「…え?」

「あら?」

 横島とルシオラは目の前の生物らしきものに首を傾げていた。




 ゴーストスイーパー美神 GOS

作:ガイギス

第24話





「…うへ〜」

「…すごかったね?」

 横島とルシオラは佑輔にあてがわれた部屋に入るとドアを背にしてずるずるとへたり込んだ。
 まず横島達が城に入るとそこに置物のよろいがあった。
 横島がその鎧が纏っている妖気に気が付いて佑輔に訊くと佑輔は笑いながら鎧に手招きした。
 すると鎧はガシャリガシャリと音を立てて近寄ると恭しくお辞儀をした。
 それにルシオラ共々驚いていると、佑輔は鎧の頭を取って見せ、中が空洞である事を示した。
 またアデルの後ろにいた大男も人とは違う感じを受けていた。
 佑輔に聞いてみると彼はワードックの一族だそうだ。
 さらに部屋に行く途中の廊下に飾られている絵はどれもごく僅かながら妖気を放っていて、霊感のある横島やルシオラはその一つ一つに驚いたり感心したりしながら部屋に入った。

「…取り合えず荷物だしとくか?」

「ええ」

 ルシオラは頷くと懐から地究号を取り出すとその頭を部屋の絨毯へ向けた。
 するとそこに旅行用アタッシュケースが一つ忽然と現れた。
 中を横島が開けると二人分の下着を入れた着替えが数日分、さらに歯ブラシや洗剤等があった。

「取り合えず…どうする?」

「う〜ん、夕食までまだ少し時間あるし…ん?」

 ルシオラと横島がこれからどうしようかと考えていると横島が窓をみた。
 そこはバルコニーの様になっており、そこから夕日が見えるようになっていた。
 なお時刻は現地時間で午後4時ごろ、まだ日の入りには幾分早い時間帯だった。

「なあルシオラ?」

「ん?」

「これからよろしくな?」

「いきなりどうしたの?」

「いや〜、これから事務所探さなきゃいけないし多分見つけてもすぐに客が来る訳じゃないだろうからさ…」

「クス、良いのよ別に…少しくらい苦労した方が生きてるって実感が湧くものよ?」

 ルシオラがそう言うと横島は感心したように頷いた。
 二人はそのまま寄り添うようにベットに腰掛、大きな窓からの景色を日が落ちるまで眺め続けた。

「あて!?」

「痛い!?」

 …しかし風景に二人とも見とれていた為後ろから来る衝撃に対応できず、二人は頭を摩りながら後ろをみた。
 そこには髭の生えていない緑色のサンタの服を着た愛嬌のある身長3〜40センチの小人がいた。




「ん、ピコリーご苦労さん」

「いえいえ、ただいい雰囲気だったのを壊すのは忍びなかったですが…」

 ピコリーと言われた緑のサンタ服を着た小人はそう言うと横目で横島とルシオラを見た。
 二人は顔を赤くして顔を背けた。
 二人はピコリーについて佑輔に説明を求めた。

「ああ、こいつはブラウニーという屋敷妖精だ」

「妖精!?」

 横島は佑輔の言う妖精という単語に反応した。

「ど、どうしたんだ?」

「いやだって妖精って今すっごく少なくて鈴女ていうレズ妖精が言うにはあれが最後の一人だって…」

「確かに人間界の殆どの妖精は基本的に姿を現さないですが別に絶滅したとかそういう訳ではないんですよ?」

「そ、そうなのか?」

「はい、単純に人間の傍若無人な森の伐採などで妖精の適応能力を超えていたんですよね。だから殆どの妖精は保護を求めて異世界にある妖精界に向ったんですよ? まあ私達の様に信頼の置ける家に憑いたり、家の守り神的な事をしている者もいるんですよ」

「「へ〜」」

 横島とルシオラはピコリーの話に頷いた。
 なおメドーサとヴォルツはここには居なかった。
 どうやら佑輔の言っていた移動術式ラインを作るための魔方陣と装置をセットする場所を探しているようだ。
 こういうものは方角や地脈の関係上適当に作ると術式が発動ができない事もある。
 横島とルシオラ、佑輔と零が隣り合って座り、二組が向かい合い、その間にアデルが座って夕食が行われた。

「タダオ、そんな急いで食べないの!」

「いや、だってこんな豪華な夕食は早々食えないぞ?」

 横島が言うようにテーブルに並べられている夕食はこれぞ貴族! と言うような豪華絢爛な者だった。

「だからって…ほらこぼしてるよ?」

「え? お、わりい」

 なおその向かいでも佑輔がナイフとフォークを使い切れておらず零がそのフォローをする光景が目立った。
 その光景にアデルは呆れ顔、その後ろに控えている執事はもはや諦めたようにため息を付いた。

「まったく、何でそうお前らは食べ方を旨くできんのじゃ? もっと相方を見習わんかい!」

「「いや、だって日本人だし??」」

 …この時ほど佑輔と横島の意見があったことが無いほどまるで図ったかのように二人はそう言った。
 まあ横島としては男と意見が合うなどある意味不本意な事ではあるが………

「「それ、多分違うわ(います)」」

 その意見に対する女性人の突っ込みにアデルはそうじゃろうと頷いた。




「それではあまり外には出ないでくださいね? 敵意はありませんが悪戯好きな者も多くいますので…」

「了解っす、エッタちゃん。それにしてもエッタちゃん幽霊なのに偉いね?」

 横島がそう言いながらエッタと呼ばれたメイド少女の頭を撫でた。
 ルシオラはそれに軽くむくれる様に頬を膨らませたが、エッタは驚いた顔をして横島を見た。

「え? 私が幽霊って解るんですか?」

「いや、だって俺はこう見えてもGSだからな!」

「素人目には解らないでしょうけど私達からすればおまえが幽霊かどうかは解るわ。一目瞭然とは言わないけどね」

 ルシオラがそう言うとエッタは首をかしげると、

「あの、GSって…? ガーリック・ソテー?」

 と訊いた。

「ううん、聞いた事あると思うんだけど…ゴースト・スイーパー、ようは退魔士とか妖魔ハンターとかそう言うの」

「あ、ついでに私は元魔族なの、それにGSの資格も持ってないから」

 ルシオラがそう言うときょとんとエッタは首をかしげた。

「ルシオラさんからそういう気配は感じられないんですが…?」

「今は色々あってね、半魔って所ね」

「そうですか」

 エッタはそう言うともう一度首を傾げたが、気を取り直し部屋のドアの所まで来て、

「それではお二人ともお休みなさいませ、明日の朝食は6時半となっておりますのでそれまでに食堂に向ってくださいね?」

「うい〜っす」

 エッタはそう言うと頭を下げた。
 その時間帯は大抵横島はルシオラに起こされてから30分後なので力なくそう答えた。

「あ、それとその30分ぐらい前にちょっとした騒ぎが起きるかもしれませんが…ご了承ください」

 横島が答えるとエッタはそういって再び困ったような顔で頭を下げた。
 横島はそれに手を挙げる事で答えるとエッタは部屋のドアを閉めてその場を後にした。

「タダオ…どうしたの?」

「いや、こんなとこ俺はブラドーの城ぐらいしか言ったことなくて落ち着かないんだ…あっちでも一晩…ん? 一昼かな? 過ごしたけどあれは思いっきりあのアホに操られてたから…」

「そっか…」

「取り合えずメドーサたちが終えるのを待って調整の時にでも言おうぜ?」

「え?」

「いや、ほら、ルシオラの味覚」

 横島がそう言うとルシオラはにっこり笑って頷いた。
 ルシオラは横島に抱きつくとそのままベットへ横島を道連れにダイブした。

「うお!? ルシオラ?」

「うんん、何でもないの」

 ルシオラはそういいながらも嬉しそうな顔で横島の胸に顔をこすり付けた。
 なおその時普段仕舞っている頭の触角がぴょこんと出ているのはご愛嬌と言った所か。




「きギャ―――!!!」

 朝も早い6時少し前、フリューゲルトの城にうら若き女性の悲鳴とも絶叫ともつかない声が響き渡った。
 横島はその声にがばっと起きようとするが、

「うお!?」

「きゃ!」

 顔を覗き込んでいたルシオラの側頭部にぶつかりそれは叶わなかった。
 なぜ側頭部かと言えばルシオラが覗き込んだまま顔を声の発生源のほうへ向けていたからである。

「タダオ、大丈夫!?」

「お、おお…なんとか」

 横島はそういいながらルシオラに助け起こされた。
 なお横島は服をまったく着ておらず、ルシオラはもういつ外に出てもいいような服を着ていた。

「で? 一体あれはなんなんだ?」

「さあ?」

「それは私から…その前に着替えてもらえると嬉しいのですが」

 横島の疑問にルシオラは首をかしげピコリーがどこからともなく現れてそう言った。

「うお!? いつの間に?」

「はいはい、それはいいですから早く着替えてくださいね?」

 横島がまだ寝起きで少しぼうっとしているとルシオラが服装を(もちろん下着も)鞄から出して着替えやすいようにベットへ並べた。
 横島はそれを急いで着るとピコリーはため息を付いた。

「本当は身内の恥でしてあまり言いたくはないのですが…アデル様が若様を起こそうと部屋を開け、若様がその扉とその前後にブービーとラップを仕掛け…聞いての通りアデル様がそれにかかって絶叫したんです」

 ピコリーは廊下の方を見ながらそう言った。
 扉と壁をはさみその向こう側では怒ったアデルがなにやら意味不明(後から聞いたらドイツ語だそうだ)な言葉を騒ぎ立てながら、佑輔とどたどたと鬼ごっこまがいの追いかけっこをしていた。

「ねえ?」

「はい?」

 ルシオラはピコリーに、

「これってもしかして…毎回?」

 と訊くと、

「………はい」

 とピコリーはガクッと頭を垂れて答えた。
 その横では横島が乾いた笑い声を上げた。
 二人はピコリーの案内のもと、少し早いが食堂に向うとそこには零がメイドの格好で朝食の準備をしていた。

「あ、「零さんおはようございます」…」

 横島が何か言うよりも先にルシオラが挨拶を行い横島はそのルシオラに頭を握られていた。

「おはよう、二人とも」

 零はそう言うとにこやかに微笑み、その後ろをなにやら白い粉で包まれたアデルが佑輔と格闘していた。

「二人とも、朝ごはん」

 零はそう若干凄みをきかしてそう言うと佑輔はぱっと自分の席につき、その行動に目を丸くしたアデルも執事のハンスからハンカチを受け取りながら席に着いた。

「お、今日は零が作ったのか?」

「はい…」

「やっぱ朝食ってのはこうでなくちゃな〜」

 佑輔はそういいながらアデルの方へ目を向けるとアデルはぷいと顔を背けた。
 なお朝食はベーコンエッグにフレンチトースト、ポタージュにサラダが付いていた。
 また飲み物も大きな容器に牛乳が入っており、その横のコーヒーは綺麗な黒い色をしてその横にコーヒー用のミルクと砂糖が置いてあった。

「え? 今まではどうしてたんですか?」

 先ほどまで頭から血を流していた横島はけろりとした顔で佑輔にそう聞いた。

「かた〜く茹でたゆで卵に山積みになったロールパン、なんも付いてない泥みたいなコーヒーに後フルーツが生のまま容器に山積み」

「…一体どこの安ツアーですか?」

横島がそう言うとアデルはずーんと暗い顔をして下を向いた。

「え? あれ? それを作ったのって…」

「アデルだ」

 佑輔がそう言うとアデルはさらに沈み横島は何とかフォローをしようとしたが上手くできずさらに落ち込んだ。

「それじゃいただきますか」

 佑輔はそう何事も無いようにそう言うと佑輔の横に座った零に目配せをして、

「「いただきます」」

 と言った。
 横島とルシオラもそれに慌てて、

「「い、いただきます」」

 と言って食べ始めた。
 横島はフレンチトーストを口に運ぶと目を大きく見開いて、

「うわ、これ初めて食ったけど美味い!」

「本当…零さん、これの作り方教えてもらえませんか?」

 横島とルシオラはそう料理を褒め、ルシオラのお願いに笑顔で頷いた。

「零の場合は料理にはずれが存在しないからな…ん、うまいよ」

 佑輔もそれに続くようにそう言った。
 零は嬉しそうに若干頬を赤くしながら頷き、アデルも気を取り直したのか食べ始め、料理の美味さに驚いていた。
 なお夕食に続き朝食も姿を現さなかったメドーサ達は、後でそれを聞き悔しそうにしていた。

「ふい〜…あ、そうだ」

「なんじゃ?」

 全員が食べ終わった後佑輔はアデルに、

「俺は3人を街の方に案内すっから、そんな感じで後はよろしく〜」

「そう…じゃな、城ん事は業者がおるしわしが観光客の相手すれば問題ないし…」

「あ、それと多分夕食は昼と一緒で外で食うからあしからず」

「ん、了解じゃ」

 佑輔がそう言うとアデルはこっくりと頷いた。

「え? いいんすか?」

「取り合えず午前中は領内の案内、午後は町へ出るつもりだけど?」

「はあ、まあ何から何まで…」

「ま、気にすんな。取り合えず1時間後に正面玄関集合な?」

 佑輔がそう言うと、零、横島、ルシオラは頷いて答えた。




 朝靄がうっすらとけ掛かったころ佑輔が横島、ルシオラ、零をつれて広大な敷地(後から横島が訊いたら250平方キロメートルもあるのだそうだ)を歩いていた。

「にしてもここは色んな妖怪やら幽霊やらがいるんすね?」

「ただし基本的に力が弱かったり妖力が低くて化けられなかったりするのが多いけどな」

「そうみたいですね…あれ?」

 ルシオラが首をかしげながら前方から来る女性を見た。
 湖のような深いブルーの瞳、秀でた額に大理石のような透明感のある肌。
 背はスラリと高く、黒いドレスのいでたちで、スタイルは美神にも劣らないほどよかった。

「こん…「始めまして僕よこし…ああぁぁ!」」

「すみません」

 横島は小竜姫の超加速を超える速さで目の前の美人に詰め寄ったのだが、それと同じような速さでルシオラが横島を仕留めるとその美人に頭を下げた。

「ええと、続けていいのかしら?」

「ああ、何時もの事だからな…ん?」

 佑輔がそう言うと佑輔の服のすそをクイクイと零は引っ張った。

「二人とはそんなに詳しくは…」

「けどだいたいあんな感じだろ?」

 佑輔がそういうその横でルシオラが横島を折檻していた。
 零は佑輔の話に首を傾げたが否定も肯定もせずにそのままそっと佑輔に寄り添った。

「で? 取り合えずあなたはどちら様で?」

「どちら様とはまたご挨拶ね、まあいいわ。わたくしはイリーヤ・エーリッヒよ」

「取り合えず人じゃないのは解るけど…」

「残念ながら、たいして変ってなどいないの、ごくごくポピュラーで俗なものよ」

「ほう?」

「良く聞くでしょ? …ヴァンパイアなんて」

 黒いドレスを纏った美女…イリーヤがそう言うと、

「へ〜、俺の知り合いにヴァンパイアハーフがいるんすよ!」

 少し前までルシオラの手でその場に血溜りを作っていた横島が平然と話しに入ってきた。

「ヴァンパイアハーフ? もしかしてブラドーの所の?」

「あ、良く知ってるっすね? あのアホ寝ぼけヴァンパイア」

「まあね、彼はこう言ったらなんだけど人に手痛いダメージを受けてしばらく寝る事になって仲間内では結構陰口叩いてたから…まあその殆どはやっぱり人に退治されたわね」

 イリーヤはそう言うとどこか自嘲気味に笑った。

「あら? 完全に日が昇ったようね」

 そういうとどこから出したのかイリーヤは黒い日傘をぽんと広げた。
 それは繊細なフリルが付いた、貴婦人の持ち物らしい一品だった。

「ご存知だと思うけど、わたくし太陽が苦手なの。そろそろ眠るからご静粛にお願いしたいわ」

「ん、おやすみ〜」

「「あ、おやすみなさい」」

「…おやすみなさい」

 横島達がそう言うとイリーヤは少し驚いたような顔をしてその後くすりと笑いその場を立ち去った。
 なお城に行く途中アデルとなにやら言い争い(アデルが一方的に突っかかったようにも見える)をしているのが見えたが4人は特に気にしなかった。




「首都……? 首都って…これが?」

 横島たち四人は執事のハンスの運転のもと車で首都と呼ばれた場所まで運ばれた。

「なんかどこかのおとぎ話に出てきそうな光景ね」

「またはどっかのゲームとか?」

 横島とルシオラの呟きに佑輔は苦笑した。
 横島たち四人は近くのレストランで昼飯を食べた。
 なおそこにメドーサとヴォルツが偶然昼飯を食べに来ていたので皆で食べる事となった。

「にしてもマジでな〜んもないとこだな〜」

「それで? メドーサ術式の方はどうなった? ま、それは仕方ねえよ、そこは少しずつこっちから手をくわえっから」

「術式の方は取り合えず候補を幾つかには絞れたんだけどねえ…」

「どこが一番有効かは決めかねているんです」

「少しずつって何をやるの?」

「そっか…ま、焦らず頑張ってくれ。取り合えずここに支社を立てて経済発展させ、そっから自然を売り物にした観光でもと考えているんだが」

「了解、経済発展ってどうするんだい?」

「ここに自然以外で」

「とりえって…」

「ほれ、人外がいっぱいいる城があるだろ?」

「「「ああ!」」」

「……佑輔が一人二役?」

「ま、まあそうですね」

 零がそう言うとヴォルツが頭の後ろに汗をかきながらそう返した。
 横島達はしばらく報告と談笑の混ざり合った会話をした後一緒にレストランを出た。

「それじゃあたし達はまた地脈探しといくよ」

「おう、取り合えず複数作るってのも考えておいてくれ」

「了解」

「解りました」

 メドーサとヴォルツはそう言うと横島達とは反対の街のはずれのほうへ向った。
 メドーサ達と別れた横島とルシオラは、佑輔の案内のもと4人で町の中央部へ向った。
 そこは竹の子のようににょきっと生えた2本の尖塔が目印の教会があった。
 もちろんその尖塔の先には十字架が掲げられていて、建物は石作りの古いものだと一目でわかる。
 佑輔が古ぼけた木製の大きな扉を開け、横島達と共に中に入った。

「ごめんくださーい」

「やあこんにちは佑輔くん、おや、今日はお客さんも一緒だね?」

 佑輔が教会に入ってそう言うと、表扉の横にある脇へと続くドアから背の高く、
 唐巣神父と同じような服を着た一人の金髪の顔が整った男がヘラへラっとした笑顔で出てきた。

「今日は観光の案内がてらにちょっとよってみましてね」

「なるほど…皆さん始めまして、私はミヒャエル・ワルダー神父。気軽にミヒャエルといってくださいね、間違っても悪だ! とか言わないように」

 ミヒャエルのあんまりと言えばあんまりな親父ギャグに横島とルシオラはその場に凍りついた。

「で…ワルダー神父、立ち話もなんだし椅子に座ってもいいですか?」

「ええどうぞ、あまり固くならないでくださいね、固いのはその椅子だけでいいっす! なんてねー!」

 ミヒャエルの連続ギャグで横島達はさらに固まった事を追記する。
 それからしばらくして自己解凍に成功した横島とルシオラは自己紹介をした。
 その過程でルシオラが魔族(正確には元が着く)だと言う事を話すとミヒャエルは笑って、

「我が教会の扉は人と仲の良い者には誰にでも開かれているからね」

 と言った。
 それに対し零は、

「現職の神父がそれでいいの?」

 と訊くとミヒャエルは、

「まあね、我々は教義上そういう者達も認めてはならない…けどローマは遥か彼方、ここはレーゲンシュヴァアンツだ」

 と言って笑った。
 その答えに横島はほっとして、

「唐巣神父の所と似てるっすね〜、けどよかったっすここでなんか起こるんじゃないかと…」

「え? 君達唐巣の事知っているのかい?」

「はい」

「そりゃあ俺達のもと雇い主の師匠っすから」

「なるほど…」

「ワルダー神父は何で知ってるんです?」

 佑輔がそう訊くとミヒャエルは、

「だからミヒャエルって言ってくれよ」

 と言ったが佑輔が、

「言いにくいので却下します」

 と言われがっくり肩を落とした。

「まあいいか、彼は私の何代か前の先輩でね、破門になった後でも数年に一度の割合だけど会っているんだよ。最近じゃヴァンパイヤハーフの一人を弟子にしたって聞いたけど…彼ちゃんと食べてる?」

「あ〜、まあなんとかやってるみたいっすよ?」

「相変わらず依頼者から報酬は受け取らずに?」

 ミヒャエルがそう言うと横島は何か言おうとしてしばらく考えた後力なく頷いた。
 脳裏にはピートが学校の卒業間際まで睨み合っていた電気代の請求書の事が浮かんでいた。

「私に言わせれば彼以上の聖職者はそうそういないのだけど…まあそんなわけで私を含め彼に共感している者は大抵ローマから離れた所にいるな」

 ミヒャエルはそう言うとわっはっはと笑った。
 その後も唐巣を話の肴に横島達は夕食をミヒャエルと教会近くのレストランで食べながら過ごした。
 あたりは完全に暗くなり、佑輔案内のもと城に帰る途中の城へと続く橋の所で一台の高級車とすれ違った。




(あとがき)

作者>く…ここで話を終わらせる予定が

横島>へ? まだあるんすか?

作者>ああ! これからがこの話のメインイベントだ。

ルシオラ>一体何をするつもりなの?

作者>それは見てのお楽しみさ…

横島>だそうですのでこの話続きま〜す<やる気なさげに言う


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