夏の日の思い出
(01)
「あれは絶対、オトコだね」
「ねーねー、おキヌちゃん。たしか弓って、フリーのGSとつきあってるんだよね。最近、何かあったのかな?」
「特にそういう話は、聞いていないですけど」
「そうなの? でもあの様子じゃ、絶対何かあったんだと思うんだけどなー」
「…………」
「なー、弓。最近、雪之丞と仲がいいんだってなー」
「そ、そんなことはないですわ。フツーにしてますけど」
「隠したって無駄だよ。タイガーから全部聞いてるから♪」
「……あのバカ。タイガーさんに話せば、全部筒抜けになるのは分かりきっているじゃないですか」
「毎週、カレと食べ歩きしてるんだよなー」
「べ、別に、雪之丞と食事をしているだけですわ」
「かわりばんこでレストランを選んで、それで『弓の選ぶ店は、高いところばかりで困る』って雪之丞さんがボヤいているってところまで、聞いているけど」
「いーよな、カレが金持ちだと。タイガーはまだバイトだからあまりカネがかかるところはいけないし、勘定もたいてい割り勘になることが多いしね」
「でもフリーのGSだから、収入が全然安定してないんですよ! 最近は稼いでいるみたいですけど、ちょっと前まで全然収入がなくて、デートも公園で缶ジュースを飲んで終わりってときもあったんですから」
「カレが貧乏でもデートしているんだから、もうベタ惚れだね! もういっそのこと、結婚しちゃえば?」
「ねー、おキヌちゃん。弓と雪之丞さんって、似合いだと思わない?」
「…………」
「おキヌちゃん、どうかしたの?」
「あ、ごめんなさい……。ちょっと、考え事をしてたの」
「弓。ちょっと喫茶店にでも入らないか」
「そうしましょうか。おキヌちゃんも一緒に行かない?」
カラン カラン
「いらっしやいませ」
「ご注文は何にしますか?」
「あたしは、アイスミルクティーとチョコレートケーキを」
「私は、レモンティーとシナモンケーキでお願いしますわ」
「あの、私はレモンティーだけで……」
「だめだよ、おキヌちゃん。甘いものでも食べて元気ださなきゃ」
「フルーツパフェを追加でお願いします」
「アイスミルクティーが一つ、レモンティーが二つ、チョコレートケーキとシナモンケーキとフルーツパフェが一つずつですね」
「おキヌちゃん、最近仕事の方はどんな感じ?」
「特にいつもと変わらないですけど」
「いつも、誰とペアを組んでる?」
「そーですねー。二人で出かける時は、美神さんですね。二人じゃない時は、たいてい事務所のメンバー全員です」
「横島さんとは、ペアを組まないの?」
「横島さんは全員で除霊するとき以外は、たいてい一人で除霊してます」
「でも事務所にいる時は、横島さんも一緒じゃなくて? 二人で話す機会とかないの?」
「横島さんが事務所にいる時は、たいてい全員
「ふーーん」
「お待たせしました」
「なー、弓。どう思う?」
「何のことです?」
「もちろん、おキヌちゃんのことさ」
「そうですね……。やっぱり、環境が問題かと思いますけど」
「そうだよね。横島さんとの仲は悪くないみたいだけど、あれだけ人がいるとどうにもならないよね」
「おキヌちゃんと横島さんを、何とか二人きりにできないかしら?」
「二人きりにかー。……ダメだ。頭わりいから、どうしていいかわかんねー。弓、どうしたらいいかな?」
「急に話を振られても、困りますわ」
「とりあえず、知り合いにでも相談してみるよ。またな、弓」
【あとがき】
この作品は、拙作『ケンカするほど仲がいい!?』の続きになっています。
弓の機嫌がいい理由については、そちらをご覧ください。