夏の日の思い出
(02)
「……というわけさ。どう思う?」
「そうですノー」
「以前みたいに、合コンでも企画してみたらどうですかノー」
「それもいいんだけどさ、みんなで楽しくワイワイ騒いで、それで終わりのような気がするんだ」
「そうかもしれませんノー」
「前みたいに何かハプニングが起きれば、うまくバラけて二人きりになれると思うんだけどさ、そうそう事件なんて起きないよね」
「ほいじゃが横島さんは、道を歩いとってもトラブルを招くような人ですケンノー。何が起こるか、わからんですジャ」
「でも、ちょっと確実じゃないよなー。どうせなら外に遊びに行かない? その方がおキヌちゃんも積極的になれると思うんだ。ちょうどこれから夏だし」
「海なんか、いいですノー」
「できれば、泊まりで行けるといいんだけどね」
「でもおキヌちゃんの外泊は、美神さんが許しますかノー。弓さんも、たぶん無理ジャ」
「あたしんちは、何とでもなるんだけどね。まあ、弓は無理か。あれでも、いちおうお嬢だしね。でもいっぺん話してみるよ。おやすみ、タイガー」
「魔理さん、おやすみんさい」
「はい、弓です」
「弓か。俺だ」
「俺だじゃないでしょ、電話の応対もまともにできないの?」
「大丈夫だ。クライアントと話す時は普通に話している」
「返事になってないわよ……。で、何の用?」
「あのさ、泊まりで海に行かないか?」
「なに考えているのよ。うちの親が許すわけないじゃない。日帰りのデートだって、ときどきお父さんから渋い顔をされるのに」
「実は海水浴場がある行楽地で、除霊の仕事を頼まれているんだ。ちょいと俺一人だとキツイから、弓に手伝ってもらえると助かるんだが」
「だ・か・ら、無理だっていってるでしょう」
「頭が固いなー。ほら、前に弓が言っていた『除霊実習』で、オヤジさんを何とか説得できないか?」
「ウラの仕事じゃないの? それにあなたの名前を出したら、お父さんを説得できないわ」
「大丈夫。今回は正規のGSからの依頼だ。俺の名前は伏せて、依頼元の名前を出してくれればいい」
「そうね。それなら何とかなりそうね。明日にでも、お父さんに話してみるわ」
「なんとか頼むわ。じゃーな」
「はい、弓です」
「あ、魔理だけど。あのさー、夏休みに入ったらみんなで海にでも行かない? おキヌちゃんも誘ってさ」
「でも女の子だけで海に行くのも、ちょっと危ないんじゃない。ヘンな男にナンパされるのも面倒だし」
「じゃあタイガーも連れていくよ。弓も雪之丞を連れてきたら? あと横島さんにも声をかけてさ」
「そーねー」
「
「ひょっとして泊まり? バイト代も出るんなら、なおさらオッケーだぜ」
「雪之丞とも相談してみますね」
「あの、美神さん。週末の土日にお休みをいただきたんですが」
「いいけど、どうしたの?」
「実は弓さんと魔理さんから、除霊の手伝いを頼まれたんです」
「ふーん。場所はどこなの?」
「あの……海のすぐ近くなんですが……」
「除霊はついでみたいね。それで仕事の内容は?」
「夜に除霊するのね。どうせ昼間は遊ぶんでしょうけど、遊びは早めに切り上げて夕方にしっかり睡眠をとること。それさえ気をつければ、問題なさそうね」
「はい。でも事務所の方は大丈夫ですか?」
「週末は仕事の予約も入っていないし、横島クンも休むみたいだから、事務所で書類整理をしながらゆっくりしてるわ」
「横島さんも休みなんですか?」
「何だか知らないけど、その日は休みたいって。まあ、来週からばっちり働いてもらうから、その埋め合わせね。それから海に行っても、ヘンな男に引っかかっちゃだめよ」
「大丈夫です。弓さんや魔理さんも一緒ですし」
「よっしゃーー! やっと着いたぜ。雪之丞、タイガー、行くぞ!」
「青い空、白い雲。そして水着のオネーチャンたちが、俺を呼んでいるぜ!!」
「待てよ、横島」
「なにやってんだよ。早く行こうぜ」
「少し待てよ。人と待ち合わせがあるんだ」
「待ち合わせって、こんなところでいったい誰と?」
「今着いたの? 雪之丞」
「さっきの電車で来たばかりさ」
「私たちは一本前の電車で着いたから、そこの喫茶店でお茶しながら待っていたわ」
「おキヌちゃん!」
「横島さん!」
「「どうしてここに!?」」