ルシオラ in もし星が神ならば!
作:湖畔のスナフキン
(下)
(注)原作を再構成した作品です。コンセプトは『もしあの話にルシオラが出ていたら〜』です。
「ル、ルシオラ〜〜!!!」
「他の女でもよいぞ。例えばー」
織姫の姿が、再び変化する。
「み、みか゛み゛さんっ!!」
「それとも、こんな女が好みか?」
織姫の姿が、長い黒髪の少女に変わる。
「お、おキヌちゃん!」
「それから、こういうのにもなれる」
織姫の身長がぐっと縮まり、幼な顔の少女の姿になった。
「いや、さすがにパピリオはまずいッス。どちらというと、同い年か年上の女性が好みで──」
「そうかえ? 人間の男には“ろり”とか申して、幼い
織姫は、ルシオラの姿に戻る。
「とにかく一夜を過ごすにあたっては、誰でもお前の好きな女になってやろう」
「で……でも元はアレじゃないか! そんな手に俺がのるとでも思ってるのか!」
「私とじゃイヤ?」
ルシオラの姿をした織姫が、横島の手を自分の胸にあてた。
シュポーッ!
横島の脳が、一気に沸騰した。
「うわああぁぁぁ! 正気を保つんだ、俺! でも、もうわからない! 何が
「絶対まずいんです! なぜならわれわれ天星神族には変身能力があるので、美女に化けて誘惑するくらい朝飯前のことなんです!!」
「そ、それはヤバイ! ヤバすぎるーーっ!」
「横島さん、フケツです!!」
「ま、まずいわ! 巨乳の女に化けて誘惑されたりしたら、ヨコシマは──」
「絶対ゆるさないでちゅ! ヨコシマが私以外の女と寝るなんて!」
パピリオまで
「と、とにかく、後を追わないと!!」
「待ちなさい!
美神は机の引出しから、携帯型の無線機を取り出した。
「そなた、どこかで二人っきりになれる場所はないのか?」
「そ、そんなこと急に言われても──」
「あそこはどうじゃ。宿泊・
織姫が指差したのは、大きなネオンの看板があるラブホテルだった。
「え!? そ、そんな、いきなりラブホですか??」
「そちも面倒な男じゃのう」
ルシオラの姿をした織姫が、横島の手を自分のふとももの上にのせる。
シュポーーッ!
横島の脳が、
「うわーっ、誰か止めてくれー! 体が勝手にハンドルを切ってしまう!」
「ほほほ、その調子よ。今夜は絶対寝かさないわ、ダーリン♪」
その時、横島たちの乗る車の後方から、サイレンの鳴る音が聞こえてきた。
「そこのオープンカー、すみやかに止まりなさい! エンジンを切って外に出るように──」
「ちっ、彦星の差し金か!」
『こちら公機245、手配中の車両を西四丁目で発見!』
『了解です』
『うわー! 強行突破されました! 応援を願います』
『手配車両の行き先は?』
『現在、通りを北上中!』
『全車両そのまま北に追い込むように追跡。警戒中のパトカーは急行してください!』
無線機を片手にパトカーに指示を出していたのは、美神であった。
「すごい! 警察が手足のように動いているぞ!」
彦星が後ろで興奮している。
「こういう違法なことを続けていると、いつか破滅しますよ。美神さん」
だがおキヌの忠告は美神の耳には入っていなかった。……いつものことではあるが。
「警察はこれでよし! それじゃみんなで先回りよっ!」
「今年で浮気はおしまいだ、織姫!」
ファンファンファンファン
10台近くのパトカーが、横島と織姫の乗るコブラを追いかける。
「数が増えてくるばかりじゃ!」
「あああっ! ほっとしたような残念なような──」
「そなた、もっと本気で逃げぬか!」
「いや、そんなこと言われても……」
横島は期待と不安の入り混じった、複雑な表情をする。
「迷うことなどない」
織姫の姿がかすみ、変身がはじまる。
「たぎる心の命じるままにすればよいのじゃ」
変化がおわったとき、織姫はキャミソールにフレアスカートという最強装備(?)のルシオラの姿になっていた。
「……」
プツン
横島の中で何かが切れる。
「そこのオープンカーの二人! いい加減に止まれ!」
その警察の呼びかけに返ってきたのは、一粒の
コロン コロン
その
ドーーーーン!
パトカーの下から爆風が巻き起こり、たちまち三台のパトカーがひっくりかえってしまった。
「あーん♪ 素敵よマイダーリン」
「カァァァー!」
横島の目は完全に血走っていた。目の焦点もどこか遠くの方にピントがあっている。
「よーーし、追いついた!」
美神たちの乗ったポルシェ・カブリオレが、ACコブラの横に並ぶ。
「ポチー! 正気に戻るでちゅ」
「ヨコシマ、目を覚まして!」
「織姫、今年こそは浮気は許さん!」
ルシオラ・パピリオ・彦星が、口々に叫ぶ。
「ダーリン!」
「カーッ!」
ドンッ!
横島はコブラをポルシェにぶつける。
「うわっ」
「キャーッ!」
後部座席にいたルシオラとパピリオ、そして彦星が車から振り落とされた。
「おキヌちゃん、運転お願い!」
美神はおキヌにハンドルを渡すと、
「この色魔どもめがああっ!」
美神は全力で
「この人間ふぜいが! わらわに勝てると思ってか!」
だが織姫は美神の攻撃を受け止めるために、変身を解かざるをえなかった。
「はっ! 俺は今まで何を──」
織姫の元の姿をみた横島が、正気に戻る。
しかし横島たちの正面に、ガードレールが迫ってきていた。
キキーーッ!
横島は
車の上に立っていた織姫は振り落とされそうになるが、美神を
「年に一度のわらわの楽しみ。人の恋路を邪魔するヤツは絶対許さん!」
織姫は美神の首を
「誰が人の恋路を邪魔するですって! 人の男を奪って逃げておいて、よくも言えたものね!」
そこには手からパリパリと火花を散らしているルシオラと、髪の毛を逆立てているパピリオの姿があった。
「デタントがなによ! もぉ絶対許さないわ! いいわね、パピリオ!」
「ペットを拉致されては、飼い主として面目が立たないでちゅ」
「ちっ!」
織姫は美神を放すと、あわてて受身の姿勢をとる。
「もう勘弁できない! そこよ!!」
ルシオラとパピリオが、同時に霊波砲を放つ。
ドーーン!
バキッ!
ドガッ!
ズシャーーン!
壮絶な地上戦が展開された。
「……止められないでしょうか、美神さん?」
「もう無理だわ。あの二人がああなってしまったら、とても手がつけられないわね。合体したくても横島クンはああだし」
美神がコブラを指差すと、そこには頭から血を流して気絶している横島の姿があった。
「でもさすがに天星神族ね。あの二人を相手にしてよく戦っているわ。まぁ、もって15分でしょうけど」
美神の推測は当たった。
ちょうど15分後、さすがの織姫も力尽きてしまい、ルシオラとパピリオにぐるぐる巻きに
彦星は美神たちに礼を述べると、
「……気がついた?」
横島が気絶から回復した時、公園のベンチで横になっていた。
目の前にルシオラの顔がある。
「……織姫と彦星は?」
「帰ったわよ」
「じゃあ騒ぎは収まったんだな。美神さんは?」
「コブラがガードレールに突っ込んだから、レッカー車を呼びにいってる。おキヌちゃんとパピリオは先に帰ったわ。今は二人だけよ」
「そっか……」
横島はベンチから起き上がると、地面に膝をつきルシオラに頭を下げた。
「ルシオラ、すまんっ!」
「どうしたの、急に」
「いや、俺があてつけがましくあんな短冊を作ったから、こんな事件が起きてしまったわけだし──」
「いいのよ、もう」
ルシオラは横島の手をとって、ベンチに座らせる。
「私もなんだかモヤモヤしていたから、今日は久しぶりに暴れられて少しはすっきりしたわ」
「ならいいけど」
「ねぇヨコシマ、“いい女と情熱的な一夜をすごしたい”って短冊に書いていたよね」
「もう、そのことはいいって」
「私じゃダメかな?」
ルシオラがコツンと頭を横島の胸に寄せる。
「も、もちろんオッケーさ!」
横島とルシオラは隣り合って座り、お互いの肩に手をかける。
「こうして見ると、ビルのネオンの明かりもけっこうきれいね」
「お、俺は、ルシオラの顔の方がきれいかなーなんて」
横島がもじもじしながら、じっとルシオラの横顔をみつめる。
「もう仕方ないわね……ちょっとだけだからね」
二人はネオンの灯りを背景にして、そっと口づけをかわした。
(お・わ・り♪)
『ルシオラ in 〜』シリーズについてですが、『ザ・グレート・展開予想ショー』に投稿されているハルカさんの発案です。
私の方が後から便乗して、この作品を書きました。(ハルカさんの承諾はもらっています)