ルシオラ・もう一つの物語

作:男闘虎之浪漫

−6−



「横島さん、もうすぐ隊長が帰りますよ」

 横島は美神事務所の屋根裏部屋のベッドに腰をかけ、手紙に目を通していた。

「ごめん、ちょっと手紙を読んでいたんだ」
「誰からのです?」
「パピリオからさ」
「一緒に読んでいいですか?」

 おキヌは、横島の隣に座って、手紙を読みはじめた。




ポチ……じゃなかった、ヨコシマ元気でちゅか?
パピリオは今、妙神山にいます。

ルシオラちゃんもベスパちゃんも、だいぶ元気になりました。
体も、ほとんど元の大きさに戻っています。

妙神山の建物は逆天号の攻撃で破壊してしまったので、仮の宿舎で生活しています。
ルシオラちゃんとベスパちゃんも同じ部屋で生活しています。

毎日のようにいろんな神族や魔族がやってきて、ルシオラちゃんやベスパちゃんから話をきいています。
ルシオラちゃんは「取り調べ」と言っていました。
私はまだ子供でちゅのであまり相手にされないのでちゅが、何度かいろいろなことをきかれました。

妙神山は広くてあちこちに遊べる場所があるのですが、結界が張られていてその外には出られません。
この手紙は、小竜姫に頼んで出してもらいました。

ルシオラちゃんは、ヨコシマの心配ばかりしています。
小竜姫やヒャクメは妙神山と東京を毎日往復しているのですが、ルシオラちゃんは何度も何度も小竜姫たちにヨコシマの様子をたずねています。
あまりしつこいのか、小竜姫はときどき面白くなさそうな顔をしています。
そうしたらヒャクメが「小竜姫は、自分の知らないうちに横島と親しくなったルシオラに嫉妬しているのね」といって笑ってました。
私は、私たちが妙神山をぶっ壊してしまったので、それで怒っていたのかと思っていました。

ベスパちゃんは、もっとたいへんでした。
ベスパちゃんは、本当にアシュ様のことが好きだったみたいでちゅ。
一時期はすごく荒れていて、ルシオラちゃんや私でなだめるのが、とてもたいへんでした。
ベスパちゃんがルシオラちゃんに「惚れた男が待っているヤツなんかに、私の気持ちはわかんないよ!」って怒鳴ったりもしていました。

けれども、ある日ワルキューレが来て「最高指導者からの極秘の伝言だ」と言って、ベスパちゃんとルシオラちゃんと三人で内緒の話をしました。
その後、ベスパちゃんがすごく明るくなりました。「長生きしないとね」といって自主トレまではじめました。
何の話をしたのかルシオラちゃんにきいてみたら「パピが大人になったら教えてあげる」と言ってました。
子供だからって仲間はずれにされるのは、すごく納得いかないでちゅ。

それから、もうすぐ妙神山から出られるそうでちゅ。
私とルシオラちゃんは、また東京に戻るつもりでいます。
ベスパちゃんは、魔界に行くことを希望しました。軍隊に入りたいそうでちゅ。
ルシオラちゃんは「人間たちに、まだわだかまりがあるのね」と言っていました。
ベスパちゃんと分かれてしまうのは寂しいですが、休暇の時にはいつでも会えるそうなので少し安心しました。
よく考えたら、私は魔界でほとんど生活していません。
魔界に行ったら、ベスパちゃんにあちこち案内してもらいたいでちゅ。

妙神山で、竜神王の息子とかいう男の子と友達になりました。
ヨコシマのことを知っているといったら「横島は世の家臣じゃ。命令するからデジャブーランドにつれていってもらえ」と偉そうなことを言ってました。
東京に戻ったら、真っ先にデジャブーランドに遊びにいきたいでちゅ。

ルシオラちゃんも、ヨコシマに会うのを楽しみにしています。
それでは、かしこ。





「ルシオラさんもパピリオちゃんも無事みたいですね」

 実は手紙を読んでいる最中に何度かおキヌの表情が固くなったのであるが、鈍感な横島は少しも気づかなかった。

「本当のこと言うと、ルシオラたちに厳しい処分が下るんじゃないかと思って、少し心配していたんだ」
「横島さんにこんなに心配してもらえるなんて、少しうらやましいな……」

 おキヌが小さな声でつぶやく。

「えっ、何か言ったおキヌちゃん??」
「もぉっ、何でもないです。早く準備しないと、隊長さんが帰れないですよ」

 おキヌは、先に階段を下りていった。


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