恋人たちの一日
作:男闘虎之浪漫
(昼) Side A
10時少し前にヨコシマの部屋を出た。
今日の予定は、街に出て、映画をみて、食事をして、それから海辺の公園を散歩するの。
もちろん、ヨコシマと一緒にね♪(はぁと)
美神さんは「デートは普通は男の方がスケジュールを組むんだけどね」って言ってたけど、今回は私が予定を組んじゃった。
ヨコシマも毎日忙しくて、デートのことまで考える余裕がないみたい。とりあえず「休日は一日空けといてね」といっておいた。
私は知識だけはいっぱいあるけれど、人間生活の経験が少ないから、デートをするにしても何をしたらいいか今一つ実感が湧かないのね。
とりあえずヨコシマと一緒にしてみたいことをまとめて、計画を組んでみた。
美神さんいわく「横島も似たようなものよ」って言ってたから、たぶん大丈夫よね。
ヨコシマの部屋を出て、駅まで歩いていった。
ヨコシマを抱えて飛んでいけば早いんだけれど、昼間から空を飛ぶととても目立つし、ヨコシマも私に抱えられて飛ぶのは少し恥ずかしいと言っていた。
前に一緒に飛んだことがあるけれど、あの時は戦闘中だったしね。
それに二人でゆっくり歩くのも悪い気分じゃない。
ヨコシマの斜め後ろで歩いていると、視界にヨコシマの背中が自然と入ってくる。
少しやせ気味に見えるけれど、こうして間近で見るとけっこう体格ががっちりしているのがよくわかる。
気やせするタイプなのかな、ヨコシマって。
駅で電車に乗り、映画館のある街まで移動する。
電車の中でもそうだけれど、私と一緒に人が多い場所に来ると、ヨコシマは少し目の色が変わる。
私たちの方をチラチラと見る男たちをにらみ返しているのだ。
私はヨコシマ以外の人間の男になんて少しも興味はないけれど、ヨコシマはすごく気になるみたい。
美神さんは「自分がそういうことをしてきたから、余計に気になるんじゃない!?」と言っていたけれど、そうすると以前のヨコシマって……。
まぁいいわ。これからは私だけ″を見ていてくれれば許してあげるから。
映画館に入った。
何の映画を見るかは出かける前に決めておいた。転校してきた忍者の子孫が、高校を舞台に活躍する話だ。
ヨコシマは『学園モノ+アクション+ラブコメ』と言っていた。いろんな要素が混じっていてお得らしい。
映画はテレビで何度か見たことがあるけれど、映画館で見るのは始めてだから楽しみだ。
そして上映がはじまったが……はまった。
最初はバカ丸出しの主人公にひいてしまうことの多かったヒロインが、彼の優しさにすこしずつほだされていく。
一番盛り上がったのは、雪山で遭難したヒロインを主人公が危険をかえりみずに捜索に出かけ、間一髪のところで救い出すシーンだった。
その後ヒロインは最初は嫌っていた主人公を好きになっていく展開なんだけれど……、まるで私とヨコシマのようで、すごく共感してしまった。
映画の中の主人公はそれなりに格好良かったけれど、ヨコシマも負けていなかったんだからね。
そう思ってヨコシマの顔を見てみると、どこか深刻な表情をしていた。
どうしたのかな? とても面白かったのに。
映画が終わった後、レストランで食事をした。
レストランといってもファミリーレストランだ。家族連れが多くて、少しざわざわしている。
ヨコシマは「ファミレスでごめんな」と言っていた。私はヨコシマと一緒なら別にどこでも構わないのに。
ヨコシマはメニューを見て、ハンバーグステーキランチを注文する。
私もメニューを見た。どうも砂糖水はレストランには置いていないらしい。
私はミルクティーと、それからチョコレートパフェを注文した。
チョコレートパフェは、ヨコシマが甘いものなら口にあうかもしれないと言ったので、試しに食べてみることにした。
注文したパフェを食べてみたけど……、おいしい。
自然の甘い水の味わいもおいしいけれど、この強烈な甘さの刺激もクセになりそう。
パフェの甘味を味わいながら、ゆっくりと食べた。
食事が終わって、外に出た。
海辺の公園に向かって、ゆっくりと歩いていく。
少し話しかけるが、ヨコシマは軽く相づちをうつだけであまり喋らなかった。
映画が終わった後からヨコシマはこんなずっとこんな感じだ。ヨコシマは何か考え込んでいるみたい。
どうしたんだろう……