GS美神 女子高生大作戦!

作:男闘虎之浪漫

レポート8.極楽愚連隊、西へ![3]




「あっ! こら、小娘。ソーセージは一人三本までと言ったじゃろうが!」

「いちいち、うるさいわねー。こっちは、育ち盛りなのよ!」

 民家に入った横島たち一行は、皆で夕食をとっていた。

「ワインは自家製か。けっこう、いけるな」

「まるでキャンプみたい〜〜」

 横島は、自家製のワインに舌鼓を打っていた。
 冥子もホームパーティのような雰囲気に、子供のようにはしゃいでいる。
 雪之丞は、ひたすらガツガツと、料理を口に運んでいた。

(さすが、唐巣先生の指名した人たちだわ)

 緊張とはまるで無縁の雰囲気に、アンはすっかり感心していた。

「おーい、マリア。肩を()んでくれ」

「イエス。ドクター・カオス」

「横島く〜〜ん。UNOをやりましょ」

 食事が終わった後、冥子が荷物からUNOを取り出した。
 カオスとマリアとアンの除いたメンバーが、UNOで遊び始める。

「あの……」

 一人、緊張した表情を続けるアンが、横島に話しかけた。

「すみません。ちょっと、村の周りの様子を見てきます」

「了解。何かあったら、すぐ戻ってこいよ」

「はい」

 アンが出て行った後も、皆でUNOを続けていた。

「はい、あがりっと」

 令子が、手持ちの最後の一枚を場に捨てた。

「だーーっ! いつまでも、こんな子供の遊びをやってられっか!」

 一番多くの手札をもっていた雪之丞が、キレてしまった。

「素直に負けを認めろよ、雪之丞」

 雪之丞よりは手札の少なかった横島が、雪之丞を見てニヤニヤと笑う。

「うるさい! こうなったら、もう一番勝負だ!」

 雪之丞の執念が通じたのか、次の回では雪之丞が勝者となった。

「まあ、ちょっと本気を出せば、こんなもんだな」

「よく言うぜ」

 雪之丞は急に席を立つと、ドアに向かった。

「雪之丞、どこに行くんだ?」

「ちょっと用足しだよ」

 民家の外に出た雪之丞は、そのまま近くの丘に上った。

「さてと、そろそろ襲撃(しゅうげき)があっても、いい頃なんだが……」

 雪之丞は周囲を見回したが、丘に上がってくる一人の女性を除いては、誰の姿も見えなかった。

「雪之丞さん」

 雪之丞に近づいてきたのは、アンだった。
 どこかで着替えたのか、彼女は胸の大きく開いたドレスを着ており、黒いマントを羽織っていた。

「あの、少しお話が……」

 アンは妖艶(ようえん)な笑みを浮かべると、雪之丞の方に歩み寄ってくる。

(へえ。こうして見ると、けっこういい女だな)

 日本で雪之丞のオフィスを訪ねてきたときのアンは、顔立ちは整ってはいたが、ほんの小娘にしか見えなかった。
 しかし、夜目ということもあるのだろうが、濃い化粧をした今のアンからは、かなりの色気も感じられた。

「いいぜ」

 アンは微笑を浮かべたまま雪之丞に近づくと、突然雪之丞の首にしがみついた。
 そして、カッと口を大きく開くと、雪之丞の首筋に()みつく。

「て、てめえは……」

「そうよ。あなたは今から、アタシたちの仲間になるのよ」

 首筋から口を離したアンが、雪之丞の耳元でささやいた。

 ガサガサッ

 近くの草むらが()れ、もう一人女性が姿を現した。

「ブラドー! そこで何を!」

「なにっ、アンが二人!?」

 新しくきた女性もアンだった。
 しかし服装は、民家を出たときと同じ、清楚な衣服のままである。

「しまった! 遅かったわ!」

 アンが雪之丞の首筋を見ると、皮膚に二箇所穴が開き、そこから血が流れ落ちていた。

「ホホホホホッ! せっかく連れてきた助っ人なのに、残念ね!」

 派手な衣装を身に着けた方の女が、ぐったりとした雪之丞の体を抱えると、宙を飛んで逃げていった。




 一方、民家では、横島や令子たちが雪之丞が戻るのを待っていた。

「雪之丞さん、遅いですねー」

「そうだな」

「私、ちょっと様子を見てきます」

「待て。一人では危険じゃ。ワシも行こう」

 令子と一緒に、カオスが家の外に出た。

「おい、小娘」

「小娘、小娘って言わないでよー」

 令子がむくれた表情で言い返す。

「ちょっと、そこで待っとれ」

 そう言うとカオスは、近くの草むらに駆け込んでいった。

「何してるの?」

「小便じゃよ、小便。千年も生きとると、近くていかん」

「やっだー、フケツー」

 令子が離れた場所でカオスを待っていると、そこに黒いマントを羽織り、派手な化粧(けしょう)をしたアンが近づいてきた。

「あ、雪之丞さん。遅かったじゃないですか」

 しかし雪之丞は、何も言わずにじっと令子の目を見た。

「ま、待て! この娘の目は……」

「えっ!?」

 用足しを終えたカオスが令子に声をかけたが、令子がカオスの方を向いた(すき)に、雪之丞が近づいて令子の肩に()みついた。

「まずい!」

 カオスは慌てて、横島たちのいる民家に駆け込んだ。

「気をつけろ、来たぞ!」

 横島はガタンと音をたてながら、席を立った。

「令子ちゃん、まずは横島だ!」

「ということで! お兄様、いただきます!」

 カオスの後から、令子と雪之丞が民家に入ってきた。
 令子は横島の姿を確認すると、横島めがけてフライングボディアタックを仕掛ける。
 しかし、横島がさっと体をかわしたため、令子は両手を広げた姿勢で床にぶつかった。

「みんな、気をつけろ! 二人とも吸血鬼にやられたようだ」

 横島はテーブルを横倒しにして、床をはって近づいてくる令子を押し止めた。

「雪之丞! おまえ、それでも霊能者かよ!」

「うるさいっ! 不意をつかれたんだから、仕方ねーだろ!」

「そーゆーわけですので、お兄様、血を吸わせてください!
 ついでに令子を、おいしくいただいちゃってもいいです!」

「い、いや。そういうのは、非常にまずいんじゃないかと……」

 令子の行動は、いつもとあまり変わっていないが、吸血鬼化してパワーアップしている分だけ、始末が悪くなっている。

 ガタン!

 その時、窓が破られ、多くの吸血鬼が室内に入ってきた。

「敵の数が多すぎるぞ! 脱出口は!?」

「小僧こっちじゃ! 地下室がある。一時退避せい」

「わかった!」

 カオスが、地下室に続く上げ蓋を開けた。
 横島はポケットから精霊石を取り出すと、敵の群れ目掛けて投げつけた。

 カッ!

 精霊石が激しく発光し、吸血鬼たちが一斉にダメージを受ける。

「うわっ!」

「しまった!」

 その(すき)に残ったメンバーは、地下室に退避した。
 全員地下室に入ると、上げ蓋を閉じて心張り棒をかませる。

「横島ーっ、出てこーーい!」

「お兄様! すぐ済みますから、噛ませてください!」

 ドンドン、ガンガンと床を叩く音が聞こえた。

「もって、五分というとこじゃな」

「すぐ次の手を、考えないと……」

 その時、地下室の石張りの床の一部が、スッと持ち上がった。

「こっちです。早く!」

 横島・おキヌ・冥子・カオス・マリアが声のした方を振り向くと、メガネをかけた男が、床の下から顔を(のぞ)かせていた。



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