交差する二つの世界

作:湖畔のスナフキン

プロローグ




 深夜、都内のある木造アパートの周囲を、黒づくめの服を着た数人の男が取り囲んでいた。
 アパートの住人に気がつかれないよう、電柱や壁の影に姿を隠している。

「時空震検知しました。ターゲットYの北東10km」

「……」

「時空震検知しました。ターゲットYの南南西1km」

「……」

「時空震検知しました。ターゲットYの北北東100m」

「……」

「時空震検知しました。ターゲットYの南南西10m」

「……」

「時空震検知しました。ターゲットYの真上です」

「霊波計はどうなっている?」


 一人の男が、手に大きなメーターの付いた器械をもっていた。
 そのメーターの中央には、心電図や地震計のような上下に波打つグラフが表示されている。
 だが男がしばらくメーターを見ていると、表示されている波形が急に途切れてしまった。

 男はしばらく様子を見ていたが、完全にグラフが動かなくなったことを確認すると、右手を広げて声を発した。

「通信鬼!」

 男の右手に背中から二つの翼を生やし、口がスピーカーのような形状をした小さな生き物が現われた。

「デルタ・ワンよりコマンダーへ。ターゲットYの霊波消失を確認しました」

「コマンダーよりデルタ・ワンへ。ターゲットYの部屋に侵入し、ターゲットYを直接調査せよ」

「了解しました」

 三人の男がアパートの入り口に集結すると、一斉に二階へと駆け上がっていった。
 そして一番突き当たりのドアへと向かう。

 そのドアには鍵がかかっていたが、やってきた三人のうちの一人が、ドアノブに向かって手のひらを近づけた。
 手を近づけたまま数秒すると、ガチャリと音がしてドアの鍵が開いた。
 男はドアノブを回すと、急いで部屋の中に侵入した。

 侵入したアパートの部屋の間取りは、1LDKであった。
 一番奥の部屋が寝室になっており、寝室の中央に敷かれた布団の上には、この家の主と思われる一人の男が横になっていた。

 侵入してきた男の一人が、首に指を当てて血管が脈を打っていることを確認した。
 軽い(いびき)をかいているところを見ると、呼吸もしているようである。

「デルタ・ワンよりコマンダーへ。ターゲットYの部屋に侵入。ターゲットYは脈拍・呼吸ともに正常です」

「コマンダーよりデルタ・ワンへ。ターゲットYの部屋から撤収し、引き続き建物の周囲を警戒せよ」

「了解しました」

 侵入した男たちは、何もせずそのまま部屋の外へと出ていった。




「状況はどうなっている、ジーク?」

 背中に羽を生やし尖った耳をもった魔族の女性が、ベレー帽をかぶった魔族の男性に話しかけた。

「予想どおりです。微弱な時空震を検出後、横島さんの霊波動が途絶えました。
 肉体的には問題ないので、魂のみが時空移動したものと思われます」

「横島さんの肉体は保護しなくていいのですか、ワルキューレ?」

 中国風の胴着を身につけた小柄な女性──こちらは魔族ではなく神族である──が、魔族の女性に尋ねた。

「霊魂が消滅しているわけではないから、すぐに生理的機能が停止することはない。
 一晩くらいは放っておいても問題ないだろう。現場の部隊には、引き続き警備をさせる」

「それでは、あとは上層部に報告するだけですね」

 神族の女性と魔族の女性は、その場にいたもう一人の人物に視線を向けた。

「ハハハ……やっぱり、私ですか?」

「疲れる仕事は、昔から男の役目だ。そうだな、小竜姫?」

「そうですね、ワルキューレ」

「ということだ。あとはよろしくな、ジーク」

 ワルキューレは魔族の情報士官である弟のジークフリートの肩を、ポンと叩いた。




「……以上の調査により、横島忠夫の魂の消失が確認されました。
 直前に微弱な時空震を検知したことより、時間移動か、または別世界へと、
 魂だけで移動したものと推測されます。根拠となる数値は──」

「あー、けっこう。要点だけ分かればよろしい」

 魔界軍情報士官ジークの前には、光り輝く二人の人物が椅子に座っていた。

「まぁ、あれだけの大仕事をした男やさかい、力を借りたい連中が大勢おっても、しかたないやろ」

「追跡して取り戻すことはいつでもできます。しばらくは様子をみましょう」

「警護だけは厳重にしといてな。一日たっても魂が戻らない時は、また報告するように。
 また今度一緒にホールを回りまひょ。ほんじゃま、キーやん」

 やがて二人の人物の輝きがいっそう強まり、やがて光の中へと姿を消していった。




【あとがき】
 去年の年末あたりから、エヴァにはまりはじめました。

 熱烈なエヴァファンの方には申し訳ないのですが、関心を持ち始めたのは最近なんです。
 名前だけは前から聞いていたのですが、その……アニメとか、ほとんど見ないもので。
 小説やマンガは熱心に読むのですが。(;^^)

 ところが、昨年末にふとしたきっかけでエヴァのSSを読みはじめまして、一気にはまりました。
 ネット上に存在する大量のSSを前にして、半ばめまいを起こしていますが。(苦笑)

 読むだけ読んだら、自分でも書きたくなってみり、GSとのクロスで書き始めました。
 本格的なエヴァとGSのクロスは、まだ手をつけている人はいないだろうと思っていたのですが、
 調べてみたら絶対数は少ないものの、けっこうやってる人がいました。
 特に夜華の小ネタ掲示板には、かなりの数があります。今まで全然気がつきませんでした。(汗)

 プロローグはGSの世界からはじまりますが、メインはエヴァの世界で話が進展していきます。
 エヴァの主役はシンジ、GSの主役は横島です。
 貞元エヴァが基本ですが、足りない部分は、適宜、話を追加する予定です。


 なお横島についてですが、私の書くSSはたいていそうなのですが、原作アフターの少し成長した
 横島をイメージしています。
 『原作どおりじゃないとヤダ!』という方は、続きを読まないほうがいいでしょう。
 もっともそういう方は、私のHPにはあまり来ないかと思いますが。


 なおこの作品は、“COCHMA Temporary Web-Terminal”というサイトに投稿しています。
 原則として、先方のHPに投稿した作品が掲載された後に、こちらのサイトで公開します。
 ただし速報版を、SS掲示板で随時更新していますので、先が気になる方はそちらを読んでください。


 次回、エヴァのSSではおなじみの、『あの』シーンから話がはじまります。



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