交差する二つの世界

作:湖畔のスナフキン

第十六話 −約束の日− (04)




 横島は、加持から戦自のネルフ本部侵攻計画に関する情報を入手すると、神・魔族に対して応援要請(ようせい)を出した。
 今までは隠密裏(おんみつり)に行動してきたのだが、その方針を変更し事態に直接介入することを決断したのは、過去のアシュタロスとの戦いの中で学んだ教訓があったからであった。

 国というのは、いったん決意すれば、どんな卑怯(ひきょう)な手でも使ってくる。
 かつての戦いでは、アシュタロスにエネルギー結晶を渡さないため、エネルギー結晶を自らの(たましい)の中にもつ美神令子を暗殺しようとしたこともあった。
 皮肉なことに、美神の暗殺を最終的に思いとどまったのは、敵であるアシュタロスが核ミサイルで世界各国を恫喝(どうかつ)したからであった。

 世界は違えども、国がすることはどこも同じである。
 この世界の日本国政府がネルフを(つぶ)すと決意した以上、軍隊を動員することは容易に予想できたし、そのための実行日時まで記された具体的な計画も立てていた。
 それを防ぐには、こちらも力で対抗する必要があったのである。

 その横島の要望に対し、神族と魔族の最高指導者は、横島らの期待を上回る内容で(こた)えた。
 すなわち、アシュタロスとの戦い以来となる神・魔族の合同チームが結成されたのである。
 その主力は、小竜姫率いる竜神族の部隊と、ワルキューレ・ジーク率いる魔界正規軍の特殊部隊であったが、その他にも横島の顔見知りの魔族も参加していた。
 その他にも、パラレルワールドの調査を名目に美智恵がGSの派遣を隠密裏に検討し、防御力の高い魔装術(まそうじゅつ)を使える雪之丞と、ヴァンパイア・ハーフのピートが選ばれたのである。

 過剰な戦力が集まったようにも思えたが、実際にはこれでも十分とは言えなかった。
 なぜなら、戦自のネルフ侵攻を防ぐと同時に、その(すき)にサード・インパクトを起こそうとするネルフ司令のゲンドウと、ゼーレの老人たちの謀略にも対処しなくてはならないからである。
 おそらくは、ぎりぎりの戦いになるだろうと、横島たちは考えていた。




 パピリオと雪之丞が、ケイジ付近の敵を一掃(いっそう)したため、シンジとトウジは無事ケイジへとたどり着いた。
 二人は、発令所からの遠隔(えんかく)操作でエントリープラグに入ると、すぐさまエヴァンゲリオンを起動させる。

「シンジ君、トウジ君、準備はいい?」

「「はいっ!」」

 ミサトの命令により、初号機と三号機はジオ・フロントに射出された。

「今のところ、ジオ・フロントに敵の姿はないわ。とりあえず、その場で待機して」

「あの、ミサトさん。一つだけ質問ええですか?」

 トウジが、ミサトに質問をしてよいか尋ねた。

(いそが)しいから、手短にね」

「敵って、どこのどいつなんですか?」

「当面の敵は戦自ね。でも、他にもいるわ」

「戦自って、戦略自衛隊のことですか!?」

 心底から驚いたトウジが、目を大きく見開く。

「そうよ。日本政府が、ネルフが悪いことをしてると信じて、軍隊を送り込んできたの」

「それって、ホンマの話ですか!?」

「もちろん、政府の誤解よ。
 でも、ネルフと政府との関係がこじれちゃって、こちらの言うことを信じてくれないのよ」

 ミサトの説明を聞いたトウジが、表情に落ち着きを取り戻した。

「ワシは、ミサトさんのこと、心の底から信じてますから!」

「ありがと。でも、誤解を解くにしても、まずは生き残ることが先決だから。
 シンジ君、トウジ君をきちんとフォローしてあげてね」

「わかりました」

 シンジが返事をすると、戦闘指揮で忙しいミサトはそこで通信を終了した。




 その日、国会は大紛糾(だいふんきゅう)した。
 ネルフ侵攻計画を発動するに際し、日本政府は情報が()れないよう綿密に準備をしていた。
 第三新東京市からは全ての民間人を退去させ、主要なマスコミには、ネルフへの取材活動を延期するよう根回しをしておいた。
 また、ネルフの誇るスーパーコンピューターMAGIについては、各国のMAGIクローンから攻撃をすることで、オリジナルのMAGIを乗っ取るか、少なくとも動きを封じることができるはずであった。

 しかしながら、いざ作戦が始まると、情報が漏れるどころかリアルな戦闘映像が、世界中の動画共有サーバーに次々に発信された。
 マスコミ各社には電子メールが送付され、国内の某匿名大手掲示板を始めとした国内・国外の有名電子掲示板に、戦自によるネルフ攻撃を告発する書き込みがどんどん行われる。
 たちまち、テレビのニュースでこの事件が報道され、さらにネットの世界でもこの話題でお祭り騒ぎとなった。
 特に、無抵抗なネルフの一般職員に戦自の兵士が容赦(ようしゃ)なく銃撃する映像に対して、国民の間から大きな怒りの声が出てきた。

 それに対する政府の対応は、完全に後手に回っていた。
 政府にとって運の悪かったことは、その日が国会の会期期間中であったことである。
 衆議院の予算委員会では、野党の質問者が矢継ぎ早に政府を糾弾(きゅうだん)する質問を行う。
 政府は、ネルフが独自にサード・インパクトを起こそうとしている情報を入手したためとの答弁を行ったが、無抵抗な一般職員への銃撃については弁解の余地がなかった。

 政府側は、野党の追求への対応でへとへとになってしまう。
 朝の9時から始まった予算委員会は、昼過ぎになってようやく休憩(きゅうけい)となったが、休憩所に引き上げた首相を待っていたのは、与党の長老政治家である潮音寺(ちょうおんじ)であった。

「これは潮音寺先生。こちらからお(うかが)いすべきところを、わざわざご足労いただき申し訳ありません」

「総理。時間がないから単刀直入に言おう。戦自のネルフ占拠(せんきょ)は、どこまで進んでいる?」

「戦自一個師団を動員したのです。
 人員も少なく、対人防衛設備も十分でないネルフの占拠は、時間の問題ではないかと」

「総理。私は、現状がどうなっているか聞いているのだ」

 潮音寺の鋭い眼光に気おされた首相は、背後に控えていた秘書を呼ぶと口頭で指示を伝えた。
 秘書はすぐさま退室したが、すぐに部屋に戻ってくると一枚のメモを首相に渡す。
 そのメモを開いた首相は、顔色がさっと青くなった。

「どうやら、戦自の攻撃が頓挫(とんざ)したようだな」

「ですが、こんなことはありえません! 再度、状況を確認しますので……」

「総理、現実を自分の目で見よ!
 完全に封じ込めたはずのネルフが、情報戦では完全に日本政府を圧倒しているではないか。
 どういう手品を使ったかは知らんが、軍事面でも戦自と互角に戦っている可能性が強い。
 いや。互角どころか、敗北する可能性すらあるとわしは思うが」

 潮音寺の気迫(きはく)(こも)った言葉に、首相は沈黙を余儀(よぎ)なくされる。

「午後から野党は、臨時の本会議開催を求めるらしい。本会議開催となれば、そこでは内閣不信任案
 が討議されるじゃろうな。内閣支持率は、午前中だけでも急落しておる。このままでは、与党の中
 からも不信任案に賛成する者が出てくるじゃろう」

「しかし、ネルフがサード・インパクトを起こそうとしている件は、どうなるのです!
 戦自が敗退したとなれば、ネルフの横暴(おうぼう)を止める者は誰もいなくなります!」

 首相が潮音寺に詰め寄ったが、潮音寺は片手を上げてそれを制した。

「その件なら心配はいらん。先ほど、ネルフの葛城作戦部長から、緊急事態につきネルフ司令と
 副司令の職務権限を凍結するとの声明文が、わしのところに届いた」

「まさか、ネルフ内部でクーデターが起きたのですか!?」

 潮音寺から思いがけない情報を聞き、首相はあっけに取られてしまう。

「うむ。トップ二人の食えない連中と異なり、葛城君はおかしな野望はもっとらんよ。
 それについては、わしが保証する」

 事態が予想外の展開となり、首相はがっくりと肩を落としたが、やがて顔を上げた。

「わかりました……どうやら、混乱を収拾するには、内閣を総辞職するしかなさそうですね」

「君には迷惑をかける。だが、真実が明るみに出れば、君への理解者も増えるじゃろう。
 なに、1・2年の辛抱じゃよ」

 首相は席を立って姿勢を正すと、潮音寺に向かってさっと一礼する。
 それを受けた潮音寺は、まるで好々爺(こうこうや)のような笑顔でうむうむとうなずき返した。




「こ、この、化け物ーーーっ!」

 戦自の兵士が、ネルフの保安諜報部の制服を着た背がひょろ長い男に、銃を乱射した。

「お、おまえ、おとなしく捕まるんだな」

 しかしその男は、銃弾をものともしなかった。
 服に弾丸の穴が次々にできていったが、男は気にも留めずに一歩ずつ前身していく。

「ヒッ!」

 とうとう、銃が弾切れとなってしまった。
 兵士は、弾倉(だんそう)を交換している余裕がないと判断すると、背を向けてその場から撤退(てったい)しようとする。

「に、逃がさないんだな」

 男の顔が突然、後頭部に二本の角が生えたトカゲのような顔に変化した。
 同時に、両腕がまるでゴムのようにニュッと伸び、逃げようとした兵士の両足を(つか)んだ。

「うわっ!」

 足首をがっちりと掴まれた戦自の兵士は、顔面から勢いよく床にぶつかってしまい、そのまま気絶してしまった。

「食らえっ!」

 同じ通路の先で、同じく二本の(つの)を頭に生やし、背が低くてずんぐりした体型の男が、角から電撃を飛ばした。
 その電撃を食らった戦自の兵士二人が、衝撃(しょうげき)で失神し、床に倒れた。

「イーム、ヤーム! そちらは済みましたか?」

 そこに、神剣を引っさげた小竜姫が駆け寄ってきた。

「へい! こっちは片付きましたでやす」

「ぜ、全部、やっつけたんだな」

 小男のヤームと、長身でひょろっとしたイームが、小竜姫に答えた。

「まだまだ、敵は残ってるわ。頑張って、侵入者を全部捕縛(ほばく)するのよ!」

「がってんでさ!」

 小竜姫の指示に、ヤームが親指をぐいっと立てて応えた。




 同じ頃、地上ではワルキューレ率いる別働隊が、戦自の戦車やロケット車両など、戦闘車両への攻撃を始めていた。
 第十五使徒戦後、住民がいなくなった第三新東京市は、壊れた建物や瓦礫(がれき)が存在し障害物にはことかかない。
 魔族の部隊は障害物に身を隠しながら、魔界正規軍の正式装備である対物(たいぶつ)ライフルでもって、戦自の戦車を次々に狙撃する。
 最新の複合装甲(そうこう)も弾丸に込められた魔力の前には無力であり、エンジンを破壊された戦車が一台、また一台と動かなくなった。

 歩兵部隊の主力がネルフ本部攻略に向けられたため、戦車に随伴(ずいはん)していた歩兵は数が少なかった。
 また、魔族に立ち向かったその歩兵部隊も、ネルフ本部で戦っていた兵士たちと同様、魔族には歯が立たず、たちまち追い払われてしまう。
 窮地(きゅうち)(おちい)った戦車隊は、師団本部に増援を要請した。

「敵を、空から蹴散(けち)らせ!」

 師団長の命令で、VTOL機と攻撃ヘリが出動する。
 だが、彼らを待ち受けていたのは、これまた予想外の相手だった。

「ようやく、私の出番だね」

 ワルキューレたちの後方で待機していたベスパが、すっくと立ち上がった。

妖蜂(ようばち)ども、お行きっ!」

 ベスパが用意していた蜂の巣から、ベスパの眷属(けんぞく)である妖蜂たちが飛び出した。
 妖蜂たちは敵に体当たりで攻撃するため、徹甲弾(てっこうだん)のような形状の乗り物に入り、羽を外に出して空中を飛行している。

姐御(あねご)の出撃命令だ!」

「みんな、気合を入れていけ!」

「うおりゃーーっ!」

 戦自のVTOL機や攻撃ヘリに、妖蜂たちが突撃した。
 妖蜂は、VTOL機や攻撃ヘリのコクピットをぶち破って、中にいた操縦者を攻撃する。
 操縦不能に陥った戦自のVTOL機、そして攻撃ヘリが、緊急着陸をするため次々に戦線から脱落(だつらく)していった。




「バ、バカな……」

 航空部隊全滅(ぜんめつ)の報告が届くと、戦自の師団長と副官、そして幕僚たちは、唖然(あぜん)として言葉を失ってしまった。
 ネルフ本部に突入した主力部隊は全て連絡が途絶え、地上に展開していた戦車隊は大半が撃破、対地攻撃用のVTOL機や攻撃ヘリも全て蹴散らされている。
 圧倒的な戦力差があったはずなのに、気がつけば戦況が完全にひっくり返されていた。
 第三新東京市に展開した戦自の師団は、戦闘を続行する手段を全て失ってしまった。

「はい。こちら師団本部です」

 そのとき、副官がもっていた野戦電話に、連絡が入った。

「師団長。統合幕僚長から電話です」

 師団長は電話の相手と短い会話を交わすと、受話器を置いてから幕僚たちに告げる。

「撤退命令が出た。作戦を中止だ。
 残存する部隊に連絡をとって、速やかに第三新東京市から離れるように」

 だが、眉間(みけん)(しわ)を寄せていた師団長の顔には、無念さがありありと(にじ)み出ていた。







『地上に展開していた戦自の部隊が、撤退します』

 日向の報告を受けたミサトは、ジークに連絡をとった。

「春桐君、そっちはどう?」

「戦自の組織的抵抗は、ほぼ無くなりました。
 現在、逃亡した兵士が本部内に潜伏していないか、捜索(そうさく)中です」

「わかったわ。そっちも念入りに頼むわね」

「了解しました」

 携帯での会話を終えると、ミサトが発令所メンバーに告げた。

「ネルフ本部に侵入した敵は、ほぼ掃討(そうとう)されたわ」

 それを聞いた日向と青葉が、おおっという声をあげた。

「俺たち、本当に戦自に勝ったんですか!?」

「ええ、間違いないわ」

「葛城さん。いったい、どんな手品を使ったんですか?」

 マヤの質問に、ミサトは自信満々な表情で答えた。

「実はね、加持君の伝手で、腕利(うでき)きの外人部隊を手配しておいたのよ。
 戦自の精鋭部隊も、彼らの前では形無しだったってわけ」

「加持さん、大手柄でしたね」

 加持は、発令所上部の司令席に拘束していた冬月を見張っていたが、マヤはその加持に向かって、下にあるオペレーター席から満面の笑顔で見上げた。

(ま、本当は外人部隊というより、“人外部隊”と言うべきかもね)

 勝利に()くオペレーターたちを見ながら、ミサトは一人ほくそ笑んでいたが、すぐに表情を引き締めた。
 ミサトは、携帯に擬装(ぎそう)していた小型通信機を取り出し、ジークに連絡を入れる。

「春桐君、地上の部隊をすぐに撤収(てっしゅう)させて……ええ、ネルフ本部まで後退させてかまわないわ。
 そろそろ敵も、切り札を使ってくるはずだから」




『戦略自衛隊は、撤退したか』

『ふん。もう少し使えるかと思っていたが、期待外れだったな』

『碇め。予想より粘りおるわ』

 戦略自衛隊撤退の報告が届いた後、ゼーレのメンバーたちの発言が相次いだ。

『やむを得ん。ネルフの毒には、より強力な毒をもって対抗することにしよう』




 キール議長の発言の後、駿河湾で待機していた国連軍所属の潜水艦から、N2爆弾を搭載(とうさい)したSLBMが発射された。

 上空高く飛んだミサイルが落下したのは、第十六使徒戦で零号機の自爆によって作られた、芦ノ湖の近くのクレーター状の穴の中だった。

 穴の底に落下した弾頭は、その場では爆発しなかった。
 零号機の爆発で損傷した特殊装甲板は、その後の修理で入れ替えられていたのだが、その工事を担当した業者にゼーレの手が回っていた。
 修理用の特殊装甲板の中が、衝撃に反応して容易に壊れる素材に入れ替わっていたのである。
 SLBMの弾頭は、全22層の装甲板の内、地上から十番目にある第十層の装甲板で爆発した。
 N2爆弾の爆発の高熱で周囲の装甲板が一瞬で蒸発し、さらに爆発の衝撃で奥の装甲板にもダメージを与えた。

「きゃっ!」

「うわっ! 今度は何だ!」

 その衝撃はすさまじく、戦自との戦いの勝利で沸いていた発令所も大きく()さぶられた

「みんな、持ち場に戻って! まだ戦いは半分終わったばかりよ」

 ミサトの命令一下、オペレーターたちが自席へと戻る。
 連続して、潜水艦からN2弾頭搭載のSLBMが発射され、三発目でとうとうジオフロントにまで穴が開いてしまった。

「第三新東京市上空に、飛行物体を複数確認! ジオフロントに侵入します!」

 日向が、発令所のメインスクリーンの表示を切り替えた。
 そこに、上空を飛んでいたウィングキャリアから、巨大な物体が切り離される様子が映し出される。
 人型をしたその白い物体は、背中についていた大きな白い羽を広げて滑空(かっくう)すると、装甲板に開いた大穴からジオフロントに侵入していった。







 ジオフロントに侵入した白い人型の物体は、全部で9体。
 それらは、ネルフ本部の上空を中心にして円を描くように滑空していたが、やがて一つずつ地上へと降り立った。

「ミサトさん、あれは一体なんでっしゃろ?」

 トウジがミサトに尋ねた。

「あれはエヴァシリーズ、量産型のエヴァンゲリオンよ。
 S2機関を搭載していて、アンビリカルケーブルが無しで無制限に動けるわ」

「敵とちゃうんですんか?」

「あれは敵よ。一体残らず破壊して」

 地上に降り立ったエヴァ量産機は、広げていた羽を背中に収納すると、初号機と三号機の方を振り向いた。
 彼らは、両刃の大剣を二本、()を中心にして(つな)ぎ合わせた形状の武器をもっていた。

「アレにも、ワシらみたいなパイロットが乗っとったりしまへんか?」

「その心配は無用よ。
 量産型のエヴァはパイロットの代わりにダミーシステムを使っているから、破壊して問題ないわ」

 ミサトはトウジへの説明を終えると、初号機の通信画面と向き合った。

「シンジ君。敵の包囲網が(ちぢ)まる前に、一点突破して。
 ジオフロントの中を走り回って、乱戦に持ち込むのよ」

「わかりました」

「トウジ君は、初号機のサポートをお願い。
 それから、アンビリカルケーブルの残りの長さに注意して。
 ケーブルがなくなる前に、早めに電源ビルの切り替えるのよ」

「了解!」

 シンジは、横島から預かっていた『同』『期』の文珠を使った。
 文珠の力で初号機に直接シンクロしたシンジは、初号機の右手に霊波刀、左手にサイキック・ソーサーを出現させる。

「いきますっ!」

 シンジは初号機で駆け出すと、正面にいたエヴァ量産機に攻撃した。
 初号機の接近に気づいた量産機が、大剣を振り上げて初号機に斬りかかってきたが、シンジは左手のサイキック・ソーサーでその攻撃をがっちり受け止めると、すかさず空いていた相手のわき腹を、右手の霊波刀でざっくりと切り()いた。

「うぉぉりゃあっ! ナニワの男の根性、見せたるわい!」

 初号機の後ろにいた三号機が、初号機に近づこうとする別の量産機に向けて、パレットライフルを乱射する。
 そのうちの一機が三号機が発射した弾を全身に浴び、血飛沫(ちしぶき)をあげながらもんどりうって倒れた。




「思っていたより、敵の動きが鈍いですね」

 発令所でエヴァ量産機との戦いをモニターしていた日向が、そう感想を述べた。
 今回が初陣となる三号機はともかく、高いシンクロ率を維持し俊敏(しゅんびん)な動きを見せる初号機に対して、量産機は遅れをとっていた。

「油断はできないわ。数ではまだ、こちらが劣勢なのだから」

 パレットライフルを撃ちつくした三号機が、近くの武器庫ビルに駆け寄り、大型のライフルを取り出す。

「三号機、電源ケーブルの長さが限界に達しました」

「三号機のケーブルをパージして!」

 ミサトの指示に従い、マヤが三号機の電源ケーブルを遠隔操作で外した。

「トウジ君! その場所から初号機に援護(えんご)射撃を!」

「は、はいっ!」

 まだ実戦に慣れないトウジは、内部電源に切り替わって、活動限界へのカウントダウンが始まったことに、(あせ)りを感じていた。

「トウジ君、落ち着いて。エヴァはすぐには止まらないから、大丈夫よ。
 本当に残り時間が少なくなったら、こちらから指示を出すから」

「わかりました!」

 トウジは、三号機でライフルを構えると、初号機に接近しようとする量産機に向けて発砲する。
 思わぬ方角からの攻撃に、ダメージを受けた量産機は、大剣で身を(かく)しながら引き下がった。

「今のうちよ。近くの電源ビルでケーブルを再接続して」

 トウジは、ライフルをもったまま三号機の向きをクルリと変えると、斜め後ろにある電源ビルに向かって走り出させた。




 シンジは、量産機との戦いを終始優勢に進めていた。
 最初の量産機の包囲網(ほういもう)を突破した後、シンジはミサトの指示に従い、ジオフロント内を存分に駆け回って、敵をかく乱させる。
 三号機の方に行かせないよう敵をうまく誘導(ゆうどう)しながら、隙を見つけては霊波刀で相手にダメージを与えていった。

「シンジ! そこから離れるんや!」

 初号機がその場から飛びのいた瞬間、三号機によるポジトロン・ライフルの攻撃が、初号機の目の前にいた量産機の右足を付け根から吹き飛ばした。
 たまらず量産機が地面に崩れ落ちたところに、初号機が霊波刀を胴体に突き刺してその動きを停止させた。

「シンジ君!」

 初号機と三号機の連係(れんけい)攻撃が軌道(きどう)にのってきた頃、緊急時に使用する最優先の通信ウィンドウが初号機に開かれた。

「シンジ君、彼から連絡が入ったわ。シンジ君はすぐに、セントラル・ドグマに向かって」

「わかりました」

 戦いがいよいよ大詰めを迎える――それを知ったシンジの表情が、より真剣なものとなった。

「シンジがドグマに!? 初号機がおらなったら、ワシ一人でアイツらと戦うんですか!?」

 戦闘可能な量産機は、まだ半数以上残っている。
 勇気はあっても、実戦経験に(とぼ)しいトウジは不安を感じた。

「心配しないで。もうすぐアスカの弐号機が、援軍にやってくるわ」

「ホンマですか!?」

「弐号機が出撃するまで、あと数分間かかるの。
 トウジ君は、弐号機の出撃準備が整うまで、時間を(かせ)いで」

「わかりました!」

 トウジは、三号機が持っていたポジトロンライフルを投げ捨てると、足下に転がっていた量産機の武器である大剣を拾い上げた。
 一方、シンジは初号機の両手にサイキック・ソーサーを作ると、それを間近にいた二体の量産機に向かって投げつける。
 サイキック・ソーサーの爆発で敵の動きが止まった隙に、シンジは初号機を戦闘エリアから離脱させた。




 レイは、いつもの中学の制服を着た姿でゲンドウと落ち合うと、二人でターミナル・ドグマに直通するエレベーターに乗り込んだ。

 エレベーターが降りる途中に、ゲンドウは横に立っていたレイの顔をちらりと一瞥(いちべつ)した。
 レイの(ほほ)は普段より青白く、また能面のような表情には一切の感情を読み取ることができなかった。
 ゲンドウは、レイの様子を確認すると、安心したかのように視線を正面へと戻した。

 やがて、エレベーターが最下層に達した。
 二人の正面には、七つ目の仮面を被り、巨大な十字架に(はりつけ)にされた巨人――第二使徒リリス――が見える。
 だが、二人がリリスのいる場所に向かって進みだしたとき、その行く手を(はば)む者が現れた。

「お待ちしておりましたわ」

 沈鬱(ちんうつ)な表情を浮かべながら、ゲンドウとレイの前に姿を現したのは、リツコだった。
 リツコは白衣のポケットから拳銃を取り出すと、20メートルほど離れた場所からゲンドウに銃口を向けた。

「ごめんなさい。あなたに(だま)って、先ほどMAGIのプログラムを変えさせてもらいました」

 ゲンドウは無言のまま、リツコと向き合い続ける。

「娘からの最後の頼みよ。母さん、一緒に死んでちょうだい」

 右手で拳銃を構えていたリツコは、空いていた左手でMAGIの携帯端末を握り締め、ボタンを押して自爆の指示を出した。

「……反応しない?」

 リツコが携帯端末の画面を見た。
 すると、リツコの出した自爆指令は、メルキオール・バルタザール・カスパー、三台のMAGI全てが否決していた。

「MAGIが言うことを聞かない! どうして!?」

 慌てたリツコは、携帯端末のボタンを何度も押して、自爆指令を繰り返し出した。
 だが、その全ての指令を、MAGIは否決してしまった。

 呆然(ぼうぜん)としたリツコの表情を見て、ゲンドウが(ふところ)から拳銃を抜き出した。
 最後の望みを絶たれたリツコの顔に、絶望の色が色濃く浮かび上がる。
 そして、ゲンドウが銃の引き金を引こうとしたその時、突然上の方から男の声が聞こえた。

「ああもう、どうしてこうややこしい状況になっちまうのかな。
 せっかく、こう決めゼリフをビシッと決めながら、颯爽(さっそう)と登場しようと思ってたのに」

「誰だ!」

 ゲンドウがリツコに銃を向けたまま、声のした方を振り向いた。
 すると、七つ目の仮面を被ったリリスの首の後ろから、右手で髪の毛をかきむしりながら、(ひたい)にバンダナを巻いたジージャンにジーパン姿の若い男が姿を現した。







 ゲンドウは、リリスの肩の上に乗っている横島に、拳銃を向ける。
 だが、横島は銃を恐れていないのか、平然と立っていた。

「貴様、どこの組織の者だ?」

「職業、ゴーストスイーパー。美神除霊事務所所属……って言っても、わかんねえよな、きっと」

「もう一度聞く。どこの手の者だ? ゼーレか、それとも日本政府か?」

「どっちでもないんだけど……そうだな。しいて言えば、シンジの味方ってとこか」

 横島は、正義の味方と言おうかと一瞬思ったが、別段自分が正義であるつもりはなかったので、そう言い換えた。

「答えるつもりはなさそうだな」

 ゲンドウが、連続して銃の引き金を引く。
 だが、横島はサイキック・ソーサーを出すと、命中しそうな弾をすべて(はら)いのけた。

「光の盾!」

 横島の手にあるサイキック・ソーサーを見たリツコが、目を大きく見開いた。

「ここに、何の用だ!?」

「まあ、あんたがやろうとしていることを、邪魔しに来たってことさ。
 ところでカヲル、例のものは見つかったか?」

 そのとき、この空間の暗がりからカヲルが姿を現した。
 ワイシャツに学生ズボンをはいていたカヲルは、ポケットに両手を突っ込みながら、ゆっくりと明るい場所へと歩いていく。

「この距離なら間違いないね。碇司令の右手から、アダムの存在を強く感じる」

「貴様! 使徒の手先だったのか!」

 ゲンドウが、横島を強く(にら)んだが、

「いや、それは少し違うよ。
 彼が僕の仲間になったんじゃなくて、僕が彼の仲間になったってことさ」

 (すず)しげな表情をしたカヲルが、横島の代わりに答えた。

「なん……だと」

 その時だった。
 唖然と立っていたゲンドウの隙を狙い、リツコが再び銃を構えた。
 しかし、その気配を(さっ)したゲンドウが、リツコに向かって左手の手のひらを向ける。
 多くの(しわ)が刻まれたその手のひらの中央に、大きな目玉がギョロリと目を開けていた。

 タン、タン!

 リツコがゲンドウに向かって銃を撃ったが、ゲンドウの手のひらのすぐ先に、赤い八角形をしたATフィールドが展開された。
 リツコが撃った弾は、ゲンドウのATフィールドによって無効化されてしまう。
 リツコが立ちすくんだその隙に、今度はゲンドウが銃を撃った。
 ゲンドウの撃った弾が、拳銃をもったリツコの右手をかすめると、リツコは銃を落としてしまう。
 リツコは左手で右手の傷を押さえながら、床へと崩れ落ちた。

「赤木博士!」

 今まで、ゲンドウの隣に立っていたレイが、リツコに向かって駆け寄ったが、

「レイ、行かなくてもいい」

 ゲンドウに呼び止められ、途中で足が止まってしまった。

「なるほどね。禁じられたアダムとリリスの融合(ゆうごう)。それが、碇司令の切り札ってわけか」

「だから、どうした。おまえの欲しがっている物は、私の手にある。
 いざとなったら、ターミナルドグマごと爆破することもできるのだ」

 ゲンドウが、懐から小さなリモコンを取り出した。

「これは、MAGIを通さず、直接起爆装置に結びついている。
 ここにあるN2爆弾すべてを爆発させれば、おまえとて無事では済むまい」

「まあ、たしかにそうなんだけどね。どうしようか、横島さん?」

 カヲルが、栄光の手をロープのように使って、リリスの肩から降りてきた横島に話しかけた。

「もう少しだけ待とう。そろそろ、最後の主役が到着する頃だ」

 そのとき、横島たちの耳にザッパーンと巨大な何かが、LCLの湖に着水する音が聞こえた。
 しばらくすると、初号機がこのターミナルドグマに姿を現した。

「父さん……」

「シンジか」

 ゲンドウが、強張(こわば)った表情を崩さないまま、間近にそびえ立つ初号機を見上げた。

「シンジ、あの使徒を殲滅(せんめつ)しろ。今すぐにだ!」

「それは、できません。父さん」

「何故だ!」

「カヲル君は、僕の友達だから。友達を殺すなんて、僕にはできません」

「シンジ!」

 だがシンジは、ゲンドウの言葉を無視すると、レイに向かって初号機の手を伸ばした。

「綾波、一緒に行こう。上で、僕たちの仲間が戦っている」

「レイ。欠けた心を補完(ほかん)するには、この道しかない。
 肉体をもつ限り、おまえ自身もまた、空虚(くうきょ)な感情から逃れることはできん。
 私を受け入れるんだ、レイ。
 ATフィールドを、心の(かべ)を解き放ち……そして、私と共にユイの所に行こう」

 レイは、ゲンドウの方を振り返ると、ゆっくりとかぶりを振った。

「私は、行きません」

「レイ!」

「私の空虚な心は、碇君が満たしてくれました。
 碇君が私を(おも)ってくれる心が……そして、私が碇君を想う心が」

「待つんだ、レイ!」

 ゲンドウが、レイに向かって手を伸ばした。
 だが、その手は途中で止まってしまう。

「ATフィールド……」

 ゲンドウとレイの間に、(うす)い光の(まく)が張られていた。

「レイ、おまえまで私を拒絶するのか。ならば……」

 ゲンドウは、左手に姿を現したアダムの力でATフィールドを展開した。
 ゲンドウのATフィールドが、レイのATフィールドに侵食(しんしょく)していく。
 ATフィールドを(おか)されたレイは、苦しそうに「ううっ」とうめいた。

「カヲル、何とかならないか!?」

「今やってる! だけど、碇司令のATフィールドは、予想以上に堅固だ」

 カヲルもATフィールドを展開していたが、有効範囲こそ狭いもののゲンドウのATフィールドは固く、カヲルのATフィールドの圧迫(あっぱく)にも耐えていた。

(まいったな……どんな事情があるのか知らないけど、世界との拒絶感がこれほどまでに強いとは)

 狭くて堅固なATフィールド。それはまるで、ゲンドウの心象(しんしょう)風景が具現化(ぐげんか)されたようだと、カヲルは感じていた。

「綾波っ!」

 レイの苦しむ顔をみたシンジは、初号機の手を伸ばしてレイを助けようとしたが、その前に横島が駆け出していた。

「これ以上、好きにさせてたまるか!」

 横島に視線を向けたゲンドウが、横島の前にATフィールドを展開する。
 だが、横島は止まらなかった。

「碇ゲンドウ、よく覚えておけ! ATフィールドを打ち破るのは、霊力だってことを!」

 横島の右手にあった栄光の手が、霊波刀の形状へと変化した。

「光の剣だと!? まさか……」

「やっと気づいたか。だが、もう遅い!」

 横島が、右手の霊波刀を斜めに振り下ろした。
 ゲンドウのATフィールドが、パリンと音をたてて崩壊(ほうかい)する。
 横島とゲンドウの間を(へだ)てるものは、もう何もなかった。

「シンジは優しいからな。おまえみたいな父親でも、手を上げられないだろう。
 だから、俺が代わりに、貴様をぶん(なぐ)る!」

 横島は、霊波刀を栄光の手に戻してから、右手を大きく振り上げた。
 そして、たじろぐゲンドウの顔に、栄光の手の(こぶし)を思い切り(たた)きつける。
 後ろに数メートル飛ばされたゲンドウは、背中から床に倒れると、気絶してそのまま動かなくなった。




 ゲンドウが殴られる姿を見たとき、シンジは一瞬心に痛みを覚えたが、だからといって横島を止めようとは思わなかった。
 もし横島が動かなかったら、初号機を使ってまでも、シンジはレイを助けようと思っていたからである。

「横島さん、父さんは大丈夫ですか?」

「ああ。ただ、気を失ってるだけだ」

 横島は、床に伸びていたゲンドウの手から、自爆用のコントローラーを奪い取った。
 そして、待機していた魔族の兵士に、ゲンドウの身柄(みがら)を引き渡す。
 魔族の兵士たちは、ゲンドウの体を担架(たんか)()せると、別の場所に連れていった。

「シンジ。おまえはレイちゃんを連れて、先に地上に戻れ。俺も後で行くから」

「わかりました」

 シンジはレイを初号機の手に乗せると、首の後ろのエントリープラグの入り口まで手を回した。
 レイは初号機のエントリープラグに入ると、学生服のままで、デュアルシンクロ用に改造されたエントリープラグの自分の席に座った。

「綾波、準備はできた?」

「ええ。いつでも大丈夫」

 シンジは初号機をターミナルドグマから移動させ、メインシャフトの直下の場所まで戻ると、発令所のミサトから通信が入った。

「シンジ君。今、上るためのワイヤーを下ろすわ」

「いえ、ワイヤーは要りません。自力で上ります」

 シンジは、横島から聞いた初号機の本来の姿を強くイメージする。
 六対、十二枚の(つばさ)を広げて、大空を飛ぶ姿を。
 レイもまた、心を無にして、シンジの思いに合わせた。

「飛ぶよ、レイ」

「ええ、碇君」

 グググッという音ともに初号機の背から伸びた12枚の翼が、重力の(しば)りから初号機を解放し、その巨体を空中へと浮かび上がらせる。
 やがて初号機が、すさまじいスピードで、メインシャフトを上昇していった。




 横島は、翼を広げて地上に飛び立っていく初号機を見送ると、(ほう)けたような表情で、床にペタンと座っていたリツコに近寄った。

怪我(けが)は大丈夫ですか、リツコさん?」

 横島がリツコに声をかけると、ようやく我に返ったリツコが横島の方を振り向いた。

「ええ。痛みはあるし、出血もひどくはないから、重傷ではないと思うわ」

 リツコは、痛覚(つうかく)があるから神経は切れていない、また出血の量から動脈も傷ついてなさそうだと自己診断した。
 横島も、文珠を使って治すほどのケガでないと判断すると、残っていた兵士の一人に医療班を呼ぶよう頼んだ。

「あなたが、横島君ね」

「ええ。横島忠夫って言います」

「そして、シンジ君を裏から操っていた、黒幕(くろまく)的存在かしら?」

 横島はリツコからそう言われると、困ったような顔をしながら、片手で頭の後ろをポリポリとかいた。

「黒幕って呼ばれるほど、立派なモンじゃないっすよ。
 俺はただ、生きようと必死になってもがいていたシンジや他の人の背中を、ちょっとだけ押したり
 支えたりしていただけのことですから」

随分(ずいぶん)と、謙虚(けんきょ)なのね」

 次の瞬間、傷が痛んだのか、リツコが顔を強くしかめた。

「大丈夫ですか?」

「聞きたいことが山のようにあるけど、とりあず一つだけ教えて。
 どうやって、私に気づかれずに、MAGIの制御を奪い取ったの?」

「リツコさんが知らなくて、俺たちが知っていることの一つに、霊的な存在があります。
 俺たちは赤木ナオコさんの(れい)に接触して、深層催眠(さいみん)をかけたんです。
 MAGIを事実上支配していたのは、ナオコさんの霊でしたから」

「そう……母さんは体を失っても、MAGIに(とど)まり続けていたのね……
 結局、私は母さんの呪縛(じゅばく)から、逃れられなかったわけか……」

 リツコの目から、一筋の涙が流れ落ちる。
 リツコは、医療班の担架で運び出されるまで、横島の胸を借りて泣き続けていた。



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