GS美神 女子高生大作戦!
作:男闘虎之浪漫
レポート4.ドクター・カオスの挑戦!
「今日も遅くなっちゃたなー。まぁお兄様と一緒にいる時間が多いのは嬉しいんだけど──」
横島の事務所でのバイト帰りに、令子はコンビニに立ち寄った。
「クソ親父は南米に行ったまま戻ってこないし、自分で料理するのも面倒だしなー。あーあ、お兄様がはやく令子をお嫁さんにもらってくれないかな〜」
めずらしく乙女チックなひとりごとを言っている。
「今日はもう遅いから、おにぎりだけにしようっと」
令子はおにぎり2個とカップのみそ汁を買って、コンビニを出た。
コンビニの駐車場の隅に立っている金髪の女の子の姿が目に入る。
黒い色の地味な服装をしているが、目が青く整った顔立ちをしていた。
(外人の女の子かー。まぁ今時、珍しくないんだけどね)
彼女の目の前を通り過ぎて道路に出た時、コートを着た一人の老人とすれ違った。
パサッ
すれ違いざまに、何かが落ちた音がする。
(ひょっとして……)
令子が振り返ると、地面に財布が落ちていた。
「ラッキー♪」
思わず声が出てしまう。
令子がその財布を拾って中身を確認しようとした時、背後から両腕をがっちりと掴まれた。
「ちょっと、何よ!」
令子の腕を掴んでいたのは、先ほどの金髪の女の子であった。
令子は彼女の手を振り払おうとするが、まるで万力にでも掴まれたかのようにびくともしない。
そこに財布を落とした老人が近づく。
「あ、あなた、この娘の知り合い!? 何とか言ってよ!」
しかしその老人はニッと笑うと、突然コートの前をはだけた。
(ろ、露出魔なのー!)
令子はそう叫ぼうとしたがその前に老人の胸がピカッと光り、そのまま意識を失ってしまった。
「ドクター・カオスだって!」
「そうなの〜〜」
その日はたまたま、横島の事務所に冥子が遊びにきていた。
「あの錬金術師の? まだ生きてたのか」
「古代の秘術を使って不死の体になったらしいけど、ここ百年ほど姿をくらましていたじゃない〜〜。そのカオスが日本に来ているのよ」
「へー。でもどうして知っているの、冥子ちゃん?」
「こないだ偶然、空港で会っちゃったの〜〜。サインもしてもらっちゃった♪ 錬金術師としては、すごく有名ですもの〜〜」
横島がソファーの上でずっこける。
「……有名なら、なんでもいいんだね」
「でね、大変なのよ〜〜、横島クン」
「サイン、ありがとうございます〜〜」 |
「──というわけだ。君は光栄にも、このドクター・カオスの道具に選ばれたのだよ」
カオスが、不気味な笑みを浮かべる。
「まずは君を利用して、横島とやらの霊能力をいただく! 私の秘術と霊能力が合体すれば、私は至高なる存在に一歩近づくのだ!」
「キーッ! 私はこんなジジイに汚されちゃうのねー! こんなことなら無理矢理にでも、お兄様の部屋に
「人の話はちゃんと聞かんかい! 誰がお前みたいな小娘に手を出すか!」
「こ、小娘ですって〜〜! これでもバスト85のCカップなのよ!」
「誰が胸のサイズをきいとる! お前のようなレベルの低い人間には、説明してもムダのようじゃな」
カオスは羽織っていたコートの前をガバッと開く。
カオスの胸に描かれた
バチバチバチバチ!
「キャー!」
その光線を浴びた令子は力を失い、ガクッと首を垂らしてしまった。
「よし、人格交換を始めるぞ。終わったら私が戻るまで、こいつを逃さんようにな」
「イエス、ドクター・カオス」
アンドロイドのマリアは、並んだ二つの椅子の片方に令子を座らせた。
もう片方の椅子には、カオスが座る。
マリアが人格交換装置のレバーをオンにした。
バシッ! バシバシバシバシッ!
令子とカオスが座った椅子に、霊波と電流が激しく流れる。
「はっ!」
令子が意識を取り戻した。
しかし、体がやけに重たい。
「キャーー!」
カオスの声で令子が叫んだ。
「無事、入れかわったようじゃな」
令子の声でカオスが話す。
何と、令子とカオスの魂が入れ替わってしまった。
「よし、それでは横島とやらのところに行くか」
令子の体でカオスが立ちあがった時──
ガシッ
マリアが背後から、令子の体を掴んだ。
「ドクター・カオスの・命令により・逃がさないように・します」
「いや、そうじゃなくてだなぁ──待て、こら逃げるな!」」
「逃げるわよー」
カオスの体で令子が逃げていく。
部屋のドアを開けると、地下鉄のトンネルへと出た。
「と、とにかく、お兄様に知らせて何とか元の体に戻らないと──」
その頃カオスは、まだマリアに掴まったままであった。
「人格を交換したじゃろーが! 私がカオスだっての!」
「あ!」
マリアが、令子の体を離した。
トゥルルルルーー
ガシャ
「はい、横島除霊事務所です」
おキヌが電話に出た。
電話をかけたのは令子であるが──
(あっ! このジイサンの声で話しても、おキヌちゃんはわからないわよね。どうしよう……)
その時、カオスの体で電話をかけていた令子)の背後に、マリアが近づいてきた。
すかさずマリアが、パンチを繰り出す。
バキッ!
令子がかろうじてその一発をかわしたが、マリアの鋼鉄のパンチはその先にあった電話機を破壊してしまった。
「もしもし、どなたですか──」
ツーッ ツーッ
おキヌが取った電話は、そのまま切断されてしまった。
「切れちゃった。何なのかしら今の電話は?」
おキヌが受話器を置こうとした時、背後から令子(中身はカオス)が近づいてきた。
「あ、令子さん。今日は早いですね」
その時令子が、手に持っていたガラスの小ビンのフタを開いた。
「えっ……」
わずかな声を残して、おキヌは小ビンの中に吸い込まれてしまった。
「ふわぁ、いい湯だった。ビールでも飲もうかな。おキヌちゃん、ビール取ってくれる?」
タオルを腰に巻いただけの姿で、横島が風呂から出てきた。
「ビールなら、私がもってきます」
「あれ、令子ちゃん──」
「一本でいいんですか?」
「そうだな……」
横島がくるりと後ろを向く。
そこに令子が足を忍ばせて、横島の背後に近づいた時……
「なるほど。令子ちゃんを乗っ取って、次に俺を狙うってわけか。ドクター・カオス?」
「なに!」
横島は反転しながらしゃがみ、令子に足払いをかける。
「ぐわっ!」
「体は令子ちゃんみたいだから、傷をつけるわけにはいかないな」
「な、なぜ私と!」
「令子ちゃんが風呂場をのぞかないなんて、物理的にありえないからさ!」
「ぶ、物理的にありえない!?」
「ついでに言うなら、俺がこんな格好をしていると目を血走らせて
「な、なんだかよくわからないがしまったー! だが、このまま終わらせはしないぞ!」
令子(中身はカオス)が、突然着ていた服の
中から出てきたのは
「ぐふっ!」
横島は慌てて鼻と股間を押さえる。これはこれでダメージがあったらしい。
「そ、そうか、これは私の身体ではなかったわ」
(れ、令子ちゃんの胸って、生で見るとけっこうでかい……)
「今日のところは引き分けだな、横島クン! また会おう!」
令子(中身はカオス)は、手に持っていたスイッチのボタンを押した。
魂が入れ替わり、元の状態に戻る。
「──あ、あれ、元に戻ったのかしら?」
「令子ちゃんに戻ったかな??」
横島は、まだ半信半疑といった様子である。
しかし令子はシャツがはだけていて、ブラジャーが丸見えになっていることに気がついた。
「キャー!」
あわてて服の
「お、お兄様! み、見ましたわね!?」
「え、いや、その、み、見えなかったけど……」
「ウソです! じゃあなんで、前を押さえているんですか!」
「こ、これは、男の生理反応で……」
「こうなったら、最後まで責任とってくださ〜〜い!」
令子が横島に飛びかかろうとする。
横島はパンツとシャツを掴み、慌ててその場を逃げ出した。
「なんでこうなるのーー!」
カオスが自分の体に戻った時、目の前にマリアがいた。
「ふーっ、危ないところだったわい。ところでマリア何をしておる?」
マリアは手を大きく振り上げると、そのまま手を振り下ろした。
「ノーーッ!」
カオスは、かろうじてその一撃をかわした。
「ドクター・カオスの・命令により、あなたを・拘束します」
「ち、違う、私がカオスだ。わからんのかっ!」
バキッ!
マリアのロケットアームが命中した。
「くそおぉっ! いつかこの借りは必ず返すからなーー!」
その辺でやめといた方がいいぞ、カオス。
横島はともかく、令子ちゃんに手を出す人間はみんな不幸になるのだ。
ヨーロッパの魔王に、神の加護があらんことを。
(レポート4.ドクター・カオスの挑戦! 完)