GS美神 女子高生大作戦!

作:男闘虎之浪漫

レポート3.ゴーストスイーパー六道冥子登場!



「きょ、共同作戦!? そんな話、全然聞いてないけど……」
「私は横島クンと一緒にお仕事できるのを、楽しみにしてたのよ〜〜。そんな言い方ないじゃないの〜〜」

 新築マンションの除霊の仕事で現場にやってきた横島たちを待っていたのは、依頼元の不動産会社の担当者と一人の妙齢(みょうれい)の女性であった。

「建物の相が悪かったらしく周辺の霊がすべて集まってきてしまったのです。なにしろ千体以上も除霊するのですから、早急に作業をするためにも人手が多い方がよいかと思いまして……」
「それで私が横島クンを呼んだ方がいいって言ったの〜〜。お願い〜〜いいでしょう〜〜?」
「で、でも同業者は俺だけじゃないし、できれば他をあたって欲しいんだけど……」
「横島クンがいいの〜〜! 横島クンじゃないとイヤ〜〜!」

「あの〜〜、お兄様。そちらの方はお兄様のお知り合いですか?」
「知り合いというか、同業者だな」
「ひどお〜い。お友達じゃないの〜〜」
「えーと、美神令子です。横島『お兄様』の助手をしています」
「はじめまして〜〜。六道冥子(ろくどうめいこ)です〜〜」

 しつけが良いのか、年下の令子にもていねいに挨拶(あいさつ)をする。
 年齢はおそらく横島と同じか、若干上くらいであろう。
 体つきはほっそりとしており、少女のようなあどけない顔をしている。

(この女、要注意だわ!)

 令子の直感が、冥子が強力なライバルになる可能性を警告する。しかし……

「あの〜〜、そんなに殺気立つと〜〜」

 冥子の周囲に複数の強い霊気が出現し、いっせいに令子に襲いかかった。

「キャーー!」
「霊の気配でこのコたち敏感になってるんで危ないですよ〜〜」

 令子は電気を帯びた黒い蛇に巻きつかれ、1メートルくらいの大きさの化け物に頭からかじりつかれてしまった。

「冥子ちゃんは、『式神使い』といって12匹の鬼を自在に操る能力があるんだ」
「あ〜〜、だめですよ〜〜あなたたち〜〜」

 横島が飛び込んで、何とか鬼を引き離す。

「そんなことより横島クン〜〜、一緒にお仕事してよ〜〜」
「私は反対です!」

 式神によって死にかけた令子が、その言葉に反発する。

「でないと〜〜、私〜〜」

 冥子が目元にじわりと涙を溜める。

「わかった! やる! やります!」
「だから横島クン好き〜〜」

 冥子が横島の腕を掴んでにっこりと笑った。

「なんだか、とっても納得いかないわ!」
「なんのかんのいっても、横島さんって優しいんですね〜」
「いや、おキヌちゃん、式神使いの恐ろしさを知らないからそんなこと言えるんだ……」

 横島は、少しひきつった表情をしていた。




 依頼元の企業の担当者が、建物の状況について説明を始めた。

「このマンションは採光を考えて、上の階へ行くほど面積が小さくなっています。ユニークなデザインにしようということで複雑な多層構造にしたんですが……」
「最上階のこの部分が、霊を呼び込むアンテナになっているんだな。これでは祓っても、後から霊がどんどん集まってしまう」
「だから〜〜私がまわりの霊を食い止めている間に〜〜、横島クンが結界を作って〜〜霊の侵入を止めて欲しいの〜〜」
「その後、二人で残った霊を除霊するわけだね。よし、じゃ早速とりかかるか!」

 横島は荷物からお札と霊体ボーガンを取り出し装備する。

「すご〜〜い。横島クンって攻撃系の道具をほとんど使えるのね〜〜」
「でも神通棍は使わないんだ。代わりに霊波刀があるからなんだけど」
「私なんかゴーストスイーパーっていっても、自分では何もできないのよ〜〜」
「それでは、私とあまり変わらないですね。冥子さん」
「令子ちゃん、冥子さんは式神が使えるだけで“十分”凄いんだ。まぁ、見ていればわかるよ」

 横島と令子、それに冥子はマンションの入り口に向かった。
 外から眺めいても、中で悪霊がうごめいていることがよくわかる。

「バサラちゃ〜〜ん、頼むわよ」

 冥子の背後から、身の丈3メートルほどの黒い物体が出現した。
 全身が黒い毛で覆われ、頭部のあたりに白い目がついている。

「キャッ!」
「冥子ちゃんの式神のバサラさ。霊を吸い込む超強力掃除機って感じかな」

 三人と一体の式神が建物の中に入った。

「誰だ……」
「誰だ誰だ……」
「近寄る者はコロス!」

 一斉に悪霊たちがざわめき出した。

「バサラちゃ〜〜ん、お願〜〜い」

 ンモーーーー!!

 冥子の声に応えてバサラが大きな声をあげる。
 そして大きく口を開けると、強烈な吸引力で周囲の霊をことごとく吸収した。

「こ、これ、なんなんですか!」
「相変わらず、すさまじいねーー」

 (あわ)てる令子とは対照的に、横島はこの光景を見なれているためか、落ち着いた様子である。

「インダラ! サンチラ! ハイラ! 出ておいで〜〜」

 冥子の声とともに、黒い一角獣と同じく黒い蛇、そして全身を白い毛で覆われた犬ほどの大きさの式神が出現する。
 冥子は体を横向きにしてインダラの上に乗ると、マンションの階段を上りはじめた。

「このお馬さんみたいなのがインダラで、蛇がサンチラ、白いのがハイラって言うの」

 冥子が初めて式神を見る令子のために説明をする。

「横島ク〜〜ン、一緒に乗らない?」
「おかまいなく」
「私もけっこうです!」
「8階まで行くのよ〜〜」

(どっちが悪霊だかわかりゃしない)
(本当にね!)

 横島も令子も、感想は同じようだ。


「思い出すわ〜〜。横島クンと始めて会ったのも、こうしてインダラに乗ってる時だったわね〜〜」
「そうだったっけ?」
「ほら〜〜、ゴーストスイーパーの資格を取りに、国家試験受けに行ったときよ〜〜」



「ん、何だか後ろの方が騒がしいな」

 試験会場で受付を済ませた横島は、後ろの方で何か騒動が起きていることに気づいた。

「どれどれ……」

 会場の入り口は受験者やその付き添いでごった返していた。
 その人ごみの中を、一角獣にまたがり多くの化け物を引きつれた女性が進んでいく。
 あまりの禍々しい気配に、周囲の人たちは思わず脇へよけ道を譲っていた。

「そこのお姉さん、他の人の迷惑になるから、こんなところで式神は出さない方がいいんじゃないかな?」
「あの〜〜、試験会場はここでいいのかしら〜〜」
「受付はこっちだよ」
「人に道を聞いてもみんな逃げちゃうから〜〜、とっても困っていたんです〜〜」
「いいから早く式神をしまって! 俺が案内するから」
「優しいのね〜〜」




「うれしかったわ〜〜。私に声をかけてくれる人なんか初めてだったんですもの〜〜」

(絶対失敗だったな)

「お兄様って、昔から『女の人』には優しいかったんですね!」

 令子が少し嫌味のこもった口調で話す。

「いや、俺はただあの場の騒動を収めようとしただけなんだけど……」
「ほんとよ。横島クンには何でもないことだったかもしれないけど、私は本当にうれしかったの」

 冥子が少しうつむきながら話した。
 一瞬、冥子が可憐な表情を見せる。
 その表情を見た横島は、思わずドキッとしてしまった。

「お兄様〜。何見とれているんです〜」

 令子が横島の頬をギュッとつねる。

「痛ててて! 何でもないよ、令子ちゃん」
「でも〜〜、どーして他の人は私のこと避けるのかしら〜〜。いまだに分からないわ〜〜」

 その時、横合いから1体の悪霊が横島めがけて突っ込んできた。
 横島は身構えるが、その前にハイラが悪霊を攻撃して撃退する。

「冥子ちゃん! 霊の数が多すぎてバサラの吸引力が弱まっているみたいだ。先を急がないと!」
「わかったわ〜〜」




 横島と令子、そして冥子と式神たちは、ビルの最上階に到着した。

「結界を作るから、それまで悪霊たちを抑えといて!」
「はい〜〜」

 冥子を中心にして、バサラ・インダラ・ハイラ・サンチラが散開した。
 バサラは霊を吸引し、サンチラは電撃で、インダラとハイラも各々の能力でもって悪霊を攻撃する。

「念!」

 式神たちが悪霊を攻撃している隙に、横島が部屋の周囲に札を貼りはじめた。
 令子は邪魔にならないように、部屋の隅に退避する。

「あと3枚!」
「急いでね〜〜。みんなそろそろバテてきたわ〜〜」

 大量の悪霊を前にして、式神たちも疲れを見せていた。
 特に、バサラの吸引力が目に見えて弱くなってきている。

(あっちじゃ! あっちの女じゃ!)
(連れとる化け物は強いが、あいつ自身は弱いぞ……)
(ヤれ、ヤってしまえ!)

 悪霊たちは冥子を狙って、集中的に攻撃を開始する。
 ハイラとサンチラがカバーに入って、第一波の攻撃は何とか退けた。

「よ、横島ク〜〜ン。何だか私を狙いうちしてきたみたい〜〜」
「終わったら手伝うから、もうちょっと待ってて!」
「でも〜〜」
「結界さえ完成すれば、外から新しい霊が入ってこなくなるから、それまでの辛抱だよ!」
「私〜〜、待てそうにないわ〜〜」

 その時、一体の悪霊が冥子に襲いかかった。

 ピシッ!

 冥子は攻撃を避けきれず、(ほほ)を軽く切られてしまう。

「あっ、血が……」
「え゛!」

 ギクリとした横島は、思わず立ち止まってしまう。

「ふ……ふぇ……」
「あーっ! 泣いちゃダメだぁぁぁぁ!」

 しかし、もう手遅れであった。

「ふえぇーーーっ! ふえぇぇぇーーーーん!!!」

 冥子が泣き始めるとともに、背後からさらに8体の式神が出現した。
 さらに泣き叫ぶ冥子から、強烈な霊波が周囲に広がる。
 その霊波と共鳴した計12体の式神が、一斉に暴れ始めた。

(グワッ!)
(ぐはぁっ!)

 部屋に満ちていた悪霊たちは、一瞬のうちに蹴散らされてしまった。
 しかし暴れまわる式神たちはそれだけでは収まらずに、あたりかまわず建物を壊しはじめる。

 ドカッ!
 バキッ!
 ズシャーッ!

「冥子ちゃん、落ちつくんだ! 落ちついて式神のコントロールを……」
「お兄様ぁぁぁ」
「ふええぇぇぇーーーん!!!」
「令子ちゃん、もう手遅れだ。脱出するぞ!」
「キャーーー!」



 1時間12分後……
 辺り一帯を覆っていた禍々しい空気は一掃されていた。
 しかし眼前にそびえていた新築マンションは、もう跡形も残っていない。
 その代わりに、大量のがれきの山が築かれていた。

「ま、とにかく霊の心配はなくなったみたいだね……」
「ごめんね、横島クン。私、興奮しちゃうと式神のコントロールができないのよ〜〜」
「マンションが……売りだし間際のマンションが〜〜!」

 不動産会社の担当者が、ひざをがくがくさえ、額から大量の冷や汗を流している。

「でもね〜〜、失敗を分かちあえる友達がそばにいてくれてうれしいわ〜〜」

(俺が好きでここにいると思ってんのーー!)

 しかし横島は、咽喉(のど)まで出かかったその声をぐっとかみ締めた。

 横島、それでこそ(おとこ)だ。
 しかし断言するが、冥子に振り回されるのはこれが最後じゃはずだ。
 次に冥子のプッツン攻撃を受ける日は、そう遠くはないであろう。
 今回は出番があまりなかったが、令子ちゃん、君が横島を守らないと彼の命が危ういぞ!


(レポート3.ゴーストスイーパー六道冥子登場! 完)


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