
 ルシオラは横島と一緒に学校に行くようになってから二人分のお弁当を作る為早く起きている。
 …ただその為だけと言うには早く、横島の起きる2〜3時間前である。

「おはよルシオラ…毎回の様に訊くがどうしたんだ?」

「うふふ♪ なんでもない」

 ルシオラは嬉しそうにそう言うとすばやくその場を後にした。
 はじめにこれをやった時、横島がさまざまな手を使い(全て健全な手)互い息を切らせながら壮絶なバトルが勃発した。
 そのせいでその日学校を遅刻する羽目になったからである。

「う〜ん………まいいか」

 横島はそう言うともう一度背伸びをして、ルシオラが待つリビングルームへ向かった。

「お、今日は和食か!?」

「うん」

 その日の朝食はごはんに味噌汁、それに豆腐に肉じゃがだった。

「肉じゃがとは久しぶりだな」

「うん…昔みたいに甘すぎる訳じゃなかったら良いんだけど」

 ルシオラが横島と共同生活していた初期に作った時、最初はレシピと睨めっこしながらだったが、味付けの時自分の味覚に合わせた為、横島が一口食べた後固まった。
 横島はしばらくした後再開したが、その反応でルシオラの不信を買うには十分だった。

「………うん! ルシオラの料理の腕も上がったんだな〜」

 横島は肉じゃがを一口食べて味の評価をした。

「ええ♪ そりゃ自分一人の力じゃなけど…」

「まあそりゃ仕方ねえよ、魔族に一人で人間の食べ物作れってのも…」

 横島はそういいながら一番最初のパピリオから受けた(与えられた?)物を思い出しながら言った。
 ルシオラはそれに苦笑しながら自分も一口肉ジャガに手をつけた…しかし少し顔を曇らせるとそこに砂糖を加え始めた。

「出来れば味覚も普通の人と同じなら良かったんだけど…」

 ルシオラは普段料理の試食はしない。
 ルシオラの味覚に合わせるとどの料理も必要以上に異常に甘くなるからである。

「長田さんの所にでも行って頼んでみる?」

「それがこっちからは殆ど接触できないの………」

「え? けど俺の時は?」

「あの時はたまたまビックイーターを見つけて………後魔力の残滓が残ってたから」

「今はないの?」

「うん…あの後移動したのか全然見当たらないの」

 ルシオラがそう言うと横島はふ〜んと言いながら何気なく時計を見た。
 ルシオラが早く起きたかいもありまだ出発するには時間があった。




 さて、皆さんは高校三年生の秋と言えば何が浮かぶだろう?
 高校最後の文化祭や運動会、修学旅行という人もいるだろう。
 来るべき進路と言う試練を前に一時の休暇と3年間一緒に過ごした仲間との最後の騒ぎ会いのイベントである。

「しかし…」

 横島達の学校は文化祭の準備に活気付いていた。

「タダオ?」

「これはどうかと思うぞ?」

 今現在横島の、いや横島と一緒にいるルシオラの元へ準備の手が空いた者がひっきりなしにルシオラに文化祭当日一緒に行動しないかと誘っていた。
 しかもその殆どは他のクラスで男女入れ混じっていたとすれば横島も強くいえない。
 …とは言っても男が来た時は思いっきりジャマしているのだが………

「ま、それも青春よ」

 横島の呟きに愛子が苦笑しながら答えた。

「しかしな? ルシオラは当然俺が案内するつもりだし、俺はルシオラと離れる時間など作らないんだぞ?」

「そんなの他のクラスの人に解る訳ないじゃない」

「と言うかなんでこうもルシオラがもてるんだ?」

「そりゃ、横島さんの彼女だからですじゃあ」

 タイガーがそう答えると横島はタイガーをにらみつけた。

「そりゃどういう意味だ?」

「横島さんが落とせる女子じゃけ、もてない男子が『自分も横島よりかは!!』と思ってるのが多い筈ですじゃあ」

「まあそれは普段の二人を見て無いから思えるんでしょうけど…げんに内のクラスの男子は諦めてるみたいだし…」

 タイガーの答えを引き継ぎピートが言った。

「女子の方はやっぱりあれよね? どうやって横島君を落とせたかとか、夫婦生活ってどう………」

「ぶ、夫婦生活ってなんだよ!? 夫婦生活って!?」

 愛子の答えに横島は噴出し愛子にそう言った。

「あら? この学校の女子はもう二人の事『高校生夫婦』って事で決定してるのよ?」

「決定ってなんだよ!!」

「まあ二人同じ部屋に同居してますし…」

「普段の行動はカップルと言うより若夫婦と言った感じですじゃあ」

「わ、若夫婦って…ルシオラ?」

 横島は顔を赤くしながらルシオラに反論を期待したが何も言ってこないのでルシオラのほうを向いた。

「そんな、タダオと私が夫婦………ポ♪」

 どうやらルシオラはその『夫婦』と言う単語に心踊りその単語からさまざまな事を連想し、萌えている様だ。

「将来の結婚に胸躍らせる…青春よね〜」

「いや、まあ確実に訪れるけど…って、そうじゃない!! お〜い戻って来いルシオラ〜〜!!」

 横島はルシオラを揺するが、ルシオラは一向に妄想の世界から帰ってこなかった。
 横島に影響されたのか今では横島以上に妄想力があるルシオラであった。
 学校、そこは数多くの少年少女が己の将来へ、夢へ向けて日々努力する学び舎である。

「う〜む…」

「どうしたんですじゃあ? そんな珍しく真剣な顔で?」

「いや、結構難しいんだとおもってな………」

 横島はそう言いながら手元にある分厚い本を眺めていた。
 話は、数日前にさかのぼる。

「そう言えば横島さん、今年で卒業ですよね?」

 その日、この季節では珍しく依頼が来なく、事務所のメンバーがだべっているとおキヌが突然そう訊いた。

「おう、取り合えず赤点は免れているから問題なく卒業できるよ?」

「じゃあその後どうするんですか?」

 おキヌのこの発言に一番敏感に反応したのはやはりと言うか美神であった。

「う〜ん…どうすっかな?」

 まあ反応しても言葉が出せるかどうかは別問題であるが………
 横島はそう言いながらルシオラのほうを見た。
 ルシオラは横島の顔を見ながら小首をかしげていた。

「独立…ってのも手だよな〜」

「「「え!?」」」

 横島が何気なくそう言うとおキヌ、シロ、美神が驚いた様に声を上げた。

「ふ〜ん、私はてっきりここに残るもんだと思ってたけど」

 そんな中唯一反応を見せなかったタマモが、おキヌたちの気持ちを代弁した。

「いや、まあ俺も漠然とそう思ってたんだけどな? けどそれってなんか男らしくないと言うか…」

 横島はそう言うと恥ずかしそうに頭をかいた。

「やっぱ男だったら一国の主とか…そういうの目指すべきだろう?」

「それで独立?」

「だってここは美神さんの城じゃねえか」

「ま、確かにね」

 タマモはそう言うともう満足と言うのかそれ以上は何も言わなかった。

「ルシオラはどう思う?」

「う〜ん…私はタダオについていくだけよ?」

 ルシオラがそう言うと横島は感動したようにルシオラに抱きついた。

「きゃ!」

「うおおおおお!!、やっぱお前が俺の彼女でよかった!!」

 ルシオラははじめ驚いたが横島の頭をよしよしと撫でていた。
 その日はそれで終わったが、その話を西条が聞きつけ、その話に美智恵が便乗する形で横島に色々アドバイスをした。
 自分の娘ががめつい事に相当苦しんでいたのか、または横島達の事で後ろめたかったのか、取り合えず横島が一人前のGSになる様裏で色々動いていた。

「で? 結局独立するんですか?」

「とりあえず高校を卒業したら〜、て言う方向になってるんだわ、これが…」

 そのため横島はいろいろな経営手段や、最低限のGSの知識を勉強中である。

「ふ〜ん…ね? そういえば事務所を構えるって話だけど…助手は入れないの?」

「助手…ね〜、取り合えず俺とルシオラの二人でやりたいんだが…」

「…まさに夫婦経営ですじゃあ」

「う…ま、まあな」

「いや、そこは認めるんですか?」

 ピートがそう聞くと横島は頭をかきながら、

「取り合えず俺が卒業したらすぐ結婚するって運びになっちまって…」

「え? それじゃあ独立のほうは?」

「取り合えずそれまでに色々準備して四月か五月に始める方向で…」

「あ、だから今からなれない勉強してるのね?」

 愛子がそう言うと横島はおいおいと突っ込んだ。
 なおこの間ルシオラはずっと妄想に浸っていて、そこだけ桃色の空間が出来上がっていた。




「あ、いたいた…叙霊委員のみんな、ちょっと来て?」

 横島達のクラスの授業が終わって少しして、女の先生がそう言った。
 叙霊委員とは学校と言う多くの人間が集まる場所に必ずと言って良いほどある霊害を排除する専門の委員会である。

「なんかあったんすか?」

「美術準備室に何かへんな物音がするのよ」

「暮井先生が何かやったのでは?」

「もう帰っていらっしゃった様でご自宅に電話した時は『知らない』と言ってガチャンと切れたの」

「あ〜…なるほど」

 暮井先生こと、暮井緑…彼女は現役教師かつ画家である。
 厄珍の経営する店で謝って『ドリアン・グレイの絵の具』を購入、その際自分のドッペルゲンガーを作り出した。
 幸いその騒ぎは美神達の手で早急に収集したが、その時そのまま暮井は自分の分身を残した。
 なお性格は本物は結構自分で勝手であり、分身はどちらかと言えばおしとやかである。
 閑話休題。

「取り合えず行ってみっか?」

「そうね」

 横島たちはそう言うと荷物を置き教室を後にした。
 まず最初に5人は美術室のほうに顔を出した。

「特に………」

「…何もないわね?」

 ピートと愛子が言うようにいたってどこか変った所はなかった。
 横島達は取り合えず美術室から続く準備室への扉の前に立った。
 近づくまでは解らなかったが、準備室からはなにやら唸り声のようなものが上がっていた。




「…何かいるぞ?」

「ドッペルゲンガーの方じゃない?」

「何で唸ってるんでしょう?」

「取り合えず中に入ってみるか」

 横島はそう言うとドアノブに手をかけた。
 しばらくドアノブをガチャガチャと回そうとしていたが一向に回らなかった。

「…鍵が掛かっているわね」

「あ、いってきます!!」

 ピートは愛子がそう言うとすぐに反応した。
 まあ考えればすぐに解るようなものだが………

「よ〜し、仕切りなおしだ!!」

 横島はピートから鍵を受け取るとそう言って鍵をドアノブの鍵穴に入れた。
 鍵を回すとカチャッと音がしてドアノブが回るようになった。

「失礼しま〜す」

 横島がそういいながらドアを開けると、

「ど〜ぞ〜」

 と中から声が聞こえた。
 横島達はぎょっとしていったん立ち止まると恐る恐る中を覗いた。
 そこは右側の机の上に銅像があり、その横に色々な資料、反対側にはさまざまな絵画、像が立ち並んでいた。

「い、今声がしたよな?」

 横島がそう訊くとルシオラ達は黙って頷いた。
 しかしそこには人の姿などどこにもなかった。

「誰かいますか〜?」

「いますよ〜」

 横島が再度そう聞くと机の上の銅像が喋り出した。

「「「うわ!!」」」

「「キャ!?」」

 横島達はそれに驚いた。

「やあ皆さんこんにちわ」

「あ、愛子!! こいつは?」

「知らない!! 私も始めてみるわ!!」

「な…机妖怪である愛子さんでも知らないって…」

 愛子が知らないと言ったのでその場は混乱した。

「お、お前は誰だ?」

「おいおい、人に名を尋ねる時はまず自分から名乗るもんだろう?」

 銅像にそう言われ、取り合えず5人は自分の名前をいった。

「私はブロンズスターチュ」

「ここで何をやっているんですかいの?」

「暇なんでね、唸っていたんだ」

 銅像の発言でこいつが今回の騒動の原因であったことがわかった。

「う〜ん、それだと生徒が怖がるからやめて欲しいんだけど…」

 愛子がそう言うと銅像は考えるように首をかしげた。

「と言われても私はここから動けないぞ?」

 その銅像はそう言うと下を見た。
 そこには頭から肩までの部分しかなかった。

「…どうしよう?」

「「「「「う〜〜ん」」」」」

 ルシオラの質問に五人と一体は頭を悩ませた。

「そういえば」

 横島がそう言うとほかの人は横島を見た。

「愛子は普段どうしてるんだ?」

「わ、私?」

 愛子はそう言うと自分を指した。

「だって愛子も学校妖怪だろ? 放課後とかは何やってんだ?」

「私はだいたい放課後は皆が帰るまで教室でその後事務所に行くわ。
 と言ってもだいたい8時には部活をしている人や担任の先生も殆ど帰っちゃうんだけどね」

「へ〜」

「そういえば今まで考えていませんでしたが…」

「愛子さん…実は結構暇でしょ?」

「ええ、まあ……」

「ならちょうどいいんじゃね?」

 横島がそう言うと愛子を除く叙霊委員全員が銅像を見た。

「え、え?」

「ん?」




 文化祭当日、横島達のクラスでは異様なもので盛り上がっていた。

「それにしてもブロス?」

「なんだね? 愛子嬢」

「私達が見世物になるってどう思う?」

「これもある意味青春ではないのかね?」

「…こんな青春は嫌だわ」

 そこには銅像と愛子が『飾られて』いた。
 なおブロスとは銅像の事である。
 愛子は机の上二畳半視をはやし、その横においてある銅像と会話をしている。

「愛子さん、こっち向いて〜」

「………は〜い」

 愛子はやる気がなさそうにそう返事をした。
 横島たちのクラスは出し物を急遽変え、『学校妖怪古今東西』と言うのを立ち上げた。
 これは愛子、そしてブロスが今まであった『学校妖怪』妖怪を詳しく分析し、発表とした。
 さらにその例として愛子とブロスが中央に立ち写真やちょっとした案内をしていた。

「う〜ん…」

「ルシオラ?」

 なお、その番として午前中はピートとタイガーが、午後は横島とルシオラが教室に残っていた。

「なんかこう…」

「どうしたんだ?」

「ねえタダオ?」

「ん?」

「文化祭ってこういうものなの? なんか準備している時に想像したのと違うんだけど…」

 ルシオラはそう言うと周りを見た。
 教室には普通の生徒よりも外から来た他校の生徒や中学生、その親などが来て多数来ていた。

「まあ、あれだな! 祭りは準備してるのが一番楽しいって言うしな!」

「そうなの?」

「だって全部予想通りなんて出来ないだろ? だからいろんな想像が出来る準備段階が一番楽しいんだよ………と昔誰かが言ってた気がする」

「クスクス」

 ルシオラはそう笑うと時計を見た。

「それじゃあまた想像してようかな?」

「ん? 何をだ?」

 横島がそう首をかしげながら訊くとルシオラはまたクスリと笑って、

「タダオとの後夜祭のフォークダンス」

 と横島に耳打ちした。




(あとがき)
作者>キョロキョロ
横島>どうしたんだ?
作者>いえ…取り合えず書き上げましたので、それじゃ!?<猛然とどこかに走り去っていく
横島>一体なんだ?
ルシオラ>あれ? 作者は?
横島>今猛然とどっかに逃げてったぞ?
ルシオラ>この私から逃げられると思ってるのかしら?
横島>え?
ルシオラ>ぽっちとな♪<そう言いながらどこからか取り出したボタンを押した
作者>ギャああああああああああああああああああああああ!!!!!!!
横島>うお!?
ルシオラ>それではこれで♪ ご意見、ご感想待ってます


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