「狩か……!! これは楽しくなりそうだ……ヒヒヒヒヒヒ……!!」

 女はそう言うと持っている剃刀をなめた。
 その光景をたまたま見たメドーサは眉間にしわを寄せたが、気を取り直して買い物の続きをしに、メモにしたがって歩いた。





 ゴーストスイーパー美神 GOS

作:ガイギス

第11話






「……死体はどこで発見されたかぐらい教えなくて良いの?」

 美神がシロとタマモが地面を嗅いでいるその横で西条に聞いた。

「霊能力は主観が入り込む余地が大きいし、先入観を与えないためには仕方ない。
 警察の捜査は手づまりだ、迷宮入りの気配が濃い。
 ヘタに情報を与えても、同じ迷宮にはいりこむ可能性があるからね」

 西条がそう言うとシロとタマモはだんだんと嗅ぐ場所が重なりとうとうお互いの頭がぶつかった。

「てめえっ!! どくでござるよっ!!」

「そっちがでしょ!? ジャマよっ!!」

「どうした!? 何か見つけたのか!?」

 西条がそう聞くとシロは少しその場を嗅ぐと立ち上がった。

「拙者、これから犯人を追跡するでござるよ!! みんなついて来るでござる!」

「犯人の手がかりをつかんだのか!? すごいぞ……!!」

 シロがそう言うと西条は嬉しそうにそう言いタマモはいまだ地面を嗅いでいた。

「でもまだタマモちゃんが―――」

「放っときゃいいでござるよ……!」

「そーもいかんだろ、ちょっとまってやれよ」

 横島がそう言うとシロは悔しそうな顔をして目から涙を流した。

「……横島先生も……美神どのも、おキヌどのも、拙者を信じないでござるか?
 拙者より……キツネを……!!」

「ばっ、ばか、そーじゃねーだろ!?」

 横島はそれにおろおろしてとりあえずシロの肩を掴んだ。

「どーしましょう……?」

 横島は美神に訊いた。

「しゃーない、あんた行ってやりなさいよ。
 タマモのほうは……」

「私達3人でいれば良いんでは?」

 美神が言い切る前にルシオラがそう言った。

「え〜、ルシオラはそっちか?」

「ま、その方がいちゃいちゃを見なくていいかもね」

 美神がそう言うと横島はさらにどよ〜んと落ち込んだ。
 ルシオラは念話で謝るとシロがころっと泣き止んだ。

「じゃ、先生はシロちゃんチームでござるなっ?」

「…………ウソ泣きかいっ……!!」

 横島がつっこむと西条が仲裁に入り3人は先にシロ先頭のもと犯人の追跡に行った。

「連中行っちゃったわよ、あんたは何もつかめないの?」

「……そうでもないわ、多分―――シロと同じものを見つけてるはずよ」

「じゃ、何を……」

「しッ」

 タマモはそう言うとまたしばらくその場で地面を嗅いでいた。
 ルシオラは美神たちに気づかれないようにバイザーを着けて覗くと、タマモの少し前を見た。
 しばらくバイザーを調整しているとそこに3筋の光が見えた。
 そのうちの一つは途中で道路に消え、一つはシロが追跡していった方向に伸びていた。
 タマモはもうしばらくその場を嗅ぐとシロとは逆方向に向かった。

「シロとは逆方向だけどこれでいいの?」

「わからない」

 美神の質問に自信が無さそうにそう言った。

「わからない……?」

「あっ、もしかして――――シロちゃんに勝たせてあげて仲良くなるきっかけを……!?
 タマモちゃんやさしい――――」

「そんなつもりはまったくないわ!! 負ければ私はあの犬ころの子分になるのよ!?」

「まあまあ……」

「それじゃ……どうして?」

 ルシオラがタマモを宥め、美神が訊いた。

「……あの狼女より手間がかかったけど、私もあっちが正解だと思う。
 ……でも嗅ぎ分けるのに時間がかかった分、霊波以外に何か感じたの。
 何か……こっちの方に不吉な感じが……?」

 タマモは途中でガバッとその場に伏せて顔を近づけた。

「霊波のニオイが……これはほんの1時間ほど前のものだわ!!
 どこかで混戦して新しいニオイにぶち当たった……!! 感じてたのはこの予知だったのよ!!
 犯人は近くをうろついてる……!!」

 タマモはそう言うとニオイをおって走り出した。

「ちょっと待って! ……タマモ……!」

「タマモちゃん!?」

 美神達はそう言ってタマモの後について走った。
 4人はしばらくするともといた現場に戻ってきた。

「戻ってきちゃいましたね?」

「現場に戻って私たちのこと見てたんだわ……!! ヤジ馬の中にいたのかも……!」

「私達……狩をしているつもりだったけど……ひょっとしたら……!!
 狩られているのは私たちの方かもしれない……!!」

「ヘタに動かない方がよさそうね。
 みんなと合流しましょう! あ、もしもし!? 西条さん!?」

 美神は携帯で西条を呼び出した。
 ルシオラは少し不安になって念話で横島に呼び掛けたが応答がなかった。




「……!! 霊波が……消えた……!?」

 シロは被害者のニオイを追って追跡しただが、橋の下でそのニオイは途切れた。

「なんだって……!? こっちにまちがいなかったんだろう!?」

「ニオイはまちがいなかったはずでござるよ……! なんで……!?
 殺された人の『死臭』がなんで逆方向に続いているんでござるか!? 拙者には何がなんだか……」

 シロと西条があわあわと慌てていると一人の女性がその集団に近づいてきた。

「あの……警察か何かの方ですか?
 今そこで変なものを拾ったんですけど……見てもらえますか?」

 その女性はにこっと笑いそう言った。

「……? 変なもの……ですか?」

「ええ、実は―――これなんですけど」

 女性はそう言うと一本の折りたたみ式の剃刀を出した。
 西条はそれを見ようと近づくと女は西条の左腕をその剃刀で傷つけた。

「お……おまえ!?」

 西条はそう言うと女を取り押さえ剃刀を奪ったが、女性は剃刀から手を離すと倒れこんだ。

「西条!? だいじょ……うわ!」

 横島は女性を助け起こしながらそう言うと西条に右腕を切られその場にへたり込んだ。
 西条は横島に切りつけると同時に様子を伺っていたシロの右腕を銃で打ち抜いた。
 弾は完全に貫通したがその衝撃でシロも壁にへたり込んでしまった。

「西条どの……!? なんで―――」

「そいつは……西条じゃねえ……!! 今わかった……!!」

 横島は何とか立ち上がろうとしながらシロに言った。

「カミソリで切られた時から、西条はのっとられてるんだ……!
 俺も―――ほんの少し切られただけで、霊力を根こそぎ吸い取られた……!!
 あれは霊刀の一種だ!」

「どうりで……!! 霊波が混乱したわけでござる!!
 犠牲者が犯人にのっとられて、次の殺人を犯してたんでござるか……!!」

 シロがそう言うと西条はヒヒヒッと笑った。

「察しが早いな! さすがその道のプロだ。
 捕まらないはずだよな……!? 俺には自分の肉体がないんだ!!」

 西条はそう言うと剃刀をなめた。

「俺の本体はこいつさ……!! いつからこうやっているか自分でもわからねえが、
 血を吸うとそいつの身体を使って動けるようになる! シャバに出たのは百年ぶりかな?」

「百年も前から――――人を殺して生きてきたのか……!!」

 シロがそう唸りながらそう言うと西条はどこ吹く風と自分の経緯を話し出した。

「あれは確かロンドンとか言う街だったけか……当時あそこは空気が悪くてな。
 宿主の肉体が長く保たねえんだ。
 次々殺して乗り換えたが、時間切れで動けなくなっちまった。
 気づいたらこの街の骨董屋に握られてたってわけさ。
 なぜか宿主は女の方が俺との相性がいいらしい。
 このオッサンはあんまり気にいらねえな……!
 ……てなわけでおまえの体もらうぜ! なーに痛いのは一瞬さ!」

「なめるなああッ!!」

 シロはそう言うと左手に霊波刀を展開、西条に切りかかったが、

「おやおや、まだそんなに元気なのか? もう一発ブチ込んどこう!」

 西条はさらに一発シロの足に銃弾を打ち込んだ。

「ギャンッ!!」

「シロ……!」

 シロはその衝撃で倒れこんだ。

「ヘッ……! 完全に死んじまったら宿主にはできないからな」

 西条はそう言うとシロの襟首を持ち持ち上げた。

「手間アかけさせやがって……?」

 しかしシロはだらっと首を曲げ目には力がなくなっていた。

「こいつ……ショックで死にやがった……!?ち」

 西条はそう言ってシロを放ると、

「しょうがねえ! 女は後4人いたな。
 ま、この姿なら殺すのは難しくないだろう。
 ヒヒヒヒヒ……」

 そう言ってその場を後にした。
 横島はそれを聞いて必死に立ち上がろうとしたが立ち上がるどころか声すら満足に出せるかどうか解らない状況だった。
 横島は必死に自分が生き残り、シロを生き返らす術を考えたがその妙案はなかなか思いつかなかった。
 と、その時すっと女性の影が横島の前に現れた。

「すみ……ません……救急……車」

「先生、大丈夫でござるか?」

「シ……ロ?」

「先生? 先生!!」

 横島はそれだけ言うと気が抜けたようで、一瞬気を失った。
 シロは必死のヒーリングですぐ横島を復活させたが。

「ありがとな、シロ……けどどうしてお前……?」

「『疑死』でござるよ!! 追い詰められたケモノ一時的に代謝機能を低下させて、死んだフリができるでござる!!」

「……『タヌキ寝入り』ってやつか!!」

「タヌキじゃないもんっ!!」

 シロはそう言うとぶ〜と膨れた。

「!! そうだ……奴のこと美神さんたちに知らせないと……!!」

「ケータイは西条殿しか持ってないし……」

「タマモはお前と同じ犬族だろ!? 何か連絡する方法はないのか!?」

「こーゆー場合、遠吠えで通信するのが普通でござるが――――山中ならともかくこんな街中じゃ……」

「……くそ、ルシオラとも連絡が付かん」

 横島はそう言うと上着の内ポケットから壊れたアクセサリーを出した。




「ここなら逃げ場はない! ヒヒヒヒヒヒ……!
 まさか仲間が殺しに来るとは思うまい!! ゲーム終了だな……!?」

 西条はそう言うとそれを囲むように幾人もの巨人が西条の周りを囲った。

「「「「おまかせ、何が終了ですって?」」」」

「のわッ!? な、なんだあああーッ!?」

 西条はそう言うとその巨人めがけて拳銃を乱射したがしばらくして弾切れをおこした。

「「「「弾切れね……!!」」」」

「「「「覚悟しなさい!!」」」」

 ルシオラの形をした巨人はすべて左足を上げ西条を思いっきり踏みつけた。

「ぎゃッ!? ぐわッ!?」

 しかしそれによって歩道橋が崩れる事はなく、西条が気がつくと女性四人に囲まれていた。

「幻……!? 幻術かッ……!!」

「ご名答!! ゲーム終了よ!!」

「なぜだ!? なぜ俺だと―――」

「お前が知る必要はないわ!」

 美神はそう言うと破魔札をルシオラに渡した。

「ヨコシマの仇〜〜〜〜ッ!!!!!」




「ワオ―――――――……ン・オォオォオ……ン、オォオ……――――――ッ」

 シロはマンホールのふたを開けその中へ雄たけびを上げていた。

「もうよせ、大ケガなんだぞ!? これ以上霊力を使うな!!」

 横島はそういってシロに無理をさせようとはしなかった。

「下水道なら……マンホールごしに何とか聞こえるはずでござる!!
 問題はあのアホ狐が気づくかどうか……!! あいつニブそうだから―――」

 シロがそう言うと下水道の奥より狐の鳴き声がわずかに聞こえた。

「……!!」

 シロはペタッとその場に座った。

「どうした……!?」

「あいつめ……!!」

 シロはそう言うとふっと笑った。
 と、その時後ろから大きな影が現れた。

「ヨコシマ〜〜〜〜〜!!!!」

「ルシオラ!? うお!」

 その陰からルシオラが出てきて横島に抱きついた。
 シロはルシオラが出てきたその大きなものを見た。

「あ、ヨコシマ血が……」

「ああ、ちょっとまずった……」

「すぐ治療するわ!」

「大丈夫だって、シロがヒーリングしてくれたから」

 横島がそう言うとシロは誇らしそうに胸を張りルシオラはそんなシロの頭を撫でた。
 その後ルシオラはハニワ兵を呼んで二人を大きなもの……地究号に乗せた。
 ……なお翌日連絡を入れなかった横島とシロ、そして実質拉致に等しかったルシオラは美神にこってり絞られた。




「いやあ大したもんだ……!! 無事解決したのは二人のおかげだ!! これで心霊捜査にはずみがつく……!
 時間をかけて大勢で狩をする狼は追跡能力に勝り―――単独生活で一瞬が勝負の狐は第六感に優れていたってわけか……!」

「最後に二人がちゃんと協力したから、うまくいったんですね」

 病院で漸く回復した西条は報酬を持って美神の事務所を訪れた。

「ケンカもうやむやになったんだろ?」

「まーね」

 ここには5人の人物がいたがもっぱらしゃべっているのは美神、おキヌ、西条だった。

「難しい仕事を協力してやりとげると、友情は深まるものだからね」

「―――それもあるけど、今回わかったのは……
 ケンカする元気がなくなるまでコキ使ってしまえばいいってことと……
 横島君とルシオラは仕事の時はセットにしないと後で痛い目にあうって事ね」

 美神はそう言うとため息を付いた。
 おキヌと西条はけっしてある区間に顔を向ける事はなかった……
 その区間では……

「ヨコシマ……」

「ええと、ルシオラ……その……えっと……」

「な〜に?」

 横島にこれ異常なくくっ付くルシオラとそんなルシオラにどうすればいいのか解らない横島がいた。
 横島は自分がルシオラに心配かけたという負い目で、甘えてくるルシオラの要求についつい従ってしまっている。
 なお最初は美神はそんなルシオラに注意したのだがルシオラはだってと言って涙顔で訴え、
 横島の腕をぎゅ〜〜っと抱きしめていた。
 今までにないくらい横島に甘えているルシオラに、皆一様に驚いたが美神は何とかルシオラと説き伏せ、
 今日一日だけという風にした。
 これには事務所の人間だけではなく横島自身もほっと胸をなでおろした。
 ルシオラがまったく動じないが横島は動じるため皆非難の目が横島に向けられていたからである。
 結局その日は仕事は入らず、ひのめの相手をして疲れたシロとタマモを置いて皆それぞれの居場所へと戻っていった。




(あとがき)
作者>う〜ん……うまくいかないな
横島>どうしたんだ?
作者>いや、最後のほうを思いっきり甘く行こうかとしたんだがネタが思いつかなくてな
横島>……ま、それは頑張ってくれ
作者>おう……そういえばルシオラ嬢は?
横島>いや〜〜はっはっ……

その頃横島宅

ルシオラ>ううう、腰が……
ハニワ兵>ポー

……魔族が腰を痛めるって……何をやったんだ? 横島君


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