GS美神 女子高生大作戦!

作:男闘虎之浪漫

レポート8.極楽愚連隊、西へ![4]




 雪之丞は、家の中にスコップがあったことを思い出すと、それを持ってきた。
 ついでにハンマーやノコギリなどの工具を、他の吸血鬼たちに渡す。

「突貫よーーっ!」

 令子の掛け声で、雪之丞たちが一斉に床の破壊を始める。
 一分もしないうちに木の床が破れて、地下室に入れるようになった。

「グハハハッ! どこだ横島!」

 雪之丞が地下室の中に飛び降りる。
 だが、逃げ込んだはずの横島たちの姿が、地下室の中からきれいさっぱりと消えていた。




「か、唐巣先生!?」

 地下室に逃げ込んだ横島たちを、秘密の通路に導いたのは、行方がわからなくなっていた唐巣であった。

「や、しばらくだね、横島君」

「先生、ご無事で何よりです。ところで、ここは?」

「君たちが来る直前に見つけてね。この島に吸血鬼たちが住む前に、造られたものらしいよ」

 高さが二メートル、幅は大人一人が通れるくらいの岩をくり貫いたの通路がずっと続いていた。

「通路を閉じます」

 通路が一部広くなっていた場所に、アンが立っていた。
 どうやら、横島たちとは別の場所で唐巣と合流していたようである。
 横島たちがその場を通過すると、アンは壁にあったスイッチを押して、通路を大きな岩でふさいだ。

「それにしても、こんな通路が島のあちこちに通じているなんて、700年この島で育って
 きましたが、今まで知りませんでした」

「700年だって!?」

 横島がアンに問い返した。

「ええ。誤解がないよう先生に会うまで伏せていましたが──
 私の名はアンナ=ド=ブラドー。ブラドー伯爵は私の父です」




「あ、あんたがブラドーだって!?」

 同じ頃、別の場所にいた令子が、驚きの声をあげていた。

「信じられないかもしれないけどよ、このアンみたいな顔をしたヤツがブラドーなんだとよ」

 雪之丞が、自分の斜め後ろにいるブラドーを指差した。

「ブラドーって、男なんでしょ!? まさか、女装が趣味のヘンタ……」

 そこまで口にしたところで、令子はブラドーに頭をこづかれた。

「イタイじゃないの!」

「この小娘が! アタシの高尚な趣味に口出しするんじゃないわよ!」

「わかった、わかったわよ……」

 ツッコミ所は山ほどあったのだが、吸血鬼に噛まれた令子は、魔力による強制により、それ以上口答えすることができなかった。




「──というわけで、ブラドーは見た目は私にかなり似ています。
 化粧や服装の趣味が違うので、すぐに気がつくとは思いますが……」

 アンが微妙に視線をそらせながら、ブラドーの外見を横島たちに説明した。
 身内の恥を話すのが恥ずかしいのか、頬がかなり赤くなっている。

「でも、ブラドーの娘にしては不思議だな?
 吸血鬼のわりには、昼間とかも平気そうだったけど……」

「そうか!」

 横島の横で話を聞いていたカオスが、ポンと手を叩いた。

「おぬし、ヴァンパイヤ・ハーフというやつじゃな」

「はい。私の母親は人間でした」

「話はこれで終わりかな? そろそろ皆と合流しないと」

 唐巣にうながされた一行は、通路を先に進んだ。
 しばらくすると、通路は大きな広間のような場所に出た。
 天井まで数メートルほどあるその広間には、大人と子供を合わせて数十人の人が集まっていた。

「この人たちは、この島の住民ですか?」

「いや。実はこの島には、純潔の人間は一人もいないんだ。
 皆、吸血鬼かヴァンパイヤー・ハーフなんだよ」

「ブラドーの魔力が島を人目から隠したお陰で、私たちはこれまで人間と対立することなく生きて
 きました。村人たちも私も血を吸うことなく生きてきたし、これからもそうしていきたいのです。
 そ、それを、あのブラドーのボケ親父は……」

 アンがカッと目を大きく開けた。

「13世紀のノリで、世界中を支配する気でいるんです!
 も、もし人間が本気になったら……こんな島、一瞬でニンニクまみれに!
 ああっ! まるで、この世の地獄です!」

 ニンニクで埋め尽くされた島の様子を想像したのか、アンが両手で頭をかきむしった。

「そりゃ、地獄のような臭さになるかも……最近は、中国産が安いしなぁ」

 アンの話を聞いていた横島が、ハハハッと笑いながら、ハンカチでこめかみの汗を拭った。

「他の村人たちは、ブラドーに操られてるだけなんです」

「おねげーです。助けてやってくだせえ」

 横島と唐巣とアンの会話を聞いた島の住人が、三人の周りに集まってきた。

「吸血鬼といえども、みな平和を望む善良な人々なんだ。横島君、力を貸してくれるね!?」

 熱血センサーに触れたのか、唐巣が両目から熱い涙を流しながら、横島に話しかけた。

「私からもお願いします!」

「おねげえしますだ」

「オラたちには、もうそれしかねえんです」

 アンは両手を組んで、お願いのポーズをとる。
 集まってきた村人たちも、両手を合わせて横島を拝み倒した。

「わかった。わかったってば! もう報酬も貰ったことだし、ちゃんと最後まで面倒みるから」

「横島君! 私は立派な弟子をもてて、本当に嬉しいよ!」

 さらにヒートアップしたのか、唐巣は目から滝のような涙を流す。
 いい歳をして、まったく熱血が衰えない師匠の姿に、横島は大きなため息をついた。




 次の日の夜、ブラドーは雪之丞と令子から報告を受けていた。

「なに! 逃げられたって!?」

「申し訳ありません。
 地下室に抜け穴を見つけましたが、既にふさがれており隠れ場所は発見できませんでした。
 一応周辺も調べたのですが、夜が明けてしまったもので……」

「アンめ。あくまでアタシに逆らう気だね。たとえ娘といえども、野望を妨げる者は許さないわ!
 アタシが、この世界すべてを支配するのよ!」

 ブラドーは壁に歩み寄ると、そこにかけられていたカーテンをサッと開く。
 カーテンの後ろの壁には、ブラドーの腰のあたりから天井近くまである大きな図面が描かれていた。

TO図

「ブ、ブラドー様……それはいったい何でしょう?」

「なんだ、おまえたち。世界地図を見たことがないのか?」

 ブラドーが小馬鹿にしたような表情で、雪之丞と令子を見た。

(こ、この大ボケが……今どき小学生だって、ちゃんとした世界地図ぐらい知ってるわよ!)

(理屈では腐れ脳みそだとわかっているのに……魔力のせいで服従してしまう。
 なんで、こんなヤツに噛まれたんだろう)

 令子と雪之丞は、両手を床について服従の姿勢を取りながらも、目から大粒の悔し涙を流していた。




(あとがき)
 中世の世界地図は自分で描きましたが、ホント下手な絵ですね。
 また、ブラドーの女装した姿については、皆さんの想像にお任せします。(;^^)


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