「………あれ? ルシオラ?」

「…クス、どうしたの?」

 ルシオラが横島の寝起きの反応を見てくすくす笑った。
 なおその横には横島とルシオラ用の朝食がワゴンに乗っていた。




 ゴーストスイーパー美神 GOS

作:ガイギス

第25話





「美味い、コラ美味い!!」

 横島はルシオラと零の合作料理(byヨーロッパ風味)を競う相手もいないのに一人早食いしながらそう言った。
 その横ではルシオラが静かに朝食後のデザートとなるフルーツゼリーを食べていた。

「タダオ、慌てなくても誰も取らないよ?」

「いや、まあそうだけどよ、こんなに美味いと食が進むと言うかこれもうかっ込むしかないと言うか…」

 横島は一度食べるのをやめてルシオラにそう言うとまた朝食をかきこんだ。
 まあ作った側からすればそんなに美味しそうに食べてもらえるのなら不満はないのだが、出来る事ならもう少し味わって貰いたいとも思う。
 それにせっかく二人っきりなのだからもう少しムードとかを…とルシオラはそこまで考えて、

「ムードを食より優先するタダオ………あれ? 想像出来ない」

 と呟いた。
 なお横島はルシオラの呟きは聞こえずに朝食を食べ終え、デザートへ移行した。
 もちろん食事の味を大雑把ながらルシオラに伝える事は忘れずに。

「ふい〜、食った食った」

「クス、お粗末様」

 ルシオラはそう言うと嬉しそうに空となったお皿をワゴンの中へ入れた。

「あれ?」

「どうしたの?」

「いや、何で俺達この部屋で飯食ってんだと思ってよ」

 朝食開始から20分、出されたもの綺麗に食べてその余韻に浸った後漸く横島はその疑問が浮かんだ。
 その時ルシオラは片づけ終わった皿が入ったワゴンを廊下に出し終えた所だ。

「今日はフリューゲントのお客様が来るみたいで…私達のほうに対応できないって零さんが言ってたわ」

「ふ〜ん…」

「それと私達の調整だけど…明後日まで待ってくれだって」

「その間俺らはどうすれば?」

「う〜ん…」

 ルシオラは首を傾げたがそれに対して零から何も言われていない事を横島に伝えた。
 横島はルシオラがそれを伝えると、

「…ルシオラ」

 とルシオラを呼び自分が今座っているベットの隣をポンポン叩いた。
 ルシオラは苦笑するとそれでも横島の隣に座った。
 …なおこれ以降何があったかは皆様の想像にお任せしますが、取り合えずラブラ○フィー○ドが展開された事を追記しておく。




「…ん?」

「…あら?」

 横島とルシオラは揃ってぴくっと反応した。
 なお二人はベッドの近くにはいなかった事をここに蛇足として書いておく。

「タダオ、あなたも?」

「ああ…なんか嫌な予感がする…しかも前にもどっかで感じたような」

「道具は何が要る?」

「取り合えず文殊のストックした奴を4個でもあればいいんじゃねえ?」

「そうね」

 ルシオラはそう言うと懐から地究号を出してベットへその頭を向けた。
 暫くするとベットの上に双曲文殊が4つ現れ、横島はそれを取ると半分の二つをルシオラに渡した。
 時刻は夕方を少し過ぎたあたり、昼はメドーサとヴォルツが来て四人で外食、夕食は零がワゴンに乗せ持ってきてくれた。

「けど一体なんなのかしら?」

「それは解らん…」

 横島が全部言い切る前に建物全体が縦に揺れた。

「のわ〜〜〜!!!」

「きゃ〜〜〜!!!」

 横島とルシオラは二人して突然の地震にバランスを崩し、それでも横島は倒れるルシオラの懐に入り込み、自分が下敷きになる事でルシオラを助けた。
 ただしお約束として右手と顔で左右の胸を、左手はお尻に宛がわれていたが…

「アアン………じゃなくて! 大丈夫?」

 自分が出した声が恥ずかしいのかルシオラはぱっと素早く立つと横島を見た。

「もうちょ………イエ、ナンデモゴザイマセン」

 横島がにやけながら何か言おうとしたがルシオラが睨むと片言の日本語でそう言った。
 ルシオラはため息を付くと意識を切り替えた。

「タダオ、何か来るわ」

「え?」

 横島が疑問に思いルシオラが向いている場所、ドアのほうを見るとそこから勢いよくあちこちに傷があるフリートが現れた。

「お客様、ご無事ですか?」

「ええ…」

「一体何があったんだ?」

「それがこの城のあちこちで見慣れない魔物が暴れております。現在若様やそのお連れの方が応戦していまして…私はお二人のっとこいつ!」

 フリートが振り向くとそこには体が猫科で尻尾が蛇で頭は猛禽類で羽が蝙蝠みたないのが生えている何か失敗したようなものがいた。

「な、なんだ? キメラ?」

「こいつ! お客様にてはださせん!」

 フリーとはそう意気込むとキメラの上に乗り片手で蛇の頭を掴み、もう片方の手をキメラの顔の下に入れて喉を握ろうとした。
 しかしそれはうまくいかずキメラはフリートが乗ったまま飛ぶと天井にそのままぶつかった。
 フリートがそでれもしがみ付いているとしばらくしてキメラは急に地面に墜落、そのまま動かなくなった。

「大丈夫?」

 ルシオラが訊くとフリートはどうなったのか解らずぽかんとした顔をしていた。
 キメラが一度天井にフリートを叩きつけた時、横島は栄光の手を発動、キメラの前足二つを掴み、その隙にルシオラがキメラに麻酔を施したのだ。
 話を聞いたフリートは感心したように頷いたがすぐに何かを思い出したようにはっと顔を上げた。

「あ、そうでした。若様からお二人へ緊急の依頼があります!」

「まあこの状況ならな…で? 依頼の内容は?」

「実はこの城には礼拝堂があります、あそこは我々でも入れないほどの結界が張ってありますがその屋根は別です。そこへ今戦闘などが出来ない者が集まりつつあります。お二人はそこの防衛に当たって欲しいとの事です」

「解った」

「あなたはどうするの?」

 ルシオラがそう聞くとフリートはにかっと笑うと打ち上げ花火が放たれる音がして大男のフリートが茶色いポメラニアンになった。

「私は自分では動けない者の移動を手伝ったりそうしている者の護衛をします」

「おお…って何でそんな毛むくじゃら? 人狼の場合はマジで狼みたいだったのに…」

「彼はワードックという一族ですから…ワーウルフとは違います」

「へ〜…あれ?」

 横島は今答えた声を探して辺りを見渡すと、部屋の扉の横からブラウニーが一人出てきた。
 服は赤く、帽子がピコリーは一つのなのに対しこちらは二股に分かれていた。

「お前は?」

「お二人の案内役です」

「それでは私はこれで」

 フリートは犬のままそういうとその場を駆け出した。

「それではお二人はこちらへ」

 ブラウニーはルシオラの肩に乗りフリートとは反対の方向を指した。




 横島とルシオラは赤いサンタのような格好をした(帽子は二股に分かれているが)ブラウニーの言う道順どおりに進むと、
 フリートと戦っていた化け物に会わずに目的の礼拝堂の所までたどり着いた。

「あれ?」

「…」

 そこではメドーサが放ったらしいビックイーターが10匹礼拝堂を守るかのように佇んでいた。
 そのうちの一匹が横島達に気付くと尻尾で器用にプラカードを持ち上げた。

「…」

「なになに、『私達は裏に回ります、ここはよろしくお願いします』?」

「まあ喋れないからプラカードは解るけど…」

 ルシオラがプラカードに書かれた文字を読んでいる横で横島はビックイーター達の後ろにある多くのプラカードが積み重なっているのを見た。

「何でこんなに?」

「えっと『有事に備えいくつも用意してみました』だって」

「どっから?」

 横島が独り言のように呟くがまたしてもビックイーターの内の一匹がプラカードを上げた。

「『それは秘密です』………」

「それで私達はここを守ればいいのね?」

 ルシオラが横島の疑問をスルーしてビックイータに聞くとビックイーターは頷いた。
 さらにプラカードを2枚上げるとビックイーター全員がどこかへと移動していった。

「『それではお二人ともこちらはよろしくお願いします』」

「『なお報酬は終わった時に相談して決めましょう…なお向ってくる魔物には手加減はいりません』…ってほんとに色々用意してんな」

 横島がそういっている間にその辺りのビックイーターはすべて見えなくなった。




「ぬお! この…」

「タダオ、後ミノタウロスが2匹来たわ!」

「く、さっきからミノタウロスやらキメラやら…どっから湧いてくんだよ!?」

 横島は押す言いながらもミノタウロスの太い腕から繰り出される横なぎの一撃をしゃがんでかわし、栄光の手で人の心臓部を貫いた。

「嘘!? さらにキメラが3匹…このままじゃ対応できない!!」

「なに!? く…ルシオラ、文殊は?」

「使う暇なんて無いわ!」

 ルシオラがそう言う通り、次から次へサイクロプスやケルベロス、キメラがわんさかと修道院へ迫っていた。
 これで連携されていたら危なかったが各自ばらばらに攻撃するので横島達は何とか捌けていたのだ。
 しかしそれでも数で押されてもどうしようもなく、横島は目の前のサイクロプスを葬ると栄光の手を伸ばし修道院の屋根を掴んだ。

「ルシオラ、こっちこい!」

「え? …解ったわ!」

 横島はルシオラにそう言うと伸ばした手を縮め、屋根の上に上った。
 ルシオラはケルベロスに幻覚をかけ自分のいる位置をずらした。
 ケルベロスはそのまま幻覚を攻撃したがもちろんあたらず、その隙にルシオラは横島のいる屋根まで昇った。

「お〜い、そっちのビックイーターも修道院の周りに貼り付け、新技いくぞ!?」

 横島はそう言うとルシオラから文殊2個を受け取り栄光の手に取り込んだ。

「皇帝の光(ライト・オブ・ザ・エンペラー)!! そしてこいつで…」

 横島はそういいながらハンズ・オブ・エンペラーを屋根の下に伸ばした。
 なおその紅玉には『増幅』と『光波』の二つの文殊が組み込まれていた。

「聖域(サンクチュアリ)!!」

 さらに横島は自分が持っていた双文殊に『結界』とこめると伸ばしているハンズ・オブ・エンペラーの中にぶち込んだ。
 するとエンペラーの伸びている中ほどが膨れ上がり破裂、その光が攻撃対象でない者へと降り注いだ。
 それとは別に伸ばしたエンペラーの端は屋根の下までいくと霊気が急速に増幅され、近くの攻撃対象を上から地面に叩きのめした。
 横島はその状態のエンペラーを操り、屋根端を一周して次々と襲いくる魔物を潰していった。
 この技は大きなローラーを上から連続で広範囲に押し潰しているも等しい技なのだが、『結界』の文殊の効果で味方はその影響を受けにくくなっている。
 受け難くなっていると言う事は少し影響あるのだが、下に居るのはもはやビックイーター達だけで、
 そのビックイーターも横島の指示道理建物の壁にへばり付く様にしているので、直撃という訳でもない。
 聖域と言っておきながらその効果は魔物を護る物であるとは少し滑稽だが、神か魔かで判断しない横島ならではの名付けである。
 補足としてこの技はメドーサやハーピーといった魔族には足止め程度しか食らわないが、ここに召喚されている魔物はそれよりも格下なので問題無く潰れている。
 ルシオラは横島の技に驚き、下で起こっている惨状からは目を背けながらも、屋根に上ろうとして難を逃れたごく少数のキメラを霊波砲で打ち落としていった。




「お疲れ〜」

「あ、お疲れ様です」

「そっちは大丈夫でした?」

「ああ、って言ってもなかなか召喚場所の特定が出来なくててこずったけどな」

「そのせいでどんどん召喚されてしまいました…ですので少し心配していたのですが…」

 佑輔とヴォルツが横島達に宛がわれた部屋へ来た。
 この部屋は食堂や通路と違い魔物が入ってこなかったらしく、きちんと整頓されていた。

「それで犯人はどうなりました?」

「取り合えず捕まえて今メドーサと零が見てる…アデルももうちょっとしたら帰って来るだろうから、そしたら処分を決めるつもりだ」

「えっと、やっぱ死刑?」

「さあ、な…あの客はオレのと言うよりアデルの客だ……あいつに決めさせる」

「それよりもお二人はこちらで十分お休みになってください。明後日には移動術式も完成しますので明日はお二人でレーゲンシュヴァンツを見て回るなり、ヘリを手配させてウィーンを1日見物するか決めてください。あ、見物の場合はこちらから一人ガイドとして一緒にお供させてもらいますが…」

「え?」

「そうね、私達じゃドイツ語はおろか英語だって十分に話せないものね」

「う〜ん…だったら俺は二人で回りたいな」

「お二人だったら多分大丈夫だとは思いますが…これを渡しておきますね」

 ヴォルツはそう言うと何枚かのカードを渡した。
 そこには日本語とドイツ語が書かれていてカードの幾つかには一番上に店名が書かれており、メニューがドイツ語と日本語で書かれていた。

「これは?」

「俺がよく使用しているカードだ、あれば相手とのコミュニケーションが格段に上手くいく」

「へ〜」

 ルシオラは感心しながらカードを見ていた。

「それじゃまた明日な」

「お休みなさい」

 佑輔とヴォルツはそう言うと部屋を出て行った。




(あとがき)

作者>ま、こんなところか

ルシオラ>ずいぶん掛かったわね?

作者>仕方ないさ…しばらくコンピュータにすら触ってなかったんだからな

横島>それより次回はどうすんだ?

作者>取り合えず二人の調整とその前に少しどたばたをと…な

横島>どたばたって?

作者>気にするな…

ルシオラ>それではこれで、ご意見、ご感想とうあればどしどし送ってください。

横島>作者の励みになります

作者>二人とも俺の台詞を…

ルシオラ>それではこれで

横島>また次回お会いしましょう!

作者>いや、だから俺のせり・・・


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